ARTICLE
ありえない信濃町通信

TOP > ありえない信濃町通信 > 信濃町の野尻湖国際村と須坂市、北信州で2拠点生活を送る翻訳者の暮らしとは?

信濃町の野尻湖国際村と須坂市、北信州で2拠点生活を送る翻訳者の暮らしとは?

ありえない、暮らし

信濃町の野尻湖国際村と須坂市、北信州で2拠点生活を送る翻訳者の暮らしとは?

森と湖のある静かな村か、便利で活気のある地方都市か──。あなたなら、どちらの田舎に移住しますか?

長野県とひとくちに言っても、それぞれのまちに、それぞれの魅力があります。

今回は、信濃町の野尻湖国際村の会員であり、長野県北部の須坂市でも暮らす翻訳者の村田スーザンさんに、ふたつの拠点を持つ暮らしについてお聞きしました。



今回インタビューをした方



薪を割るのは大変。でも、くべるのは楽しい

国際村の別荘の暖炉
▲薪ストーブの燃料は敷地内に生えていたものを自分たちで薪にしたもの(スーザンさん撮影)

信濃町にある野尻湖国際村は、会員制のボランティア団体「野尻湖協会」によって運営されている別荘地で、ひとつの山丸ごとが私有地となっています。最近は交通の便がよくなったことから、年間を通して国際村へ遊びにきている会員が多いのですが、冬季は雪の深い信濃町を訪れない人も多く、スーザンさんも信濃町から40分ほどのところにある須坂市で過ごします。そして、暑くなるころに信濃町へ戻ります。

「子どものころに家族で国際村に何度か来たことがあったけど、ずっと忘れていたの。でも、長男が生まれたときになぜか思い出して、会員の知り合いから夏の間だけ物件を借りるようになった。1993年に、ノルウェーに引き揚げた宣教師から物件の使用権利を譲ってもらい、いまは自分も会員に。使用しているキャビンは北欧系のこぢんまりしたもので、デッキだったところを室内に取り込んだり、キッチンを新しくしたり、ちょっとずついろいろ手を入れて暮らしています」

▲1993年から少しずつ手を加えて暮らす野尻湖国際村の別荘(スーザンさん撮影)

2019年に念願の下水道が通ったものの、冬の間はすべて水抜き しなければいけないことが、「予想外に大変だった。便利さの中にも不便があるね(笑)」とスーザンさん。

水抜き……冬季は氷点下になるので、水道管が凍って破損してしまわないように行う管の水を抜く作業。

また、「自分では暖炉の薪を割るのが苦手だけれど、都会から来た友人たちに楽しみながら割ってもらっている」「薪をくべるのが楽しくて、ついつい燃やしすぎちゃう」とも。

手間がかかる暮らしを工夫して楽しんでいることと、長く愛せる家があることが、とっても贅沢! スーザンさんにとって、ここはなんてかけがえのない場所なんだろう、と思いました。

開村から100年、愛してやまない野尻湖の自然

▲1929年築、改修を重ねながら大切に受け継がれている集会所。設計は宣教師で建築家のウィリアム・M・ヴォーリーズ

1921年に設立された野尻湖協会は、野尻湖が国立公園になる前から存在しているため、湖の南西エリアにクラブハウスやボートの桟橋などを設置しており、協会員とレンター(物件をレンタルした人)のみが使えるようになっています。7月下旬からはホットドッグスタンドが国際村の子ども会運営でオープン(会員限定)したり、ヨットのレースが開催されたりと、「夏の3週間ぐらいは超にぎやか!」になるのです。

▲水質が改善し、3年ほど前から水草と水鳥(バン)が戻ってきた野尻湖

「魅力はもちろん周りの自然ね。ここを一番最初に見つけた宣教師たちは軽井沢からやってきたの。軽井沢も宣教師が発見したんだけど、だんだんハイカラになっちゃった。お金持ちの人や気取った人が増えた中で、『それは違うだろう』という考えを持った宣教師が何人かいたの。自然の中で、自分たちが本当にリラックスできる場所を、といろいろ探して。そして、野尻湖を発見した…」

スーザンさん自身、子どもの頃に感じた国際的な雰囲気や居心地の良さが忘れられず、自分の子どもたちにも体験してほしい、という気持ちに突き動かされて、ここに戻ってきました。

野尻湖国際村は、一般的な別荘地と違い、長い間受け継がれてきたボランティア精神によって運営されている場所です。会員の国籍や職業などはさまざまですが、野尻湖と信濃町の自然を愛してやまない気持ちはみな同じです。

長野県信濃町・国際村
▲ピクニックエリアに隣接して管理事務所やボートハウス、子ども会のホットドッグスタンドがあり、夏季限定でオープンする

「私なんかより面白い人がいっぱいいるのよ!」

野尻湖畔のイタリアン「船小屋」のテーブルに座る村田スーザンさん
▲スーザンさんが大好きなイタリアンレストラン「舟小屋」さん

5年前に旦那様が亡くなり、娘さんが就職するタイミングで長野県への移住を決めたスーザンさん。都心と田舎、離ればなれになるお子さんたちにかけた言葉は……。

「じゃあ、私も独立するから。長野行くわ」

なんて潔い!

そして、「まちのにぎわいもないと寂しいから」と、友人に紹介してもらった須坂市に2018年に移住しました。最初は小布施町(須坂市の隣)で探していましたが、犬も猫もOKな、ちょうどいい賃貸住宅があるのが須坂市だったそう。

「調べたらスーパーが5つもあるし、すごいまちだと思って(笑)。東京に行くにも便利だし、長野市までクルマで20分、信濃町まで40分。ブドウ畑リンゴ畑も近くにあって、晴れた日は北アルプスもきれいに見える。須坂市の移住担当の方もすごく親切だったから、物件のある地域のこともいろいろ教えてもらったの」

長野県須坂市の百々川沿いを犬と散歩
▲愛犬と須坂市の百々川沿いを散歩(スーザンさん撮影)

スーザンさんが長野県に移住して驚いたのは、国民健康保険料と水道料が想像していたより高いこと。そして、雪が多い地域のほうが道路整備や除雪がしっかりしていることです。また、教育や就職の面では東京のように選択肢が多くありませんが、そこをクリアできれば、若い移住希望者がもっと増えるのでは、と話してくれました。

最後に、「信濃町には私なんかより面白い人がいっぱいいるのよ!」と、若い店主が切り盛りするお店をいくつも教えてくれました。「庫料理やまざき「たねカフェ」 「西山蝋燭店」OND WORK SHOP」…。

「これからの若い世代に期待しています。人と違った感覚や自由な発想を持っている人が増えれば、信濃町も須坂市も、もっとおもしろいことになると思っています」

 

長野県内での2拠点生活という「ありえない贅沢」!

というわけで、今回は信濃町の野尻湖国際村と須坂市の2拠点で暮らす、国際派アクティブシニア、村田スーザンさんに、それぞれのまちの魅力、暮らしの魅力をお聞きしました!

長野県内の2拠点を行き来する、これはありそうでなかった新しいライフスタイルかもしれません。

自然が好きで、場所を選ばずに働ける方にオススメです。

取材協力店のご紹介

長野県信濃町のイタリアン「舟小屋」の前菜

取材にご協力いただいた「Funagoya 舟小屋」さんは、おいしい料理と落ち着いた雰囲気で、ついつい長居してしまいます。5月ごろ、芽吹きの季節の眺めは最高に美しいですよ。

みなさんも、ぜひ訪れてみてくださいね!


Funagoya 舟小屋
住所:長野県上水内郡信濃町大字野尻258-4
TEL:026-258-2462
Webサイト: https://localplace.jp/t200346927/

取材・文・写真:水橋 絵美

ライター 水橋絵美

水橋絵美
長野県中野市出身。編集者・ライター。京都→奈良→広島を経て長野にUターン。信濃町の好きなところは、町の70%が森林で、いろいろな植物やきのこに出合えるところです。

\こんな記事も読まれてます!/