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町にただひとつの小中一貫校ができて10年。信濃小中学校の今を校長先生に聞きました

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町にただひとつの小中一貫校ができて10年。信濃小中学校の今を校長先生に聞きました

ご家族で地方移住を考えるときに、お子さんの教育環境というのは優先度の高い検討ポイントだと思います。

信濃町の教育の大きな特徴のひとつが、小中一貫教育。町内にある学校は信濃小中学校1校だけで、9学年の子どもたちが同じ校舎で学んでいます。

2012年に信濃小中学校が開校し、今年で丸10年が経ちました。ありえない信濃町通信では、2016年に信濃小中学校の当時の校長先生にインタビューを行っています。

それから6年。コロナ禍を経て、今の信濃小中学校がどのような様子か気になっている保護者さんも多いはず。そこで現校長の武内 裕先生にお話を聞いてきました!

少子化によって変わっていく学校

――信濃小中学校開校から10年経って、開校当時から変わったことはたくさんあると思いますが、その中でもここ数年での大きな変化があれば教えていただけますか?

まず、学校の規模で言いますと、現在の全校の児童・生徒数は約440名(2022年現在)。開校当時は約650名でしたので、この10年で約200名減っています。これまでは1学年2学級あるいは3学級で維持していたのですが、これからは単級(1学級)の学年が出てくるというのがひとつの大きな変化で、今までできていたことができなくなる可能性が出てきます。
例えば何かと言いますと、単級になると教職員の数が減ります。1学級減ると担任1人だけでなく、付随する教職員が複数名減るのです。教職員の数が減ると、本校が開校当時から大事にしてきた小中学校共通の教科担任制の幅が狭くなるという懸念があります。また、高等部(5年生から9年生)の課外活動である部活動にも影響がでてきます。

――部活動の数に対して、担当する教職員が不足するということですね。

現在の本校の部活数は13部ありますが、その中には部員数が3名という部もあります。そのような少人数の部でも活動ができるよう、5年前から飯綱町(信濃町の隣町)と合同部活に取り組んでいます。
それでも年々生徒数が減って厳しくなっているので、今後どのように部活動を運営をしていくかは大きな課題です。国が部活動の地域移行を進めていますが、それもすぐに移行できるわけではないので、子どもたちのニーズにあった部活をなんとか残していけるよう、いろんな方法を探っているところです。

教科担当制の広がり

――教科担任制の幅が狭くなるという懸念については、どのように対応されているのですか?

2020年から新しい取り組みを行っています。これまでは5年生から担任の先生が国語、算数と自分の専科の3教科を担当し、他の教科を教科担任制としていました。そして7年生からは全て教科担任制という形でした。
これを2年前から、5年以上は全て教科担任制にし、3年生と4年生にも教科担任制を取り入れはじめています。例えば、図工はT.T.(ティーム・ティーチング)で、担任の先生だけでなく美術の専科の先生も授業に入るようになりました。

高等部における教科担任制の変化

――教科担任制の範囲を積極的に広げられているのは、子どもたちにとって学業面で良い効果があるからでしょうか?

そうですね。校内で見てもこの10年で学力が上がってきていますし、文科省が行っている全国学力学習状況調査の結果からも、学力的成果が出てきている状況が見えています。ですが、それよりも少子化への対応のほうが大きな目的です。
この町の子どもたちは、保育園からずっとほぼ同じ集団の中で生活をしているのですが、子どもにとって様々な人と関わることって大事ですよね。ただ、少子化が進んでいる状況では、子どもの集団を変えることは難しい。それならいろんな大人が関わっていこうということで、担任だけでなくいろんな先生が授業に入ったり、生活を見たりすることができるように教科担任制の幅を広げています。

一方で、教科担任制を広げるとどうしても困る事がでてくるのですが、何かわかりますか?

――ええ?!なんでしょう、検討もつきません・・・。

小学校の授業時間は45分、中学校は50分ですよね。そうすると当然、小学校と中学校では日課が違います。午前中だけでも4時限あるので、小学校と中学校では20分の差が出てしまいます。そうすると中学校の教職員が小学校へ行って授業する、またその逆、というのが難しく、教科担任制を広げるのに支障をきたしていました。そのため、一昨年からは小学校も50分授業にし、教科担任が小中両方に行き来しやすい日課づくりを行いました。

――それは大きな改革ですね!授業時間を伸ばしても、子どもたちの集中力に影響は出ないのでしょうか?

もともと45分授業でも、子どもたちみんなが集中できていたかと言うとそうではありません。そのため、45分を2分割するなど工夫をしながら授業を進めていました。同様に、授業が5分長くなっても、その5分を「深化の時間(子どもたちがそれぞれに学びを深める時間)」にしたり、コロナ対策として手洗いやトイレに行く時間をずらすことに利用したり、5分間を柔軟に使っています。小学校の職員は、授業時間が伸びたことで余裕を持って授業ができるようになった、とプラスに捉えている方が多いように思います。

もうひとつの目的として、縦割り活動をしやすくするということもありました。本校は縦割り活動を大事にしているので、日課がずれていると、初等部と高等部が関わる時間を作るのが難しかったのです。でも日課が同じになったので、例えば昼休みや総合学習の時間に集まって、縦割りで活動をするということがしやすくなりました。

縦割り活動について

――縦割り活動を大事にするというのは、開校当時から一貫して変わらない御校の大きな特徴ですよね。

そうですね、縦割り活動は本当にとてもいい活動になっているなと思います。

本校の縦割り活動として象徴的なのは入学式で、9年生が1年生をエスコートするのが本校の伝統です。そして9年生が卒業するときには、初等部(1~4年生)で作ったメダルを1年生が9年生の首にかけて卒業をお祝いするのですよね。
はじめは私もこの学校の縦割りの良さってこれだなぁと思っていたんですよ。でも今は、異年齢が一緒に学習や生活をする効果や意味は、日常の中のもっと深いところにあると感じてます。

例えばこんなエピソードがあります。本校では、朝、通学用の車(※1)から降りた子どもたちがロータリーから校舎へ歩いてくるのですが、その中には学校に行くのを渋って泣いていたり、逃げちゃったりする子もいるのです。そんな子に対して、ある高等部の子が「僕も経験あって辛さがわかるから、一緒に頑張ろう」と言って、手をひいて教室まで連れて行ってくれるのです。それを見て、その高等部の子に「どうしてそういうことをしてくれるの?」と尋ねたら、「僕も同じようなことを上級生にしてもらった経験がある。今僕にできる恩返しは、同じように辛い思いをしている子を支えてあげることだから」と。

※1 信濃小中学校への通学

通学方法は、通学距離や学年に応じて、徒歩以外に自転車、スクールバス、デマンドタクシーがあります。

――お話を聞いているだけで心があたたかくなります・・・。

毎日いろんな年齢のいろんな子と関わるので、子どもたちは思いやりや配慮をするという感覚を自然に培っているのだろうと感じます。そういうできごとが、他にもたくさんあるのです。

縦割りは、私にとっては入学式で9年生と1年生が手を繋いでいるという次元の話ではなく、もっと深いところで、日々の生活の中で子どもたちが人との接し方や優しさを培っている、とても大事な活動だと強く思います。

現在では、遊びや行事だけでなく授業も縦割りで行う機会を増やしており、異年齢で体育や道徳の授業をする、なんてことも多くなってきていますので、同じ縦割りといっても5年前10年前とは少し活動が変わっていますね。

保育園との交流・連携

――行事に保育園の子たちが参加することもあると伺っていますが、それは今もでしょうか。

「Shinanoオリンピック」という行事には保育園の子にも来てもらっています。Shinanoオリンピックというのは、それまで運動会と呼んでいたものですが、職員ではなく子どもたちが主体で動いて、子どもたちがすべて企画・運営しており、こちらも縦割りで行っています。その中で、今までの運動会では、旗拾いという競技を保育園の子たちだけでやってもらうということが多かったのですが、今では保育園の子たちも縦割りの中に入って競技をしてもらう形にしています。

――中学生と保育園児が一緒に競技してるなんて、すごいですね。

それ以外でも、9年生は保育園に保育実習に行きますので交流があります。保育園も小中学校どちらも同じ町立なので、情報共有は頻繁に行っていて、本校の職員が保育園での活動に参加して、子どもたちの様子を把握するということもしていますね。保育園卒園後、子どもたちができるだけスムーズに小中学校に慣れることができるよう、連携をしっかり行うようにしています。

地域住民との関わり

4年生の米づくり 画像出典:信濃小中学校ホームページ

――信濃小中学校は地域学習も大切にされていると聞いていますが、現在も地域の方との関わりは多いのでしょうか。

この2年はコロナ禍のため難しかったのですが、現在は、学習内容を見たときに、地域の方と触れ合うことが大事だと考えられる場合は、どんどん地域の方と関わったり、校外に出て活動したりするよう呼びかけを行っているところです。地域にはいろんな匠(たくみ)がいますから、その方々から学ばせていただこうと。
町で組織していただいている「しなの学校応援団」(※2)の団長さんに地域の方と繋いでいただき、学習を可能にしていただいていることが多いです。農家に行ってとうもろこしの植え方や育て方を教えてもらったり、米作りをさせてもらったり、七夕まつりのときには竹を取りに行くことに協力していただいたり。いろんな人の生き方に触れることが、進路学習やキャリア学習に繋がるとも考えています。

※2 しなの学校応援団

教職員とともに児童・生徒の育ちを支え、地域の皆さんの発想で、地域の子供たちを育てていく組織「しなの学校応援団」を組織し、登下校支援、学習支援、読み聞かせ支援、体験支援、遊び支援等を行っています。

引用元:http://www.shinano-school.ed.jp/docs/644.html

ただ、以前と比べると地域での活動は減ってきているとは思います。以前は地域学習をするために、授業時間を削ることもあったのですが、学校でやらなくてはいけない授業・カリキュラムは保証しないといけませんので、今後は地域学習と授業の時間のバランスをうまくとっていきたいと思います。

転入生に対するサポートについて

――移住者の中には、お子さんがすぐ学校に馴染めるか心配な方もおられると思うのですが、転入生へのサポートはどのように行っておられますか?

本校は1年生では各クラスにひとりずつ、2年生から4年生については学年にひとりずつ学習支援員がついています。また、高等部では各クラスに副担任がついていますので、複数の目で子どもたちを見ることが可能です。そのため、なにか心配されるようなことがあれば、その子に気づいて対応しやすい環境です。

それに加え、特別支援の体制もしっかりしています。特別支援は、誰もが安心安全に学校生活を行えるよう支援するシステムですので、転入してきた子に困り感があるときにももちろん対応します。現在は特別支援コーディネーターの配置が各学校に義務化されていますが、この学校にはさらに「トータルコーディネーター」という職員がいて、いつも全教室を回って子どもの様子を把握していますので、なにか困っている子がいたら、すぐにどう支援するか考えて対応をします。

また、それぞれの学級の教室以外に、小集団での学習指導を行う教室や個別指導の教室が複数あり、子どもたちの状況に応じた様々な支援を行っていますので、はじめて信濃小中学校に来た子が慣れるための材料になっていると思います。

子どもたちの自ら発信する力を後押し

――最後に、校長先生が今後大切にしていきたいと思われていることがあれば教えてください。

町に1校だけの学校なので、”信濃町らしい学校づくり”というのは常に意識して、授業や活動を行っていきたいと思います。

そして子どもたちには、自ら発信する力をつけていってほしいと思っています。発信する力というのは今の時代に求められているのはもちろんですが、子どもたちがもっと自分を出し、協働しながら新しいものを創造していって欲しいですし、信濃町や信濃小中のよさを発信して欲しいです。

あいさつもそれに通ずると思っていますので、私が自分からあいさつをすることを心がけていますが、子どもたちの方からあいさつできるようになっていってほしいと思います。

――校長先生、ありがとうございました!

まとめ

校長先生に信濃小中学校の現状をありのままにお話いただき、社会の変化によって学校にも新たな課題が生まれていることを教えていただきました。教職員の方々は、小中一貫教育だからできることを最大限活かして、新たな課題に柔軟に対応しながら、子どもたちの豊かな学びや成長をサポートしておられるのだなと感じました。

信濃町の教育に興味を持たれた方は、ぜひ一度お子さんと一緒に信濃町へ足を運んでみてはいかがでしょうか。

信濃町立 信濃小中学校
http://www.shinano-school.ed.jp

信濃町立信濃小中学校に関するお問い合わせは↓
信濃町 教育委員会 総務教育係
TEL:026-255-5923
Email:soumukyouiku@town.shinano.lg.jp

ライター よしし

兵庫県出身。2019年に信濃町に移住してきました。仕事の空き時間を見つけては野尻湖に浮いたり、森歩きをしたり、愛猫4匹とゴロゴロしたりするのが至福です。

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