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「この町だからできた!」信濃町移住1年目で映画上映イベントを実現させた居場礼香さんにインタビューしました

ありえない、町民

「この町だからできた!」信濃町移住1年目で映画上映イベントを実現させた居場礼香さんにインタビューしました

今回紹介するのは、これまで数多くの映画の予告編を制作してきたフリーのディレクター、居場礼香(いばあやか)さん。信濃町に移住し、「映画館のないこの町で、もっと映画を気軽に楽しんでもらえる環境をつくりたい」と、2023年10月1日に黒姫高原で映画上映イベントを開催されました。

映画が好き。楽しいことが好き。信濃町の優しさが好き。今回は、居場さんが映画上映イベントを開催するにあたってどんな思いがあったのかと、信濃町で暮らし始めて感じた魅力についてお聞きしました。

今回インタビューした方

黒姫高原クラフト祭り

秋の黒姫高原の童話館周辺を会場に、今年もクラフト商品はもちろん、飲食ブースも充実。黒姫高原で昼食を食べながらクラフトショップを楽しんでいただけたらと思います!今年はクラフトのワークショップ等も行います

2023信州しなの町・黒姫高原クラフト祭開催

「都内じゃなくてもいいな」から始まった移住物語

――今日はよろしくお願いします。まず、居場さんが東京から信濃町に移住することになった経緯や動機について教えてください。

5年間ぐらい会社員として働いていたのですが、当時勤めていた会社の解散を機に、フリーランスに転向したんです。そうすると通勤がなくなって、必ずしも都会に住む必要もないなと思い始めました。その矢先にコロナが始まって。自宅でリモートワークをすることになったのですが、それほど広くはないワンルームの部屋を、プライベートと仕事の両方に使用するのがなかなかのストレスで。一日中自宅に居ることになるから、オンとオフの切り替えが難しいんですよね。そこで、仕事部屋を分けられるような家に引っ越そうと考えました。

ただ、都内で探そうとするとどうしても家賃が高くて。1LDKでも10万円以上、条件のいいところだと15万円とかになっちゃう。そんな時、信濃町に移住を決めた友人夫婦が「一度遊びにおいでよー」って誘ってくれて。そのときは3日間ぐらいの滞在だったのですが、町をいろいろと見て回って、「あ、いいところだな」って思いました。

それがきっかけで長野の賃貸物件を探し始め、2021年末に飯綱高原の物件を見つけて東京から移住しました。その後「ここもいいけど、やっぱり友達が近くにいる環境のほうがもっと楽しいはず!」と思って、2023年に信濃町に引っ越してきました。

信濃町の友人たちと地元のそば屋さんで

――信濃町のどの部分が一番魅力的だと感じましたか?

最初に思ったのは、「空が広い!」です。高い建物がないので、景色がはっきり見えるんですよね。それに空気がとてもきれい。あとは自然の匂いをダイレクトに感じることができるように思います。春になれば春の匂いがするし、雨が降れば雨の匂いがします。都会に比べてノイズも少ないし、この環境は仕事にもいい影響を与えてくれています。

――移住前に持っていた信濃町についてのイメージと、実際に住んでみての感想を教えてください。

正直、移住前は都会と比較して不便に思うことが多いんだろうなって思っていました。でも実際に暮らし始めてみると、ぜんぜん不便に感じません。コンビニもスーパーもホームセンターもドラッグストアも近くにあって、普通に生活していて困ることはないですね。あと地味に嬉しいのがアクセス面。都内への出張が月に数回あるのですが、信濃町から東京駅まで2時間台なので、頑張れば日帰りでも行けるのはとても便利です。

「映画が身近なものになってほしい」それが映画上映イベントを開催したワケ

――映画上映イベントを開催しようと思ったきっかけについて教えてください。

私は生まれてからずっと、映画が観たいと思ったらいつでもすぐに観に行ける環境に住んでいました。けどある日、すべての人がそうではないってことに気づいて。小笠原諸島の父島に友人が住んでいるのですが、父島には映画館が1つもないんです。会社員時代に『ドラえもん』の予告を作った際、父島の友人に報告の連絡をしたら「映画を観ようと思ったら、丸一日かけて本土まで行かなきゃいけないんだよね。だから映画館に行く機会なんて全然なくなっちゃったよー」って。

その頃から、映画館に足を運びづらい人たちにも映画に触れる機会があったらいいなと思うようになりました。その後ご縁があって信濃町に住むことになったのですが、この町にも映画館がありません。じゃあ、この町で映画上映をやってみようって。それが今回のイベント開催のきっかけです。

――映画上映イベントを開催するのは初めてとのことですが、何か課題はありましたか?

これまでに実績が一度もない映画上映イベントなので、お客さんが来てくれるかが心配でした。そのことを町内の人に相談したら「黒姫高原クラフト祭りにくっつける形でやってみるのはどう?」って提案してくれて。

黒姫高原クラフト祭りは100以上のブースと、4,000人を超えるお客さんが集まる大きなイベントです。「その力をお借りできるなら実現できるかも」と思って、観光協会や実行委員会の方を紹介していただいて、今回の開催を実現することができました。

観光協会や実行委員会の担当の方々はとても親切で、チケット販売や折込チラシなど、いろんな面で応援してくださいました。中でも本当に驚いたのが、映画の上映を協賛してくれたお店があったこと。私からは協賛の依頼はしていないんです。つまり実行委員会の方たちが協賛を集めてくださったということ。移住して間もない小娘の「イベントやりたい」っていうささやかな夢にかけてくれたんですよ。この町には暖かい人、応援してくれる人が多いなあと感じます。初めての開催が信濃町じゃなかったら、こんなにスムーズにいかなかっただろうなと思います。

黒姫高原での上映に、マッチした作品を

©WolfWalkers 2020

――今回の作品を選んだ基準や理由を教えてください。

今回上映したのは、『ウルフウォーカー』というアニメ作品です。選んだ基準は2つあって、大人も子どもも楽しめることと、黒姫高原というロケーションに合っていることでした。ストーリーをざっくりと紹介すると、主人公のロビンが「自分がありのまま、本当に自由を感じる生き方はなんだろうか」と自分で決断して、生き方を探すお話です。友情、親子の絆、自然と人間の共存などが描かれています。

――イベント当日、印象的だった瞬間やエピソードはありますか?

小さいお子さんがスクリーンに釘付けになって集中して観てくれていたことですね。あと、上映の後に拍手が起きたんです。普通の映画館で拍手が起きることなんてまずないので、刺さる人には刺さったんだなあと嬉しく思いました。

当日は町内外からお子さん連れのお客さんが集まりました

信濃町の素敵なロケーションでイベントを開催したい

チラシのイラストはイラストレーターのELLYLANDさんが制作

――最後に、次回のイベントや今後の活動についての予定や情報があれば、お知らせください。

今のところ具体的な予定はありませんが、「こういう形で映画が楽しめたら面白いだろうな」っていうアイデアの種はいくつかあります。たとえば湖にボートを浮かべて『ジョーズ』を観るとか、溶接工場で『ターミネーター』を観るとか、映画のストーリーに出てくる食べ物を食べながら観るとか。

信濃町には野尻湖など素敵な場所がたくさんあるので、そういった場所でまたイベントを開催できればいいなと思っています。

――どれも楽しそうなアイデアですね。こういった映画イベントが、映画館のない町にもたらす影響は何だと思いますか?

テレビで映画が観られる時代に、なんで映画を観に行く必要があるのか。私は、その「なんで」を知ってほしくてやっている部分もあるんです。大きいスクリーンとしっかりした音響設備で観る映画はとても刺激的で、作品の良さをありのまま受け取ることができます。まずは私の映画上映イベントが、その良さを知ってもらえる機会になればと思います。

それから映画は、お子さんたちの感性を育てる優秀なツールのひとつです。映画を観ると色々なものごとや人の感情を学べるし、自分の世界の外側にあるものを知ることができます。この町の子どもたちが映画に興味を持ってくれたら、広い世界を知るきっかけになって、未来の道を増やすことができると思うんですよね。私たちも子どもの頃に観た映画がきっかけで、新しいスポーツに挑戦したり、なりたい職業を見つけたりすることってあったじゃないですか。そんな機会を提供できればと思います。

――次回の開催を楽しみにしています。最後に、信濃町への移住を検討している人に向けてメッセージやアドバイスをお願いします。

たぶん、想像しているよりも10倍くらい刺激的なところです。興味がある方は、ぜひ足を運んで、この町を体感してみてください!

まとめ

「田舎は文化や芸術に触れる機会が少ない」という、諦めにも似た言葉を耳にすることがあります。そんな課題に立ち向かって、「じゃあ私がその機会を作ろう!」と実際に企画して実行までしてしまうパワーに触れることができた、とても楽しい取材でした。

居場さんのモットーは「とにかく楽しむ」だそう。自分も楽しく、関わってくれた人も、来てくれた人も楽しく。これからも、みんなが楽しいと思ってくれるようなイベントを企画していきたいですと話してくれました。

「居場さんに映画上映イベントを開催してほしい!」という方は、ぜひ一度コンタクトを取ってみてはいかがでしょうか。

居場礼香さん
Instagram: @1ayaka8(https://www.instagram.com/1ayaka8/

町民ライター 観音クリエイション

ヒップホップのトラックメーカー、ライター。音楽を作ったり、写真を撮ったり、文章を書いたりして生きています。2020年8月より長野県信濃町に移住しました。

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