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町に小中学校は1つだけ。校長先生に田舎での教育について聞いてみた

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町に小中学校は1つだけ。校長先生に田舎での教育について聞いてみた

田舎の子育て事情って、外からでは全く見えないですよね。
ここ信濃町には、小中一貫校として学校が1校だけあります。高校はありません。

2012年までは、信濃中学校と町内に5つの小学校がありました。
人口減少や少子化の影響もあり町内の学校すべてを統合し信濃小中学校が開校となりました。

信濃小中学校の校長先生に、信濃町の教育環境について聞いてみました。

小中一貫校について

1つの学校としての規模は県内でも大きめ

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まずは、「小中一貫校」についてお話していきます。
いま、学校全体としては700人弱くらいの生徒が通っています。
その規模は、長野市と比べてみても、結構大きな小学校と同じくらいの規模感です。
「田舎」と言っても、決して子供の数が極端に少ない学校というわけではありません。

2012年の学校の統合までは、学校全体で10人以下なんてところもありましたけど。
1つの学校になったことで、割と大きな、みんなで活動ができる学校ができました。

いま、小学生1~6年生と中学生1~3年生が1つの校舎で一緒に学んでいます。
なので中学生は「中学1〜3年生」とは言わず「7年生、8年生、9年生」と言っています。

小中一貫校にするメリット

ヒーリングとケアリング

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小学生と中学生が同じ場所で学校生活を送ることで、大きい子供たちが小さい子供たちの面倒をうんと見るようになります。
そして、面倒を見ることで、癒されるんです。

中学校3年間って、ものすごく幅の狭い学年の集まりじゃないですか。
それによって何が起こるかっていうと、1年生と3年生と運動や学力では大きな差がないために3年生は下の学年を意識して、ものすごくストレスを感じるんです。

ところが、1年生から9年生まで一緒になると、1年生は9年生から見たら宇宙人なんです。理解が全くできないし、話も全く通じない。

4月の入学式が終わると、どんなことが起こるかっていうと、1年生が休み時間に大きい子供たちの教室に遊びに行くんですよ。
大きい子たちは、遊んであげるわけなんですけど、1年生は楽しくなっちゃって教室に帰るのが嫌になっちゃう。
だけど、お兄ちゃんお姉ちゃんたちが無理やりなだめながら教室に連れていくと、1年生はまだ遊びたくて泣いて抱きついたりするんです。
毎年見られる風景なんですが、そんなことって兄弟でもいない限り経験したことなんてないわけですよ。

しかも小さな子供たちから好かれたり慕われたりするのって、必ずしも運動ができたり成績が優秀な子ってわけじゃない。
人柄とか、子供に好かれる雰囲気を持っている生徒が親しまれるんです。

こうやって小さな子供のケアをしたり、小さな子供と触れ合うことで癒されたりという環境が、大きな子供の問題を起こりにくくしています。
問題が無いわけではないですよ。もちろんあります。
しかし、他の大きな学校や都会の学校に比べたら、いじめや生徒指導上の問題は非常に起こりにくいと思っています。

保護者の方から「小さな子供が高学年にいじめられたらどうするんだ」という心配も聞かれたこともあります。
中学生が小さな子供を注意する様子をよく見かけます。
小さな子供は言うことを聞かずに中学生に手を出してくることがありますが、中学生側は絶対に手を出しませんね。

運動会、文化祭は全校で行う

運動会や文化祭は、1年生から9年生まで一緒に行います。
運動会なんかは、よその学校に比べたら、それぞれの学年で出る種目っていうのは限られていて、いろんな種目に出る子供たちの姿を見たいと思っている親御さんたちにとっては満足いくものではないかもしれません。
うちの学校は運動会当日までほとんど練習時間も設けません。
そのため、本番当日の整列なんかは、最初ぐちゃぐちゃなんですよ(笑)
でも、大きな子たちが声をかけながら、だんだんとまとまってくる。
よその学校のように、ピシッとはしていないかもしれませんが、本番の日の中で、ちゃんとできるようになっていきます。

美しい整列や行進はできません。
だけど、枠にはめられ整列する子供たちを美しいと見るか、自発的に動く子供たちの姿を美しいと見るかの違いだと思っています。
親御さんたちの価値観を変えられる可能性がうちの学校にはあると思っています。

リレーで足の遅い高学年生が走るとき、中学校だけだったら「サボっちゃえ」とか「どうせ勝てないから手を抜こう」とかって気持ちになりがちなんですが、1年生が見ているっていうのは違うんですよ。
1年生の前を走り抜ける時に1年生から歓声が湧き上がるんです。
それを肌で感じるわけなので、一生懸命に走るんですよね。
このような経験ができるのは、小学校中学校合わせて全校で一緒に進めているからです。

教科担任制

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5年生から、一部、教科担任制がはじまります。
5年生、6年生は、国語と道徳や総合的な学習を担任の先生がみますが、それ以外の授業は教科担任がみるようになります。
これは、中学校に似た形を、つなぎとして早い段階から導入しているということなのですが、5年生って非常に難しい学年でして。
小さい頃に興味関心に寄り添った学習を積んでくると、5年生くらいに知的好奇心が一気に開花するんです。
その頃に、担任1人で授業を教えていると、子供たちの知的欲求に応えられるような授業をするのって非常に難しいんですよ。
なので、教科担任の先生が専門的な学習を担任の先生と一緒にできることを可能にするこの教科担任制は、子供の教育面で非常に良い効果をもたらすと思っております。

信濃町の子育て環境の良いところ

支援員の先生

うちの学校は小学校1・2年生のクラスには支援員という先生がつきます。3・4年生には学年に1人つきます。
支援員とは学級担任の先生と一緒になって学級づくりを進めていく先生のことです。
おそらく長野県ではうちの学校だけかもしれないのですが、常に2人の先生が授業を見るような体制をつくっています。

それから、文部科学省の制度で小学校1年生は1クラス35人以下、2年生以上は40人以下になるように編成するということが決められています。
ところが信濃町では、1年生から4年生までの間は、30人以下になるようにしています。

例えば2年生が全体で61人いたとしましょう。
その場合、県や国の制度では2クラスになる計算ですが、信濃町では3クラスになるんです。2年生には支援員がつくので、61人の子供たちに対して6人の先生で見ることができます。

これは、他の市区町村はもちろん、他県と比べても非常に手厚い教育環境を用意できていると思います。

学級費の無償化

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義務教育は無償化って言いますけれども、学校に収めなきゃいけないお金っていうのが、給食費、旅行の費用、そして「学年費、学級費」という教材を買うためのお金というものがあります。
ここ信濃町では「学級費」や「学年費」っていうものを全て無償にしました。
町の予算の中で子育てに必要なものを購入し、ご家庭の負担を減らすということを行っています。

例えば、「鍵盤ハーモニカ」とかって、他の学校では自分のものを購入しますよね。
信濃町では、リサイクルやリユースをしながら、「吹き口だけ購入しましょう」とか「兄弟のものを使いましょう」とか、できるだけお金をかけないように工夫を行っています。
それは中学校も同じです。だから教育費にかかるお金は非常に少ないと思います。

地域の人たちが先生

学校だけでできることには限界があって先生たちもオールマイティではないので、地域の人たちにも関わってもらいながら授業を進めています。

例えば、小学校のクラブ活動。
子供たちの興味関心を叶えるために、地域から教えられる人を招いて指導者の先生としてクラブ活動を行っています。
クラブ活動の担任の先生も、活動の最中は子供たちと一緒になって教えてもらうんです。
だから、生け花をやったり、郷土料理を作ったり、地域の人たちのおかげで、先生たちも刺激になっています。
おかげで担任の先生たちが自主的に、地域のいろいろな方に声をかけたりということが活発に行われています。

また、信濃町には3つの博物館があります。野尻湖ナウマンゾウ博物館、一茶記念館、黒姫童話館。そこでも様々な学習の機会を設けていただいており、これは毎年の恒例行事として組み込んでいます。

このように町のいろいろな人たちがどんどん教育に関わってきてくれる環境があります。
自然学習、博物館での学習、地域の人たちからの学習、信濃町にはこれだけ揃っていて、それは他の地域の学校ではできないことなんじゃないかなと思います。

信濃町で子育てをする上で大変なこと

登下校の不便さはあります

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信濃町は広いので、町の端っこに住んでいる生徒は、登下校に負担がかかりますね。
遠い子で40分くらいかかっています。通学はスクールバスが多いですね。
3台あるのですが、場所によっては9人乗りのタクシーで通っている子たちもいます。
登下校にかかるスクールバスやタクシーの費用はすべて町が負担しています。

最後に信濃町に移住を考えている親御さんにメッセージ

子育ての時期だけでも!

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信濃町は本当にいいところですよ。

「子育ての時期だけでも信濃町へどうですか?」って言いたいくらいです。
信濃町立信濃小中学校は、進学とかそんなことに特化した学校にするつもりはなく、子供たちに様々な経験をしてもらって、本当に地域で活躍できる人材を育てていきたいなと思っています。

ありえない、暮らしを見つけよう

信濃町の子育て環境、いかがですか?
都会では、なかなか子供たちに提供できない、のびのびとした環境がここにはあります。

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