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スキーのために二地域居住。都会と田舎それぞれの良さを楽しむ佐藤夫婦のライフスタイルとは

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スキーのために二地域居住。都会と田舎それぞれの良さを楽しむ佐藤夫婦のライフスタイルとは

こんにちは、町民ライターのSakiです。今年の冬はどのように過ごされましたか?信濃町のスキー場はたくさんの観光客が来ていて活気を取り戻しつつあります。

スキー・スノーボード好きの集まる信濃町ですが、今回のインタビューをしたお二人もスキーが大好きな方たちです。移住とは少し違った生活スタイルを教えていただきました。

今回インタビューした方

二地域居住を始めたきっかけ

――まず、どうして二地域居住を始めようと思ったかを教えてください。

ヨシさん:

日常的にスキーがしたくて、滑りに行って仕事してということができる拠点として、地方でマンションを探していたんです。テレワークができる仕事をしていて、場所の制約がないので。
初めは湯沢とか苗場とかを探したんですが、高層マンションばかりで、場所も居心地が良く感じませんでした。

アヤさん:

駅前もごちゃごちゃしていたしね。

ヨシさん:

白馬も探しましたが、スキー場まで歩いて行ける物件がなかったんです。そんなときに、タングラム斑尾スキー場のすぐ近くにあるマンションを見つけて、来てみたらずいぶんいいところだなと。

――特に何が気に入りましたか?

ヨシさん:

スキー場まで歩いて1分というアクセスの良さと、雰囲気。僕の中で田舎というのは人数が少ないとかではなくて、空気感の問題。田舎くさくないこの町の空気感が好きですね。

アヤさん:

湯沢や苗場等と、信濃町の田舎感の違いがうまく説明出来ないのだけど、私的には田舎だけどなんとなく殺風景で殺伐さが少し感じられる田舎が前者で、殺伐感が全くないやんわりとした田舎感が漂うのがここ信濃町かなと思います。

――テレワークをされているとのことですが、具体的には何をされていますか?

ヨシさん:

グラフィックデザイナーです。20歳くらいから40年近くしています。

アヤさん:

私はお料理とインテリアのスタイリスト。今は専業遊び人です。

――アヤさんが専業遊び人になったから二地域居住を始めようと思われたのですか?

アヤさん:

いえ、はじめは通いで月に1週間とかこちらに来ていたのが、徐々に長くなっていったという感じですね。当時そこそこ仕事はあったのですが、ここに来ると気持ちも変わるし、こっちの生活が長くなればなるほど仕事も減っていきましたね。自分の気持ちとタイミングがどんどん合っていって、スタイリストの仕事を辞めるようになったかなと思います。

地域との関わり

――信濃町での時間が長くなっていったというのは、何かきっかけがあったのですか?

ヨシさん:

最初はスキーができる冬の間しかいなかったのですが、トレイルランニングに関わるようになってからここでの生活の時間が長くなっていきました。

アヤさん:

トレイルランニングというのが何か知らなかったときに笹ヶ峰に行ったら、そこにいた方に「ここは110キロある信越五岳トレイルランニングのコースの一部だよ」って教えてもらって、そのコースを歩いてみたらすごく楽しくて。すぐ後にボランティアを募集しているのを知って参加しました。

ヨシさん:

50キロと110キロのトレイルランニングレースがあって、仕事で携わっているアウトドアメーカーがそのレースをサポートしてるから存在自体は知ってたんですが、こっちに来てそういえば面白いことやっていたなと思い出して。

――ボランティアというのはどんなことをするのですか?

アヤさん:

レース開催前の期間にトレイルコースの整備をします。雑草を刈ったり、老朽化した木道や木の橋を直したり補強したり。ドロドロのところに木道を作ったりもしますね。レース直前にはコースに誘導看板を立てる作業をして、レース終了後にそれを回収。他にも救急用の備品を揃えたり、レース当日は会場準備片付け、受付やコース誘導等をボランティアの一員として手伝います。

ヨシさん:

山道の整備とかトレイルの保全活動にも参加していったら、どんどん知り合いが増えていきました。そこでスキー友達ができたり。

――ボランティアを通して地域に溶け込んでいかれたんですね。山の整備というのは山に囲まれた信濃町ならではの取り組みという気がします。

アヤさん:

ここに住むようになったとき、スキーもほとんどしないし、山も好きじゃないのに、仕事を少なくして、それでいいのって友達によく言われました。それでもいいかとあまり考えずに来てみたら、最初は、寒いし、やることないからスキーを始めたけど上手くできないし、1人の友達もいないのが寂しかったけど、今はどんどん友達が増えてきてとても楽しいです。

田舎ならではの自家菜園をスタート

――他にも信濃町に来てから取り組み始めたことはあるんですか?

アヤさん:

田舎ならではといえば、畑を始めました。オーガニックで栽培してます。コロナが流行して、自然と以前よりも信濃町に長くいるようになった頃に、たまたまご近所のお友達つながりで畑を借りれることになって。こっちの方ってよく人を繋げてくれるんですよね。

ヨシさん:

以前は違う方にその畑貸していたようですが、しばらく空き地状態だったようなんです。

――荒廃農地が増えてきていることは問題になってると聞いています。

アヤさん:

何の知識もなく始めたので、こういったものと思いこんでいたものが違っていたりしました。畑は土を耕さないとできないですが、耕すことで地中の炭素が大気中に放出されて地球温暖化に繋がるということも知ったり。ここ3年間試行錯誤して、農薬を使わずに、自然に近い形で育ててます。

ヨシさん:

温暖化の話になると難しくなってしまいますが、単においしい野菜が食べたいんですよね。できたら自然栽培をやりたいので、枯れ葉を集めて堆肥を作っています。すぐそこの道の下に枯れ葉がたくさん落ちているので。笑

自然栽培でつくったお野菜たち

――信濃町と都会と生活の違いはどう感じていますか?

アヤさん:

都会に比べると生活は不便です。私は車の運転が得意じゃないので、雪道になる冬の間は運転しないので余計に不便になります。でも不便って慣れますし、それはそれでひとつの魅力かなと。
除雪についても、住んでいるところがマンションなので、自分の車の回りだけしか雪をどけなくていいので、特別困ることはありません。でも買い物の仕方は変わりましたね。食料はまとめて買うようになりました。

ヨシさん:

通販で何でも買えるからその点では不便だとは思わないですね。

アヤさん:

茅ケ崎に帰るとモノの値段の高さに驚きます。特にお野菜は恐ろしく高い。5~10分歩けば何でもあって便利なのはありがたいですが。
不便なことに慣れれば田舎って景色もいいし、人も優しいし。空気や空や、家から見える妙高山など自然に元気をもらえます。こっちに来てから季節の移り変わりをすごく感じるようになったし、畑を始めて気温のこととか天気とか気にするようになりました。
都会と田舎どちらが良い悪いということではなく、自分がそれまで知らなかった生活の仕方を知ることは驚きが多いですが、私は田舎の生活を知ることができて良かったと思っています。

自分たちの好きな生活スタイル

――なぜ移住ではなく、二地域居住を選ばれたのですか?

ヨシさん:

当時はサーフィンもしていて、夏は海、冬は山という生活がしたかったんです。

アヤさん:

私は茅ケ崎と信濃町という拠点が2つあることで、自由な気持ちでいられます。海が恋しくなったら茅ケ崎があるって、逃げ場があるということで息が詰まらずにいられます。
田舎暮らしに憧れて全部売り払っちゃって都会から来ることに比べたら中途半端だけど、この生活スタイルが自分たちには合っているかなと思います。

ヨシさん:

先ほどトレイルランニングの話をしましたが、良いトレイルがたくさんあります。有名なのは信越トレイル※1。通常のトレイルランニングには登山道とか使ったレースが多いのですが、信濃町付近のコースは長く平坦で走れるコースが多くて、アスファルトもほぼない。こんな条件がいいトレイルが長くあるのは珍しいんですよ。日本一って言う人も多いですし。

※1 信越トレイル

信越トレイルは長野県と新潟県の県境に連なる全長110㎞のロングトレイルです。
このトレイルは、関田(せきだ)山脈エリアと苗場山麓エリアに整備された豊かな自然と人の暮らしが共存する幾多の里と山を結んでいます。

信越トレイル NPO法人信越トレイルクラブ

他にはあまとみトレイル※2という、長野市の善光寺から続いているトレイルも良いですね。野尻湖の象の小径(こみち)っていう湖畔を走るのが、とても魅力的です。

※2 あまとみトレイル

「あまとみトレイル」は令和3年10月23日に一部開通した長野駅~戸隠~妙高・笹ヶ峰~野尻湖~斑尾山頂を結ぶ総延長86kmのロングトレイルです。(中略)
名称の「あまとみトレイル」は西の雨飾山の「あ」、東の斑尾山の「ま」、南の戸隠山の「と」、北の妙高山の「み」と、この地域を代表する山の頭文字をとって名付けられました。

あまとみトレイル 妙高戸隠連山国立公園連絡協議会

アヤさん:

それに野尻湖がある景色がすごくいい。田園風景と湖とかここにしかない風景だと思います。野尻湖の存在って大きい。夏はSUPもできますしね。
それに、畑で土をいじると癒されます。ハーブや野菜の葉の香りにも。畑以外もここ信濃町には癒される空間が沢山ある。本当に静かで豊かな時間が流れてる。気持ちの持ち方やモチベーションの保ち方等がここに居て変わった気がします。
もちろん茅ヶ崎には茅ヶ崎の豊かさがあって両方から元気をもらえる。どっちつかずと言えばどっちつかずだけど、二拠点生活はそれぞれに違った良さを感じることができます。

――他にも信濃町の気に入っているところがあれば教えてください。

ヨシさん:

斑尾山は標高が低いから天気が荒れることが少ないんです。全体的に気候が安定していて晴れの日が多い。悪天候でスキー場がクローズになるってことはほぼないですね。あと、信濃町に来てから知ったのは、クロスカントリーとか、雪遊びができることがたくさんあります。

アヤさん:

ヨシはこっちに来てからスノボを始めたんですよ。

ヨシさん:

冬の遊びが楽しいから、どんどん広がっていって。アルペンだけだったんだけど、テレマークも始めて、今はスノボ。

スキーを楽しむヨシさん

――こっちに来てからも好きなことが増え続けているんですね。最後に移住を考えている方にメッセージをお願いします。

ヨシさん:

山、特に雪山が好きだったらこんなにいい環境はないと思います。移住というよりは体験って形でトライしてみたらいいんじゃないでしょうか。思ったより不便じゃないですしね。

アヤさん:

ここは楽しみの幅が広い気がします。都会ではお金がかかったりするけど、ここではお金をかけなくても楽しめることがたくさんあると思います。来てみて分かる楽しみも多いので、ぜひ遊びに来るだけでも来てみてください。

まとめ

ヨシさんアヤさんは次々と自分たちが楽しいと思うことを始めておられて、それが田舎生活を楽しむ秘訣なのだと感じました。より多くの楽しみを味わえる二地域居住は、生活の質を上げるためのひとつの手段のようです。仕事の制約で移住ができない方や、田舎生活に不安のある方は、こういった生活スタイルも選択肢として考えられてみてはいかがでしょうか。

町民ライター Saki

兵庫県の姫路市出身。ニュージーランド出身の夫とスキーロッジを始めるため、信濃町に移住。東京・北海道・オーストラリアなどいろいろなところに住んできたからこそ分わかる信濃町の良さを発信していきたいと思っています。

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