ありえない、仕事
廃材を再利用して建物をリノベーション。「GOOD TIME BUILD」林さんが実現した、仕事も遊びも楽しむ田舎暮らし
今シーズンは久しぶりにどっさり雪が降っている信濃町です。町内あちこちにある雪捨て場には、こ~~~んなに大きな雪の山ができています。
さて、そんな信濃町内で、何軒かのお店やオフィスにお邪魔したときに、いろんな色や材質の木材が並べられた特徴的な内装を見かけました。
例えば過去の取材で使わせてもらったこちら↓のフリースペースや、
こちら↓のオフィス 。
味があって素敵な内装だなと思っていると、「これはハヤシくんにやってもらって~」「ハヤシタクさんが作ってくれて~」と、しょっちゅう名前が話題に挙がるのが「ハヤシ」さんという人物。
調べてみると、2017年に取材させてもらったサーファーの林さんでした。
この記事から5年、当時は地元の建築会社にお勤めでしたが、今はご自分で事業をされているそう。 林さんは廃材を再利用して建物のリノベーションや家具の制作を行うことで、古い資材の価値を蘇らせていて、そんな林さんの元には町内外からいろんな依頼が舞い込んでいるという噂です。
ということで、今回は林さんの現在のお仕事や、移住のきっかけ、信濃町での暮らしについて聞いてきました!
今回インタビューした方
住むのは田舎がいい。東京から信濃町へ、2回目の移住を決意
――以前の取材記事によると、林さんは信濃町にUターン( 一度生まれ育った場所以外に住んで働いたあと、再び出身地に戻ること )されたということですが、もともとご出身は東京なのですよね?
そうですね、小学生のときに東京から信濃町に引っ越してきて、社会人になって東京で働いたあとに、信濃町に帰ってきたので・・・Nみたいな形ですかね。
―― N、確かにUではないですね(笑)。はじめに信濃町に引っ越したときはどういう経緯だったんですか?
親がペンションやりたいって言って、選んだ地が信濃町だったのでここに移住したって感じです。 だから親も信濃町出身じゃなくて、もともとは縁もゆかりもなかったんですよね。
――そうだったんですね。そして信濃町で子ども時代を過ごされた後は、東京に戻られて働いておられたんですよね?
そうですね、東京では施工会社で10年ぐらい働いていました。主にアパレルの、
レディースの店舗が多かったかな。その時は自分がメインで手を動かすのではなく、材料や道具と職人さんを手配して、現場監督をする仕事をしていました。
――なぜ東京で10年も働いていたのに、また信濃町に住むことにされたんですか?
自分にとって東京は仕事するところで、住むところではない、という想いがずっとあったので、結婚して子どもができたら田舎に行きたいと思っていたんです。
そんなときに3.11があって、やっぱりこれからは自給自足的な生活にシフトしていかないと、と思うようになったんですね。食べ物を作っている人って強いなと思って、田舎なら自分たちで野菜を育てたりもできるので、田舎に住みたいとさらに強く思うようになりました。
――移住先として他の場所は検討されたりしたんですか?
特に他は考えてなかったですね。というのが、そのとき信濃町の実家が空いていたんですよ。親がもうペンションをやめて東京に戻っていたので。そのまま空き家にしているより誰かが住んでいたほうがいいということもあったので、僕が結婚して子どもが生まれたタイミングで、家族と一緒に信濃町の家に住むことにしました。
大工さんになったのはなりゆき?!信濃町で独立するまでの経緯
――信濃町に戻ってこられてからログラフ (ログハウスと木の家に特化した建築会社) で働かれていたと聞きました。そこで、手を動かす人になったという感じですか?
そうです。東京にいたときから現場の仕事が好きだったので、田舎で働くなら山の中の現場とかいいなと思っていたんですね。ログラフは実家の近所で、半分実家みたいな感じで子どもの頃からよく知っていたので、働かせてくださいとお願いして。事務でも何でもいいですって言ったら、社長に「じゃあ大工だな」って言われて、そこから道具とか買い揃えて大工さんを始めました(笑)。
――え、じゃあ大工さんになったのはなりゆきだったんですか?
なりゆきですね。もともと僕は、東京のインテリアの専門学校で、お店の図面を描いたり内装とかをデザインしたりする学科で勉強したので、そういう設計やデザインの仕事がしたかったんです。その下積みとして施工会社で働きはじめたんですけど、だんだん現場のほうが楽しくなってきていたので、結果的に大工をさせてもらうことになって良かったです。
――のちのちは自分で起業してやっていきたいという想いも、当時からお持ちだったんですか?
いや、あまりなかったです(笑)。
ただ、ログラフにいるときから、会社からは独立しているような形で動いていましたね。そのきっかけになったのが、ゲストハウスLAMPの施工をしたことなんですが、信濃町の幼なじみと年末に会ったときに「うちゲストハウスにしたいんだよね。ちょっとプラン考えてくれない?」っていう話をもらって。自分で現場見に行って、図面書いて、見積もり作って、僕とその幼なじみとでやりとりして進めていったんですね。
――会社として仕事を受けてはいるけれど、林さんが最初から全部自分でされたということですね。
そうです、そのまま施工にも僕も入ってやって。それ以降、リノベーションなどのログハウスじゃない物件のお話を僕に直接いただくことが増えてきて、単独行動することが多くなっていたんです。
だから周りにも「早く独立しなよ」ってすごい言われてたんですけど、最後の決め手は社長に「そろそろ独立したらどうだ」って言われて(笑)。それで1年考えますって言って2018年に起業塾を受けて、翌年にGOOD TIME BUILD という屋号で独立しました。この屋号は、施工を手伝わせてもらったForet Coffeeに飾られている絵からもらいました。
「起業塾(起業等人材育成支援事業)」とは
起業等人材育成支援事業(信濃町)
信濃町で新しい事業を起こす起業家の方、または既存の経営の改善・変革となる「第二の創業」を目指している経営者の方、若手経営者及び後継者、幹部育成のために、経営者としての心構え~収益性・資金調達方法~経営計画(ビジネスプラン)作成までを具体的な起業事例等を交えながら、体系的に学ぶ機会を提供し、参加者の起業等に対する包括的な支援を行ないます。
GOOD TIME BUILDの施工事例
サユリ美容室 (信濃町)
EN BAKERY 39! (信濃町)
HAKKO MONZEN (長野市)
住宅(信濃町)
ゴミを生む仕事ではなく、ゴミを利用する仕事へ
――林さんが手掛けられた物件ってどれもおしゃれなだけでなく温かみが感じられます。林さんがお仕事される上でのコンセプトやこだわりって何ですか?
廃材や古材を利用する、古いものを活かすっていうことですかね。廃材の再利用っていうのは東京で働いていたときに興味を持つようになりました。
東京で作っていた店舗って「今回すごくいいものできたなあ」というものに限って、数年で壊されちゃったりするんですよね。アパレルってすごく入れ替わりが激しくて、売上が良くないとすぐ撤退・移転というのがあるので。そのときに什器等ならまた次の店舗で使われることもありますが、基本的に壁とかの内装は全部壊されるんです。それを見ていると、なんだかすごく無駄に感じて、楽しくなくなってきちゃって。自分がゴミばかり作っているような気になってきたんですよね。もちろん僕や職人さんたちはすぐ壊されるつもりで作ってはいないですけど、リサイクルってすごく言われている時代なのに、逆行しているように思えて。じゃあ、逆にゴミで作ろうかなと(笑)。それで廃材を使って何かやりたいと思うようになったんです。
――じゃあもし近くで壊される建物があったら、ぜひ林さんにお声がけして再利用できる材料を見つけ出していただきたいですね!
そういう情報があったらぜひ見に行きたいですね。特に味のある古い建物とかだったらワクワクします。
でもまず建物が壊されるというのが嫌なんですよね・・・。さすがに基礎から朽ち果てているとかなら仕方ないですが、何年か前まで住めていた物件なら、まずそれを活用する方法を考えてほしいと思いますね。
――それはやっぱりゴミが生まれてしまうからですか?
それもそうですけど、資材にも限りがあるので。例えば、今世界的に砂不足と言われていて、コンクリートに使える砂がなくなってきているんですね。いろんな資材が不足しているので、できるだけ使えるものは再利用してほしいです。僕は新築はやらない、家を建てない大工さんでいこうと思ってやっています。
――林さんに依頼をされるお客様は、そういったところに共感されている方が多いですか? いつも引っぱりだこでお忙しくされているようにお見受けするのですが。
おかげさまでほとんどが知り合いの紹介や口コミでお仕事をいただいています。古いものが好きな人とか、味がある感じが好みの人とかが多いですね。あと、自分も一緒にやりたい人。自分も作業に加わってやってみたい人の場合、普通の工務店だと難しいので、僕に声をかけてくださって。なのでお客様と一緒にやることはよくあります。
信濃町での暮らしについて
――東京から信濃町に戻ってこられて暮らしの面ではどう変わりましたか?
まず通勤でストレスがなくなりましたね。 東京にいたときは基本電車通勤だったので通勤ラッシュがありましたけど、こっちにきてからは山を見ながら通勤ができて、今日は天気がいいからこの道通って景色を見ていこうとか、途中途中で車停めて写真とったり。そんなこと東京ならまずないですもんね。
あとは、波が良ければ朝に海にいってから現場に行ったり。朝いい波にのれたらもうその日は一日ハッピーですね(笑)。東京から近い海に比べて、こっちは圧倒的に人が少ないので波に乗りやすいんですよ。出勤前に湖に行くこともありますね。
――お子さんたちとの暮らしはどうですか?
山も湖も海も近いので、自然で遊ぶにはとてもいいところなので、子どもと外で遊ぶことも多いですね。
でもうちの子がアウトドア大好きかというとそうでもなくて、家で本とか読んでるのが好きみたい。あと、都会に住みたいって言っていたり、家もこんな丸太の家じゃなくて、ビルに住んでみたいとか言ったりして(笑)。
でも子どもたちが 一回は都会に出て仕事するのはアリだと思っているので、後々、自分が遊んだ野尻湖とかの自然を思い出して、戻ってきたいと思ってもらえたら一番いいですね。
シナノフェスも、ここで育った子が、いつか都会に出たときに、シナノフェスを思い出して、信濃町って楽しかったなって思って、町に戻ってくる子がひとりでもいればいいなという想いでやっています。
――わたしも移住する前にシナノフェスのことを耳にして、おもしろそうなことやっている町だなって思っていました。信濃町はいろんな人がいろんな活動しているから楽しいですよね。
信濃町は自然が豊かで環境がいいのはもちろんなのですが、この町に住む人というのが一番の魅力だと思っています。
今いろんなところから移住してくる方が多いのでいろんな人がいるし、30~40年前に移住してきた人の中にも、僕たちが直接知らない人の中にもおもしろい人がいっぱいいるんですよね。なので、今移住を考えている方には、この町の一番の資源は人です、と伝えたいです。
まとめ
今回は林さんの作業場で取材をさせていただきましたが、古道具などを自分流に再利用したり、素敵にディスプレイしたりされていて、こんな使い方があるのだと驚きました。
遊びや暮らしにしても、信濃町周辺の自然環境を活かして楽しんでおられて、なんでも新しいものを作ったり新しいものを求めるのではなく、すでにそこにあるものを上手く活用する林さんのスタイルは、今盛んに叫ばれている“サスティナビリティ”の体現だと感じました。
みなさんも信濃町に来られた際には、林さんが手がけられたお店をぜひ覗いてみてくださいね。
GOOD TIME BUILD
林さんへのお仕事のご依頼やお問い合わせは、インスタグラムから↓ Instagram: @goodtimebuild |