ARTICLE
ありえない信濃町通信

TOP > ありえない信濃町通信 > 信濃町の森の魅力を森林メディカルトレーナーと移住者に教えてもらいました(前編)

信濃町の森の魅力を森林メディカルトレーナーと移住者に教えてもらいました(前編)

ありえない、暮らし

信濃町の森の魅力を森林メディカルトレーナーと移住者に教えてもらいました(前編)

山や湖のアクティビティで有名な信濃町ですが、実は森を目当てに信濃町に訪れる人も多いって知っていますか?

信濃町では、森林セラピーを主軸とする「癒しの森事業」が展開されているため、整備された森の散策路があり、幅広い年代の方が森に入っていく姿を見かけますし、信濃町の森が好きで移住したという方も少なくありません。

今回は、そんな信濃町の森の魅力を探るため、町認定の「森林メディカルトレーナー」のお二人にお話を聞いてきました。

初心者でも気軽に歩ける森のコースのおすすめも聞いてきましたので、ぜひお出かけの際の参考にしてくださいね。

お話をお伺いをした方

信濃町の森林セラピーと自然について

森の中では誰とも分け隔てなく関われるのは、森が持つ不思議な力

ーーまずは”森林セラピー”という言葉に馴染みがない方のために、信濃町の森林セラピーというのはどういうものか教えていただけますか?

 河西: ”森林浴”という言葉はよく知られていますが、森林セラピーは森林浴のもう一歩先のイメージ。「森に入ることは、心と身体の健康増進に役立つ」という科学的根拠を裏付けにして、もっと積極的に森にでかけましょうと推進しているのが森林セラピーです。
信濃町は、この森林セラピーを主軸とした地域活性の事業に取り組んでいて、それが「癒しの森事業」です。たとえば、自分たちが歩く森をきれいにする活動や、町民の方を森へご案内する活動も事業に含まれています。

ーーお二人が森林セラピーに関わるようになったきっかけはなんですか?

鹿島: 私は、森林メディカルトレーナー養成講座(第一回・2003年)の受講がきっかけです。それまで10年間専業主婦をしていて、そろそろ自分の時間が欲しいと思っていたときに新聞折込で講座のことを知って。当時、森に特別な興味はなく、マツとスギぐらいしか知らなかったのですが(笑)、アロマやカウンセリングという言葉に惹かれて受講しました。

受講してみたら、受講生が80人ぐらいいて。講師の方含め、信濃町にこんなにたくさん熱量のある人たちがいるなら、何かができると感じたんです。また、森について理論を学んでいくと、私がなんとなく子育ての助けになると思っていたことが、まさに森の力だったということがわかり、森のすごさに納得がいきました。

森林セラピーの信濃町公認資格である、「森林メディカルトレーナー」及び「癒しの森の宿」養成講座(中略)。信濃町では、独自に「森林メディカルトレーナー」・「癒しの森の宿」の資格を設け、これまでに250名以上の方が講座を受講されており、森林セラピーに来られたお客様のご案内をしたり、様々な形で事業に取り組んでおられます。

出典:http://iyashinomori.main.jp/2021/11/01/youseikouza2021/

そして講座の翌年に『ひとときの会(信濃町森林療法研究会)』を発足することになったときに、「会長は鹿島さんで」って言われたんです。予想もしていなくて、まるで落とし穴に落ちたよう(笑)。それ以来ずっと会長をさせてもらっています。

ーー落ちたらなかなか出られない落とし穴ですね(笑)。河西さんはどうですか?

河西: C.W.ニコル・アファンの森財団(信濃町にある、森の再生事業などの森づくりをおこなう団体。以下、アファンの森財団)の職員をしていたことがきっかけですかね。

僕が入職する1年ぐらい前から、アファンの森財団で児童養護施設や盲学校の子どもたちを森に招く事業の企画がされていたのですが、それが信濃町の癒やしの森事業のスタート時期とほぼ同じで。アファンの森財団の事業に、癒しの森事業立ち上げの中心メンバーが関わっていました。そのため、僕自身はアファンの森財団で子どもたちと関わる仕事をしながらも、癒やしの森のメンバーと接する機会が多かったんですね。そういう経緯があったので、アファンの森財団を退職した後、しなの町Wood-Life Community前事務局長に「事務局やってくれない?」と声をかけられて、2015年ごろから癒しの森に関わり始めました。

ーーではお二人とも、最初から森林セラピーに強い想いがあったというわけではなかったんですね?

河西: そうですね。ただ、興味がある分野ではありました。以前に河口湖で森のガイドのようなこともしていたのですが、そのときから、森の中だと誰とも分け隔てなく関われると感じていて、森には不思議な力があるとは思っていました。

鹿島: 森の中ってお茶室みたいだと思うことがあります。森の中では肩書きが関係なくなって、どんなに偉い人とでも人と人として向かい合うことができるんです。それは森の力であり、魅力ですよね。

平らでひらけた風景と、雪の森の美しさ

黒姫童話館からの景色

ーーお二人が思う信濃町の自然と森の魅力はなんですか?

河西: 一番特徴的なのは景色だと思います。信濃町は黒姫山や妙高山という2000メートルを超える山々に囲まれていますが、地形が平らなんです。同じ長野県内でも日本アルプスに近い地域では、山がそびえ立っていて谷深い感じがあるのですが、信濃町の場合は平地の向こう側に山々が見えて「おおっ」と思いますね。

鹿島: 黒姫童話館の前から景色を見ると、それが際立ちます。稜線がなだらかに、山のてっぺんから自分の足元までずっと通じているように見えるんです。
あと、信濃町は広葉樹の森とスギやカラマツなどの針葉樹の森の割合が5:5ぐらいなんですが、その比率が地形と相まって、この景色の美しさを紡ぎだしていように思います。広葉樹の明るい緑に、スギが黒っぽいのでアクセントになって、さらにカラマツが混ざることで全体の色味が軽やかになる。色味の美しさから、樹種の豊富さや多様性を視覚的に感じることができます。

河西: もうひとつの魅力は、雪が降ること。スノーシューで歩く雪の森はとても楽しいですし、風景もいいんです。冬のスギの黒く濃い緑色と、雪の白とのコントラストは、最近しみじみ良いなあと感じますね。

鹿島: 信濃町の森林セラピーのコースで言うと、威圧感を感じない、ほどほどに深い森というのが良いところだと思います。入り口からすごい奥まっている深い森だと不安に感じる方もいると思いますが、信濃町のコースはどこもそういう雰囲気がないですね。だから、はじめて森に入る方や慣れていない方でも森を楽しんでいただけると思います。

河西: 他の地域から森林セラピーの担当者が来られた際、似たようなことをおっしゃっていました。その方は大きなブナの木があちこちにあるような、壮大な森を持つ地域から来られていたのですが、「自分のところの森は、森が深くて私には少し怖い。でも信濃町の森のコースはとても優しい雰囲気」と話しておられました。信濃町は里山の環境の中にコースができているので、とっつきやすい森なのだと思います。

信濃町の森林セラピーコース

お二人に信濃町の森林セラピーコースの中でもおすすめのコースと、ポイントを教えていただきました。

御鹿池(おじかいけ)コース 【全長1.2km・黒姫高原】

鹿島: はじめて信濃町に来た人には、ぜひ行っていただきたいコースです。まず黒姫童話館の前の、山の裾野の広がりを見ていただいて。森の中に入ると、コース自体はコンパクトなのに、木のトンネルや、杉林のうっそうとした感じ、池の周りの開放的な雰囲気など、すごく変化があります。あとは水音の表情が豊かなのが、私が一番好きなところです。コースを歩いていると異なる水音がいつも聞こえます。

河西: 先日来られた方は御鹿池の周りの音が3Dですね!と驚かれていました。

象の小径(こみち)コース 【2.5km・野尻湖沿い】

鹿島: 木を下から眺めるのと、上から眺めるのとの、視覚的に異なる木々の存在感が感じられるのが私は好きです。あとコース自体が歩きやすいフラットな面なので、のんびり歩くのも、さっさかと歩くのにもピッタリです。湖沿いなので、湖畔を近くに見ながら歩けるのもいいですね。そして冬はどこでもソリコースになって楽しいんです(笑)。

河西: 象の小径コースは木々との距離が近くて、鳥の種類が豊富なのも特徴です。ずっと森のトンネルが続いているので、緑に包まれるなら象の小径ですね。

地震滝(ないのたき)コース 【7km・黒姫高原〜新潟県境】

鹿島: 7キロのロングコースなので、歩きごたえがあります。本当に一日森にいたなという気分が味わえます。山の中腹でありながら、アップダウンの少ないコースで、最後ご褒美のように苗名滝が見えて、55メートル落下する滝を上から眺めてから下りていくというのは、他ではなかなか味わえないと思います。

森林セラピーと人について

ーーどんな方に森林セラピーを試していただきたいと思いますか?

鹿島: 少し元気がないとき、塞ぐような気持ちになっているときは、森が助けになるのではないかと思います。そうでなくても、自分を見つめ直したり、自己肯定感を高めたり、心と身体が元気になる何かのきっかけになったりするのが森の時間だと思うので、どんな方にも来ていただきたいです。
自分自身を楽しませる時間として、例えばヨガをする人もいれば、本を読む人も、買い物に行く人もいますよね。同じように森の中に行く人、が増えればいいなと思います。

河西: 僕たちのように森を案内する人と一緒に、試しに数回森を歩いてみて欲しいと思いますね。

鹿島: 自分で森を楽しめる方はご自身で歩いていただけると思いますが、森の楽しみ方がよくわからないとか、森林セラピーに興味があるという方は、私たちがご一緒する機会があれば嬉しいです。

ーー実際に、森林セラピーに何度も来られる方って多いのでしょうか?

河西: リピートされる方は多いです。季節を変えて来られる方もいらっしゃいますね。

鹿島: 同じ場所に季節を変えて行くのはとてもおすすめです。冬は雪しかないように思えるけど、木々の芽吹きが始まっていたり、春にその芽が膨らんで花が開き始めるより前に水音が走り出すことに気がついたり。季節によって、葉が風になびくサラサラって音の響きも変わるし、同じ場所だからこそ五感で変化を楽しむことができると思います。

河西: 最近ではリピーターさんが、森林メディカルトレーナー養成講座を受講されることも増えてきました。

ーー森林メディカルトレーナー養成講座は必ずしも森の案内する側になりたい人だけが受けているというわけではないんですね?

河西: 養成講座は、森林セラピーを受けて興味を持ったときに、もう少し森について学んでみたい、と思う方向けだと思います。同じ興味や感心を持つ仲間を増やすきっかけのひとつでもありますね。

ーー確かに信濃町には、森という共通点を持つ人のコミュニティがあると感じています。

鹿島: 森でないとできない関係づくりってあるんですよね。今後はもっと若い方にも癒しの森事業に関わっていただけたらと思っているので、養成講座など森に興味を持っていただくきっかけを複数つくって、多様な方々との繋がりを広げて行けたらと思います。

森林セラピーは森を楽しむ方法を知るひとつのきっかけ

今回お二人のお話を聞いて、森との関わり方はいろんな方法があると感じました。ただ森を歩くのもいいけれど、葉がこすれる音を聞いたり、いろんな緑の色を視覚的に楽しんだり、人とのコミュニケーションの場にしたり。だから信濃町の森にはいろんな人が行き交っているのだと思います。
森の楽しみ方を知りたいと思う方は、一度森林セラピーを受けてみると、自分らしい森との関わり方のヒントがみつかりそうですね。

さて後編では、森林セラピーが移住のきっかけになったという移住者さんにお話を伺います。また、森林セラピーって具体的にどんなことをするのか、実際に森林メディカルトレーナーと一緒に森に入ってきました。次回へ続く。

ライター 地域おこし協力隊

信濃町の地域おこし協力隊です。2019年に信濃町に移住してきました。週末は野尻湖に浮いているか、愛猫3匹とゴロゴロしながら、家から見える妙高山を眺めています。

\こんな記事も読まれてます!/