ありえない、仕事
【都会で消耗したら】信濃町にあるフィンランド式サウナ「The Sauna」が最高におすすめな件【ととのえよう】
冷たい雪の上からこんにちは、ライターのイサヤマです。寝転がりながらのご挨拶でたいへん申し訳ありません。ただいま「ととのっている」最中でして、動くことができません。
信濃町で一番ホットなスポット「The Sauna(ザ・サウナ)」に来ています。ここは県外からも多くの人が訪れ、心と身体を文字通り「ととのえる」ことのできるフィンランド式サウナです。
信濃町の森の中に現れたログハウスとクマさん
東京から新幹線で3時間。森に囲まれ、目の前には野尻湖という最高のロケーションにある「ゲストハウスLAMP」の敷地内にひっそりと立っています。
クラウドファンディングで支援率170%を超える支援を集め、町の人やスタッフが協力して作った手作りのサウナです。
サウナの前では大きな木彫りのクマさんがお出迎え。「ここが The Saunaだよ」と優しく教えてくれます。
外観はまさに海外のログハウス。入り口の高さやドアの取っ手の位置までこだわったというサウナハウスからは、作り手の本気が伺えます。
熱すぎないちょうど良い温度
いよいよ「ととのえる」時間です。扉を開けると鼻に飛び込んでくるヒノキの香り。明かりは小窓からの外光と赤く燃えるストーブの光だけ。入った瞬間の期待感だけでととのいそうです。
サウナ内は心地よい熱さで、ジワジワと汗が流れます。暗い室内は気持ちを落ち着かせるには最適で、瞑想する人もチラホラ。「ちょっと温度ヌルいかな」と思ったら「ロウリュ」をしてみましょう。「ロウリュ」とは熱く焼けたサウナストーンに水をかけて蒸気を発生させ、体感温度を上げるフィンランド式サウナ独特の手法です。また、備え付けられている「ヴィヒタ」という白樺の枝葉を束ねたもので身体を叩くのもおすすめ。血行促進、保湿作用などがあるといわれています。
聞こえる音は、隣を流れる小川のせせらぎと鳥の声、風になびく葉っぱの音など。落ち着く要素が満載です。
ちなみに水着やバスタオルなど必要な物はレンタル可能。手ぶらで行けるのも嬉しいポイントですね。
熱、鳥、川、風、人。五感で楽しむ2時間
身体がポカポカに温まったら、水風呂でクールダウンといきましょう。
The Saunaの水風呂は、隣の「天然の川」と「野尻湖」の2種類。
ダイナミックな2択に戸惑いながらも、今回は「天然の川」をセレクト。湯気の立ったポカポカの身体が冷却を欲してます。早く飛び込んじゃいましょう。
「水風呂はちょっと勇気が……」という方は、外気浴もおすすめです。イスに座ってボーッとするのもよし。私のように雪にダイブするのも最高に気持がいいですよ。
外の風や雪で少しずつ身体がクールダウンしていく感覚は、自然の中にあるThe Saunaならでは。五感で感じるサウナ、病みつきになっちゃいますね。
得るものがあれば失うものがある。水分と塩分を摂取だ!
サウナに入れば汗が流れ、水分と塩分を失う。これは普遍の法則ですね。そんなデメリットも至福のときに変えてくれるのが、The Saunaの隣にある「ゲストハウスLAMP」のレストランです。ランチ時のハンバーガーや、ディナー時の旬の野菜を使った料理など、人気メニューがいろいろあります。
おすすめは「ラムマーボごはん」。ラム肉と麻婆のニクい組み合わせ。サウナ後の塩分不足と空腹を一手に解決してくれます。もちろんおビールも完備。LAMPに宿泊している人は、心ゆくまで五臓六腑を喜ばすことができます。サウナからアフターまでの導線が完璧過ぎて、完全に「ととのう」ことができました。
さて、The Saunaを語る上で忘れてはいけないのが作り手の存在。今回はこのサウナを作ったサウナビルダー「野田クラクションベベー」さんにお話を聞いてみました。
「サウナビルダー」野田クラクションベベーさんにインタビュー
今回インタビューした方
社長の無茶振りから始まった冒険の日々
──入社3ヵ月目の写真とのことですが、この威風堂々たる佇まい……。一体何があったんですか?
べべさん:
大学4年の時にインターンというか弟子のような形でお手伝いしていた株式会社LIGという会社に新卒で入社しまして。そこで入社3ヵ月でアメリカ大陸を横断することになったんです。
──入社3ヵ月でアメリカ横断……チャレンジングな社風ですね。
べべさん:
それがLIGなんですよ。それからも車中泊しながら日本一周の旅に出させてもらったり、バンドを結成したりラップをやったり……。広報という立ち位置なんですけど、一般の会社とは趣が一線を画してましたね。
──そこからなぜThe Saunaを作ろうと思ったんですか?
べべさん:
日本一周の途中に四国でお遍路をすることになって。1日30キロ以上歩くんですが、三日三晩お風呂に入れないときがあって。そのときやっとの思いで入った温泉にサウナがあったんです。
──もともとサウナ好きで、サウナを求めてたんですか?
べべさん:
いえいえ、そのときまであまりサウナに入ったことがなくて。露天風呂やジェットバスに癒されることはあっても、サウナはたまに入る程度で、水風呂にも入ったことがなかったんです。だからお遍路のときに初めて入った水風呂は、火照った身体をキンキンにクールダウンしてくれて驚きました。そのときが初めての「ととのい」体験でした。
そこからサウナにどハマりして、東京中のサウナに行ったり、勢いでサウナの本場フィンランドに行ったりもしました。そこで自然と一体になるフィンランド式サウナの魅力にやられ、社長に「サウナを作りたい」と直談判して今に至ります。
初めてのクラウドファンディング。達成率は176%
──Web制作会社なのにサウナを作るという提案、面白いですね! そこからどのような展開になったんですか?
べべさん:
会社なので事業として可能性があればお金を出してもらうことも可能だったんですが、社長から「やりたいなら自分でお金集めてみなよ」と言われて。それでやったこともないクラウドファンディングにチャレンジしたんです。
──実際やってみて、反響はいかがでしたか?
べべさん:
実際やってみるとすごくよくて。当初クラウドファンディングは、チャレンジすることを応援するためのものと考えていたんですが、やっていくうちに、コンテンツに対してのレスポンスが期待値なんだなって感じました。いいコンテンツにはみんなが応援で応えてくれる。その応援がサウナを作る上でのよい判断材料になりました。最終的には達成率170%を超え、本当に多くの方に支援していただきました。
町の人と一緒に作ったフィンランド式サウナ
──資金は無事に調達できたと。でも、本格的なサウナハウスを作るのは大変だったのでは?
べべさん:
それが奇跡的なご縁に恵まれて。DIY素人では太刀打ちできない施工部分は、信濃町でログハウスと木の家を作っている株式会社ログラフさんが担当してくださり、最高のサウナハウスを作ってくれました。ベンチを作りたいな、と思ったときもLIG東京オフィスの捨てる予定の廃材を調達してきて、ゲストハウスLAMPのスタッフが一緒に作ってくれたり。穴を掘りたいときには地元の人が掘ってくれたりと、本当に周りに助けられて完成したんです。
誰でも楽しめるサウナを目指して
──The Saunaの特徴を教えてください。
べべさん:
サウナ好きはもちろん、サウナ初心者も楽しめることですね。ポイントとしては通常のサウナに比べ、室温を10度ほど低く設定して、熱すぎないようにしているんです。換気も意識していて、息苦しさを感じないように気をつけています。また、銭湯などの温浴施設のサウナだと、サウナからいったん浴室に戻ってそこから水風呂ですが、The Saunaは出た瞬間に外気浴になるんです。これが本当に心地いいんですよ。僕もそうだったんですが、サウナ初心者は水風呂ってちょっと抵抗がある。でも外気浴が怖いって人はいない。風の冷たさで体の力がスーッと抜けていく感覚があって、それだけで十分楽しめる。これがアウトドアサウナの魅力ですね。
──確かに「サウナ=暑苦しい」イメージありますからね。初心者にはありがたいです。
べべさん:
もともと作った背景に「サウナのイメージを変えたい」という思いがあったんです。何でも最初の入り口って大事だと思うんですが、だいたい銭湯のカラカラに乾燥した暑いサウナですよね。それはそれで気持ちいいんですが、女性には苦手な人も多いので、女性でも入りやすいサウナを作りたかった。
そして銭湯のサウナでは、男女別々になっていますが、アウトドアサウナでは、水着を着て男女一緒に入ることができますから、カップルや友だちと一緒に入ることができます。そうやって少しずつサウナを楽しむ人口が増えていけばいいなと思ってます。
ハマる人は最高にハマる信濃町
──実際住んでみて、信濃町ってどうですか?
べべさん:
やはり「距離感」が絶妙ですね。北信五岳を始めとする山々や野尻湖、キャンプ場などの自然が本当に近く、アウトドア好きには天国のような場所です。都心との距離も近くて、長野市や東京へのアクセスがよく、こんなに自然があってアクセスのいい場所はなかなかないんじゃないかなと。
──逆に弱点は何だと感じますか?
べべさん:
家ですね。賃貸で借りられる家がまだまだ少なく、移住ビギナーには厳しいかもしれません*。一軒家もなかなか高くて、気軽に移住する、という段階ではまだないかと。住みたい人がいても住む家がない、という状況をうまく改善できれば、もっと人が増えるんじゃないかな。期待してます!
*信濃町へ移住を検討している方に、住宅情報を紹介しています。 住まい情報 https://shinanomachi-iju.jp/housing/ |
──「住」の問題は地方移住の課題ですね。ちなみに「職」はいかがですか?
べべさん:
長野県はそもそも一年雇用という考えが少ない場所だから、アウトドアガイドや、冬の除雪など、季節に合わせた職はありますね。あとはリモートで働ける人や、フリーランスでどこでも仕事できる人などにはおすすめの町だと思います。
シンプルな生活を求めている人に最適な場所
──信濃町の先輩として、これから移住を検討する人たちに何かアドバイスはありますか?
べべさん:
移住者のみんなで話すときによく出る話なんですが、「孤独耐性が強い人」には最高にフィットする場所ですね。都会みたいに飲み屋やナイトスポットが多い場所ではないので、家にいる時間が多いんですよ。そのときにインドアも楽しめる人は、信濃町は向いてます。自然と遊ぶのも好きだけど、家でパートナーとゆっくり過ごす時間も好き。そんな生活を望んでいるなら、一度信濃町に来てみてください。移住体験用の住宅*もありますし、気軽に信濃町の空気に触れて、判断してもらえたら嬉しいですね。
*移住体験については、こちらをご覧ください。 信濃町で移住体験 https://shinanomachi-iju.jp/experience/ |
60点かもしれないし、120点かもしれない、魅力的な場所
実際にThe Saunaを体験し、住んでいる人の解像度の高い話を聞き、画面越しでは伝えきれないくらいの「楽しさ」を感じました。もちろん大変なことや不便なこともあれば、合わずに離れていった人もいますし、万人に100点満点な場所ではないと思います。
ただ、今回お話を聞いたべべさんの楽しそうに仕事している姿を見ると、信濃町を心の底から楽しんでいるんだな、と感じます。
移住を検討している人、この記事を見て信濃町に興味を持ってくれた人は、ぜひ一度足を運んでみてください。人生が変わるかもしれませんよ。
The Sauna(ザ・サウナ)
住所:長野県上水内郡信濃町野尻379-2 ゲストハウスLAMP内
Webサイト: https://lamp-guesthouse.com/sauna/
*ご注意:The Sauna は、新型コロナウィルス感染拡大防止のために、限定的に営業しています。詳しくは上記のWebサイトをご覧ください。
取材・文・写真:諌山 未来雄