ありえない、仕事
【町民インタビュー】移動スーパー「とくし丸」で買い物の楽しさを運ぶ安藤さん
避暑地として知られる信濃町も、大変な暑さに見舞われた今年の夏。
その猛暑真っ只中の7月23日に、信濃町で初となる移動型スーパー「とくし丸」がスタートし、出発式が行われました。
とくし丸って?
https://www.tokushimaru.jp/about/
コンビニより、コンビニエンス。お家の前で見て、買えます。ソレが移動スーパーの魅力です。
地元のスーパーマーケット「第一スーパー」の協力を得て、とくし丸での移動販売を行う安藤さんに、とくし丸スタートの経緯や、開始して1ヶ月半経った現在の状況について伺いました。
■ 今回インタビューをしたのはこの方
買い物難民の力になりたい
==とくし丸を始められた経緯を教えていただけますか?
前から移動販売やりたかったの。
これまで介護福祉の仕事に携わってきた中で、いわゆる買い物難民というのか、ヘルパーさんにお買い物を頼んでいる人がすごく多いっていうのを感じていたからね。
だからいろいろ調べてて、それであるとき東京でとくし丸の社長の講演会があったのでその話を聞きに行ってみたら、私でもやれそうな範囲かなと思えたの。
==移動販売をやりたいって強く思ったきっかけとかありますか?
前職でケアマネージャーをやっているときに、どうやっても元気が出ない方がいて。
どうにか元気づけたいと思って色々手を尽くしたけどダメだったの。
そのときにやっぱり食べるものが大事だなと思って、自分でお買い物するのが大事だとも思ったのね。
だって、自分の頭の中で献立考えて、他の人に食材の買い物を頼むって相当大変なことで、普通できないよ。
その方もヘルパーさんにお買い物を頼んではいたけど、毎回頼むものは同じで、カップラーメンとレーズンパイとヤクルト。
いつもそればっかり食べてたんじゃ、そりゃあ元気でないよと思った。
介護福祉の経験から
==以前は信濃町の住民福祉課でお仕事をされていたんですよね。
2004年に信濃町に来て、その翌年から妙高市の方でケアマネージャーの仕事をしていて。
その後に、信濃町役場の介護認定調査員と、地域包括支援センターの仕事をしたの。
==じゃあ、今とくし丸で行かれているお宅の中には、前から知っていた方々もいらっしゃるということですか?
知っている方が3分の1くらい。
地域包括支援センターのときに担当していた地区はやっぱり知っている方が多いね。
より地域に密着できる環境を求めて信濃町へ
==そもそも安藤さんはなぜ信濃町に来られることになったんですか?
生まれは東京なんだけど、転々としていて、結婚したのは茨城県つくば市、子どもができてからは新潟の魚沼に6年住んでたの。
でももっと本格的な雪国に住みたいと思って(笑)、ふるさと情報館っていう田舎暮らし情報誌で調べて信濃町に来たの。
==その時はどんなお仕事をされていたんですか?
ずっと介護福祉の仕事をしていて、魚沼に行ったのも仕事がきっかけ。
当時、合併して南魚沼市ができる前に大和町っていうところがあって、そこは医療福祉の最前線の町だったの。そこで働きたくて、つくば市から移ったんだけど、あっという間に合併して大きくなっちゃって。
そしたら、(福祉の)目の届く範囲じゃなくなっちゃうんじゃないかと私は思ったんだよね。
その点で信濃町は良かったの、合併しなかったから。
信濃町に住むことを考えたときに役場に、「合併の予定ありますか?」って聞いたら「うちの町と合併してくれるところなんてないですよ」って言われて(笑)、それで良いなと思ったの。
実際にとくし丸を始めて―「とにかく楽しい」
==とくし丸を始めて今1ヶ月半ぐらい経ったわけですが、実際どうですか?
楽しいのは間違いない。皆さんとおしゃべりができて、本当に楽しい。
でもやっぱり物を売らなきゃいけないっていうのは難しいね。
あとは慣れない上に回る件数が多いから、これを頼まれていたよな~っていうのを忘れちゃったりして、ダメだな~って反省することも多いかな。
==今どれぐらいの件数を回られているんですか?
利用者は約125名。ありがたいことに、ちょっとずつ増えています。
昨日も、ルートを回っている途中に、急に車の前に人が出てきてびっくりしたけど、そうやって買ってくださる方がいたり。
==移動販売車で営業している最中に声をかけてくださって、お客様が増えることが多いんですか?
そう、あとは口コミ。
はじめは、前から知っている方が「安藤さんが来てくれるならお願いしようか」って訪問を希望してくださったりもしたの。
そういった方が他の人に紹介してくれて、利用者が増えてる。
これからも口コミで徐々に広がって、本当に必要な人のところに届くようになればいいと思ってる。
==安藤さんはそれぞれのお客様の好みや状況をかなり把握しておられますよね?
毎週お伺いするから、だいたいのお客様の状況は覚えたかな。
軽トラの限られたスペースの中に商品を乗せているから、お客様は自分の欲しいものがどこにあるが分からないと思うの。
だからお話をしながら商品を出したり、お買い物を手伝わせてもらうことも多いね。
でもずっと隣に付かれる接客が嫌な方もいるじゃない?
この人はあまり話しかけない方がいいんだなとか、そういうお客様との距離感もやっているうちに徐々に分かってきたかなと思う。
利用者の声
● Aさん
==利用されていていかがですか?
具合いいよ。
普段買い物するのは自分でスーパーまで車出すけど、遠いしめんどくさいでしょ。
とくし丸が来たときにだいたい必要なもの買って、あと何か足りなかったら近くのコンビニで間に合うから便利良くなった。
● Bさん
==どうしてとくし丸を利用し始めたんですか?
息子が週1回は買い物をして来てくれる。
でも何度もお願いするの申し訳ないし、とくし丸が来たら自分で買い足しができるから来てもらってるの。
● Cさん
==利用されていていかがですか?
安藤さんはもともと頼りになる人。
その安藤さんがこれ(移動販売)を始めてくれて、毎週来てくれて本当に助かってるよ。
これからも頼りにしてます。
今後について-「お買い物の楽しさを忘れないで欲しい」
==今後の目標があれば教えて下さい。
とにかく続けること。本当はとくし丸は週6日営業が基本だったんだけど、私にはちょっと難しいと思って週3日にさせてもらったの。自分が身体壊しちゃったら意味がないからね。
だから無理をしすぎずに、一人でやれる範囲で長く続けたいなと思っている。
あとは、今は回りきれていないけど、地形的に孤立した集落があって、そこの人たちは絶対買い物に不便していると思うから、今後行けるようにしていきたい。
==先程おっしゃっていた、「本当に必要な人のところに届ける」っていうところですね。
そうですね。さっき話した元気が出なかったっていう方も、今とくし丸を利用してくださっていて、それはやっぱり嬉しい。
今60歳ぐらいの人は、自分でインターネットで買い物ができるから、年をとってもそこまで買い物に困らないと思うのね。でも今70代後半以上の人はそうじゃないから、運転免許を返納しちゃったら、買い物の手段が本当に限られちゃうでしょう。
だからそういう人がいらっしゃる間は、とくし丸を続けられるように頑張っていきたい。
==自分の目で見てお買い物するのって大事ですもんね。
その日の自分の調子とか、実際に物を見ないと何が欲しいかわからないこともあるし、何より、買い物する行為そのものが娯楽っていうかさ、楽しいよね。
それを忘れないでいてほしい。
まとめ
交通機関が少ないために、移動手段が限られているという田舎ならではの問題点。
そのネガティブポイントを逆手にとって、お年寄りが買い物だけでなく、他人とコミュニケーションをとれる機会を生み出していることが、移動スーパーの素晴らしい点だと感じました。
田舎でしかできないビジネスや、田舎だからこそ求められている人材って意外に多いと思います。
自分にできることを探している方や自分がやりたいことを叶える場所を探している方、
都会を離れて一度信濃町に来てみませんか?