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ありえない信濃町通信

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自然に魅せられ、信濃町で出会ったふたり。大自然の中での仕事、生活、子育て

ありえない、町民

自然に魅せられ、信濃町で出会ったふたり。大自然の中での仕事、生活、子育て

「今ある環境の中で楽しく暮らしたい」
「大人になっても『信濃町の環境は良い』と思い続けてもらいたい」

生物や自然環境の分野に興味があり、それぞれ活躍する中、信濃町で出会った大澤さんご夫妻。2024年8月現在、2歳と1歳の娘さん2人と一緒に信濃町で暮らしています。

大澤さん一家は、信濃町でどのように働き、どのように暮らしているのか?そして、2人の娘には将来どのように育ってほしいのか?

信濃町でのリアルな暮らしをお聞きしました。

今回インタビューした方

人に癒しを与え、森の自然環境を守る。信濃町での仕事

――まずおふたりが信濃町へ移住した経緯を教えてください。

千絵さん:

私はこれまで大学や大学院で環境系のことを学び、その後は関連する仕事をしてきました。信濃町へ移住してきたのは2019年です。地方創生に取り組む企業に転職しようと思い、面接を受けました。私は東京勤務のつもりでしたが「長野、どう?」と聞かれ、承諾するとそのまま長野支社(信濃町)での勤務が決まりました。

渉さん:
地元、埼玉県の工業大学を卒業後、自動車部品メーカーに勤めていましたが長く続けられず「環境系の仕事がしたい」と思うことがあり、自然環境系の専門学校に通いはじめたのが30歳の頃でした。

アファンの森を作ったC.W.ニコルはその専門学校の設立者の一人であり名誉校長でもありました。そのため、実習で実際にアファンの森に来ることがありました。そして、就職活動をするなかで「一般財団法人 C.W.ニコル・アファンの森財団」(※1)が職員を募集していることを知り、面談を受けて就職が決まったのです。

2012年の移住当初は長野市に住んでおり、信濃町まで通勤していましたが、2021年に妻との結婚を機に、信濃町へ移住しました。妻の会社は私が勤務するアファンの森財団のオフィス(アファンセンター内)に長野支社を置いています。実質、同じ勤務地なのでそこで出会い、結婚することになりました。

※1 一般財団法人 C.W.ニコル・アファンの森財団

森を買い取り「アファンの森」として生物多様性豊かな森の保全をはじめる。2020年に亡くなったC.W.ニコル氏の遺志を引き継いで、アファンの森を管理するのがアファンの森財団。

https://afan.or.jp/

――現在信濃町でどのような仕事をされているのですか?

千絵さん:

私の仕事はいくつかあります。一つ目が「癒しの森®」(※2)事業の事務局です。現在、全国には森を利用したセラピーを体験できる「森林セラピー基地」が多数ありますが、森林セラピーのもとになる「森林療法」を編み出したのが信濃町の方々で、信濃町は「森林セラピー発祥の地」なんです。癒しの森®は、まちづくり事業として20年以上前に町が始めた事業で、私の勤め先の会社が初期のころから関わっていました。毎年、町の「森林メディカルトレーナー養成講座」には全国から応募者が殺到する状況で、「森で心と体を健康にする」という活動の需要が高まっていること、そして信濃町のトレーナーさんの質の高さが評価されていることを実感します。

ほかに「一般社団法人信濃町振興局」の事務業務も会社で受託して、私が担当しています。

※2 信州信濃町 癒しの森®

「森林セラピーソサエティ」が認定した「森林セラピー基地」が全国に60か所以上あり、信濃町の森はその一つで、2020年に日本初の「森林セラピー基地2つ星」に認定された。信濃町では独自の講座を受けて認定された「森林メディカルトレーナー」が森を案内している。

https://iyashinomori.main.jp/

渉さん:
私はアファンの森財団の事務局長をやっています。普段はアファンセンターに勤務して、事務全般やアファンの森へ来訪されるお客さんの案内をすることが主な仕事です。アファンの森では生物多様性豊かな森の保全のために整備しており、他ではあまりない取り組みをしています。ただ案内するのではなく、森の仕組みや生物多様性のことをよく理解してもらえるように説明しています。

生物多様性はCO2排出量のように単純な数字で表せません。そのため、生物多様性が豊かになったことをどのように伝えていくか、難しさを感じるところです。

2歳と1歳の子育てに奮闘中。子どもたちとの過ごし方

――町内でのママ友とのお付き合いなどは、どのような状況ですか?

千絵さん:

子どもが保育園に入る前に、町のママたちが自主的に運営しているサークル「ぞうさん」に行っていて、そこで子育て中の知り合いが増えました。決まった曜日に公民館の一室を借りて子どもを自由に遊ばせるんです。赤ちゃんがいると家にこもりがちなので、出かける場所がある、誰かに会えるというのは大事だなと思いました。

アファンの森近くの川に咲いていた「ドクダミ」の花

――お休みの日は、どうやって過ごしていますか?

渉さん:

もともと私はスキーや登山が好きでよく行っていましたが、子どもが生まれてからは子どもとの時間を大切にしています。信濃町では、黒姫童話館(※3)で開催される「森のおはなし会」や各地区の夏祭りなどさまざまなイベントが開催されているので、そういったイベントに家族全員で出かけています。

※3 黒姫童話館&童話の森ギャラリー

信濃町にある黒姫童話館。黒姫高原の自然に囲まれ、信濃町ゆかりのミヒャエル・エンデや松谷みよ子など、童話作家の展示が充実している。館内には自由に童話を楽しめるスペースがあり、ミュージアムショップやカフェも併設されている。地域に伝わる民話の展示もあり、訪れる人々に豊かな物語の世界を提供している。

https://douwakan.com/

千絵さん:

信濃町は四季の変化が分かりやすいという特徴があります。例えば、庭の花が咲いたと思ったらすぐに時期が過ぎて枯れてしまったり、季節の移り変わりを身近に感じます。今までは下の子が歩けなかったため、あまり自然に触れず家の中で過ごすこともありました。でも、少しずつ歩き始めたので、これからは外に出る機会を増やしたいと思っています。

居心地の良さが住みやすさに。地元の人とのちょうどいい距離感

――田舎暮らしは町の行事などで忙しいイメージがありますが、実際のところどうですか?

渉さん:

同じ信濃町でも地区によって、行事の多さはさまざまです。私が住む地区では年に数回草刈りがあるのと、年に1回総会があります。あとは、地区の役が回ってくると地域のお祭りの手伝いをするほか、夏祭りの準備はみんなでします。

この地区は比較的人口が多い方で、信濃町の中ではそれほど付き合いが濃密でないかもしれません。私にとってはちょうどよい付き合いができていると思います。

活動に熱心な地区もあり、アファンセンターがある「富が原」という地区では「富が原美化委員会」という組織があり、その地区の景観を保つために毎月草刈りなどの活動をしています。その甲斐あって活気もあり、富が原は移住者に人気です。

――ご近所の方とはどのように接しておられますか?

千絵さん:

喋るのが好きな方が多いですね。ご近所さんと会えば挨拶したり、立ち話したりしています。今の家に引っ越したときに、ご近所に挨拶に回ったら、みなさん「よく来てくれたね」という感じだったので安心しました。

近所のおばあちゃんから野菜やおはぎをもらうこともあります。うちの畑の野菜は微々たるものだし、ほとんどお返しはできませんが、洗濯機の調子が悪いと言われれば見に行ったり、できることがあればお手伝いしています。

都会では感じられない信濃町で暮らすメリット。いつか子どもが町を出ることも想定して

――信濃町で暮らすなかで良かったと感じるのはどういった場面ですか?

渉さん:

私はずっと都会に暮らすより、田舎暮らしをしたいと思っていたので、今の環境には非常に満足しています。あと、夏にエアコンなしで過ごせるってすごくないですか?

たしかに歩いていける範囲にはコンビニはありませんし、電車やバスなど公共交通機関は便数が少ないため、どうしても車中心の生活になってしまいます。でも、私にとって信濃町という場所はそういった価値観では測れない、充実感のある場所だと思っています。コンビニの近さより、自然環境が豊かな森が近いことに魅力を感じています。

お店が少ない信濃町ですが、30分ほど車で走れば長野市で必要な買い物へもすぐに行けますし、しなの鉄道に40分弱ほど乗って長野駅から新幹線に乗って1時間ちょっとで東京に行くこともできます。田舎暮らしを満喫できるうえ、比較的都心に近いことも信濃町の魅力の一つです。

千絵さん:

せっかく移住してきても、さまざまな事情で定住しないことを選択する方もいると聞きます。信濃町の環境が気に入っている私からすると、ちょっと残念にも感じます。私は「信濃町で暮らしているからできないこと」は、実はあまりないと思っていて。東京も日帰りでも行けるし、オンラインでできることも増えたし、自然も近いし、できることをいろいろやってみたいと思っています。

――お子さんの進学について考えることはありますか?

渉さん:

子どもはまだ2歳と1歳なので、そんな先のことまで考えられないというのが正直なところです。ただ、実際問題として信濃町には高校がありませんし、さらに先のことを考えると、もしかしたら、子どもたちは信濃町を離れるタイミングがくるかもしれません。ただ、子どもたちが大人になった時に、幼少期に信濃町という自然豊かな場所で暮らしていたことを「良い環境だった」と思ってくれたらうれしいですね。「ただ田舎に暮らしていた」では寂しいものがあるので。

移住しようか悩んでいる人へ。信濃町で幸せに暮らす秘訣

――信濃町へ移住しようか悩んでいる人に向けて、伝えたいことはありますか?

渉さん:

自然が豊かということは、自然を相手にする機会が多いということです。夏場の草刈りや冬は雪が降れば朝30分から1時間ほど、除雪機で雪かきをしてから仕事に行く必要があります。また、総会など地区の行事に参加する必要もあります。こういったことを全くしたくない方は、あまり信濃町に向かないかもしれません。草刈りや雪かきのことも含めて楽しんで、雄大な自然を満喫できる人には向いていると思います。

千絵さん:

私は「良い意味で」田舎暮らしに理想を持ちすぎないのが良かったのかなと思います。もちろん「◯◯な暮らしがしたくて信濃町へ移住したい」という気持ちもあると思いますが、ご近所さんとの関係づくりも含めて、想定外のことも楽しんで受け入れるような心持ちがあったらいいのかなと。

パパと秘密のお話を楽しむひいらぎちゃん

渉さん:

信濃町は移住者が多い町です。自然が好きで移住してきた方も多いため、同じような気持ちで飛び込めば、きっとすぐに仲良くなれます。みんな移住者の気持ちが分かるので、「俺もそれ悩んだ」とか「私もそれ感じた」など共感してもらえることも多くあると思います。

千絵さん:

困ったら助けてくれる方もたくさんいるので、安心してください!

自然の豊かさを享受したいなら信濃町へ

取材前、アファンの森付近の道でカメラを持ち、自然の風景や花を撮影していました。降り注ぐ太陽に生い茂った木々、その中で美しく咲く花や冷たい水が流れる川など、ほんのわずかな時間でさまざまな写真を撮影できました。

大澤さんご夫妻の言う通り、信濃町にはここでしか感じられない不思議な魅力があると思います。一方で東京へ日帰りで行けたり、信濃町では間に合わない買い物をするときでも長野市へすぐに行けるメリットもあります。

大澤さんご夫婦の言葉を確かめるために、信濃町が運営する「ふるさと移住体験施設」を試しに利用するのも良いかもしれません。

スマホを見ているだけでは分からない、信濃町の魅力を肌で感じられます!

ライター 廣石健悟

長野県飯山市出身。兵庫→京都→埼玉などを転々として2017年に長野県へUターン。
妻の実家がある信濃町の等身大の姿を、全国に広めていきたいと思っています。

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