ARTICLE
ありえない信濃町通信

TOP > ありえない信濃町通信 > 「自然の中で飲むコーヒーの美味しさを提案したい」。スペシャルティコーヒーの自家焙煎店Foret coffeeの松澤さんにインタビュー

「自然の中で飲むコーヒーの美味しさを提案したい」。スペシャルティコーヒーの自家焙煎店Foret coffeeの松澤さんにインタビュー

ありえない、暮らし

「自然の中で飲むコーヒーの美味しさを提案したい」。スペシャルティコーヒーの自家焙煎店Foret coffeeの松澤さんにインタビュー

こんにちは。2020年8月に信濃町に移住した観音クリエイション(@kannnonn)です。

今回は信濃町出身で、長野市の中央通り沿いのスペシャルティコーヒーの自家焙煎店「Foret coffee(フォレットコーヒー)」を営む松澤さんにインタビューさせていただきました。

松澤さんとコーヒーとの出会いやこれまでのキャリアの話題を中心に、信濃町での暮らしや、信濃町にオープン予定の焙煎所についてお話を伺います。

今回インタビューした方

Foret coffee 松澤さん
松澤岳久さん
信濃町生まれ。自然の中でコーヒーを味わう楽しさに気づいたことをきっかけに、焙煎の道へ。イベント出店などの活動を経て独立し、2018年に長野市の中央通り沿いにスペシャルティコーヒーの自家焙煎店「Foret coffee」をオープン。

「好きなことを仕事にしたい」の気持ちにしたがって、会社員をやめてコーヒー屋を始めるまで

Foret coffee 松澤さん

──まずは松澤さんがコーヒー屋さんを始めたきっかけについて教えてください。

そもそものきっかけは、自然に囲まれた環境の中でコーヒーを淹れてゆっくり安らぐ時間が好きだったことでした。

僕は生まれも育ちも信濃町で、自然豊かなところで生活しています。20代の頃から、そんな自然に囲まれた環境の中でよくコーヒーを淹れて飲んでいて 「コーヒーって、飲む環境や時間帯によって、より美味しく感じることができるんだなぁ」って感じていたんです。特に朝日や夕日とともに飲むのが最高で。

そういう環境や時間をともに楽しめるコーヒーを、いつか仕事にしたいと思うようになりました。

──松澤さんはもともとコーヒーに関わるキャリアを歩んでこられたのでしょうか?

いえ、コーヒーとはまったく関係のない電子機器の会社で、電源の構造設計の仕事をしていました。

学生時代からずっと何を仕事にしたらいいかわからなくて。理数系が得意だったから大学でその分野を学んで、会社に就職して。できるからやるかって感じで選んだ仕事だったんですよね。

それがふと自分の人生について考えたときに「やっぱり好きなことを仕事にしたいな」って気持ちが湧いてきて。「自分が好きなことってなんだろう。あ、そういえばコーヒー好きだな」と思って、フジローヤルという焙煎機メーカーが主催する焙煎体験のプログラムを受けにいったんです。

──焙煎体験のプログラム?

はい。焙煎機を使って自分で焙煎して、試飲して、比較して、という一連の流れを体験できるプログラムで。それがものすごく面白くて、ここで一気にコーヒーにハマりました。

それからお金を貯めて小さな焙煎機を買って、自分で焙煎してコーヒーを淹れるようになりました。そうすると周りの人が「コーヒー淹れてよ」とか「イベントに出店してみなよ」って声をかけてくれるようになって。当分の間は会社員として設計の仕事をしながら、休みの日はイベントに出店してコーヒーを淹れる、という生活をしていました。

──コーヒーのキャリアのスタートは淡々としているのに、そこから一気に人生が進んでいくのがすごいですね。焙煎を体験してからはずっとアクセル全開! みたいな。

あはは、「これを仕事にできたらいいな」というのが見えてからは一気にやる気になりました。

野尻湖のほとりにある「緑・水・風の空間」という広場で早朝からコーヒーを淹れるイベントを開催したり、軽トラを買って移動販売車を作ったり、いろいろしましたよ。

──そんなことまで……! ちなみにコーヒーをお仕事に選んで、大変だったことはありますか?

イベントなどの準備に時間がかかるくらいで、大変に感じることはないです。

会社員として仕事してたときのほうが大変でした。会社の一員として働くって、責任も重いし、精神的な負担が大きいじゃないですか。それに比べると、好きで選んだ仕事なので、楽しいと感じています。

──松澤さんがこれまで出店したイベントの中で、思い出に残っているものはありますか?

東京コーヒーフェスティバルの第1回目(2015年、東京青山・国連大学で開催)ですね。出店者の方たちが雑誌やメディアでよく見かける国内の人気店やオーストラリアの人気店で、2万人以上の来場者が集まる国内最大級のコーヒーのお祭りです。

初めて出店した回はあまりお客さんが来なくてしょんぼりしたんですが、それから何度か出店を重ねるうちに自分のお店に長い行列ができて、それはすごく嬉しく感じました。そのときの景色はいまでも覚えていますね。

──努力の花が咲いた瞬間。松澤さんのお店に行列ができた理由って何だったんでしょうか?

理由は僕も知りたいぐらいです(笑)。

焙煎の追究を重ねたり、看板やパッケージを工夫したり、いろんなアーティストさんとコラボさせてもらったりと、沢山の人に助けていただき、少しずつよくなっていった時期でした。

「木陰に休みに行くような気持ちで来てほしい」。 長野市でオープンしたForet coffeeで提供したい「癒しの時間」

Foret coffee 店舗

──そういったイベント出店を経て、松澤さんの人生は長野市の店舗「Foret coffee」のオープンに繋がります。店名の「Foret coffee」の由来は何ですか?

大きな木の木陰に休みに来るような気分でゆっくりコーヒーを楽しんでほしい、そんな思いがあるので、フランス語の「foret(フォーレ)」からアイデアをもらいました。

「フォレット」という響きが自分にとって心地よかったので、造語の「フォレット」にコーヒーをつけて「フォレットコーヒー」と名付けました。

Foret coffee 看板

──Foret coffeeの店内にはイートインスペースもあって、善光寺周辺を観光する際のひと休みにもちょうどいいですよね。お店に立ち寄るといつもBGMのチョイスがいいなあと思うのですが、お店でかける音楽はどうやって決めていますか?

僕やスタッフが好きな曲の中から、お店の雰囲気に合うものをかけています。自然や森を表現している曲が多いですね。あとはコーヒーの原産国のエチオピアやブラジルのアーティストの曲もかけたりします。

Foret coffee 店内スピーカー
Foret coffee イートインスペース
店内のビジュアルはイラストレーターの松本セイジさんによるもの。

信濃町から長野市まで、車通勤で毎日山を越える生活について

松澤さんに淹れていただいたコーヒー

──松澤さんは現在も信濃町にお住まいとのことですが、長野市のForet coffeeまでは毎日通勤されているんですか?

はい。車で毎日通ってます。片道30分ぐらいかな。会社員時代も毎日信濃町から長野市まで車で通勤していて、そのときは片道45分ぐらいかかってたので、そのときに比べると楽になってるし、特に苦ではないですね。

コーヒーを仕事にしてから自然豊かなところに焙煎所を作りたいと思っていて。それを実現するために、いま自分が住んでいる信濃町に場所を見つけて建築しています。

こちらが完成したら長野市のお店と信濃町の焙煎所を行き来する生活になると思います。信濃町で過ごす時間が、いまよりも多くなりそうですね。

信濃町に建設中の焙煎所
後日案内していただいた焙煎所はログ造りの建物。中野市に建てられていたオールドログハウスを移築する形で、2022年のオープンに向けて建設中。
焙煎所内の喫茶室
窓の開口が広く取られていて開放的なこちらのスペースは、黒姫山と妙高山を眺められる喫茶室になる予定。完成したらForet coffeeの根源にある「自然の中で飲むコーヒーの美味しさ」のコンセプトを思う存分体感できるはず。

信濃町で生まれた地元民が教える、信濃町のいいところ

信濃町の朝焼け
信濃町の黒姫山から見た朝焼け。

──信濃町での暮らしについてお伺いします。信濃町で生まれ育った松澤さんの目から見て、信濃町のよいところはどんなところでしょうか?

ありきたりな回答になっちゃいますが、自然が綺麗なところですね。信濃町って山も川も湖も近くにあって。そんな環境の中で暮らしていると、日常生活の中の朝日や夕日が本当に綺麗で癒されます。

中でも野尻湖畔から見る朝日と、黒姫・妙高山に沈む夕日が本当に最高です。季節によって表情が違って、ずっと住んでいても見飽きることがなくて。「ああ、いいなあ」って気持ちで満たされて、心が穏やかになります。

──景色が本当に綺麗ですよね。逆に信濃町で暮らしていて、困ることってありますか?

うーん、特にないかなあ。交通の便でいうと長野市も近いし、新幹線を使えば東京まで2時間ちょいで出られるし、いままで信濃町に住んでいて何か困ったことってないかもしれない。

──冬の雪かきがめんどくさいとかは感じないですか?

あ、雪かきは確かにちょっとめんどくさいですね。ただ信濃町の住宅って雪かきをできるだけしなくて済む作りになってるところが多いです。雪を落とす位置を考えて屋根に角度がつけられていたり、道路の目の前に玄関があったり、冬はカーポートからすぐに出られるようになっていたり。そういう工夫がある住宅であれば、そこまで大変ではないです。

冬に関しては、長野市のほうが大雪が降ったときに困る場合が多いと聞きます。信濃町では朝の3時から除雪車が通ってくれたりして、そもそも雪に対して強い仕組みになってるんですよね。

──町として、雪の多さを大きな問題にしない対策や考え方ができているんですね。都会から信濃町への移住を考えてる人に向けて、何かアドバイスをいただけますでしょうか?

僕の周りの移住してきた友だちはみんな楽しそうに暮らしてるし、ご飯もお水も美味しいし、生活するには最高な場所だと思います。野尻湖やスキー場があるおかげで一年中遊びに恵まれてますしね。

アドバイス……めちゃくちゃいいからぜひ来てください、としか言えないですね(笑)。

まとめ

野尻湖畔でアウトドアコーヒー

自然の中でコーヒーを味わう楽しさを語ってくれた松澤さんの影響を受けて、後日、野尻湖畔でアウトドアコーヒーを実践してみました。訪れたのは野尻湖のほとりにある松澤さんおすすめのスポット「緑・水・風の空間」。

Foret coffeeの豆で淹れたホットコーヒー
Foret coffeeで購入したブラジル産の自家焙煎豆を挽いて淹れた一杯。

澄んだ空気の中で、野尻湖を眺めながら飲むコーヒーは格別で、「このよさを他の人にも提案したい」と語る松澤さんの気持ちがとてもよくわかりました。コーヒー好きな人はぜひ一度試してみてほしいです。

購入した豆を楽しみながら、信濃町の焙煎所の完成を待ちたいと思います。

Foret coffee

Webサイト:https://foretcoffee.thebase.in
Instagram:@ki_____foretcoffee_roastery
営業時間:instagramにて営業日時をお確かめください

町民ライター 観音クリエイション

ヒップホップのトラックメーカー、ライター。音楽を作ったり、写真を撮ったり、文章を書いたりして生きています。2020年8月より長野県信濃町に移住しました。

\こんな記事も読まれてます!/