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ピザ屋だけじゃない、子どもゴコロの発信基地!「CHILDHOOD BASE KUROHIME」戸田美帆さんが実践する働き方・遊び方

ありえない、町民

ピザ屋だけじゃない、子どもゴコロの発信基地!「CHILDHOOD BASE KUROHIME」戸田美帆さんが実践する働き方・遊び方

こんにちは、信濃町在住ライターのAyaco*です。長男が5歳の時に信濃町へUターンし、現在は2人の男の子を育てています。「自然の中でのびのび子育て」と言うと、野山を自由に走り回る子どもの姿を想像する人が多いと思うのですが……。

でも、正直、大人だって何も考えず走り回りたい! 夢中になって遊びたい!! そんなことを思うのは、私だけなんだろうか……? と考えていたときに、とっても気の合いそうな信濃町のお母さんと出会ってしまいました。

冬はスキー場、夏はコスモス園などが楽しめる黒姫高原エリア(黒姫高原スノーパーク&旬花咲く黒姫高原)にあるピザ屋さん「CHILDHOOD BASE KUROHIME」の店主、戸田美帆さんです。

美帆さんも、私と同じく2人の男の子を育てるお母さんです。

 

CHILDHOOD BASE KUROHIMEの店内に入ってみると、ピザ以外にもカッコよくカスタマイズされたストライダー(※)が飾ってあったり、ピザカッターまで自転車の形になっていたりと、気になるものがいっぱい。

※ストライダー:子ども用の足で漕ぐランニングバイク。子どもが大きくなってきたらペダルをつけて自転車に転用できるタイプもある。この数年、未就学児とその親のあいだで大ブームになっている。

 

おまけにホームページを見てみると、ピザのことは一切書いてない……? ここって本当にピザ屋さん? 謎があまりにも多いので、店主の美帆さんに取材させてもらうことにしました!

 

▼今回のインタビューはこの人
戸田 美帆(とだ・みほ)さん
岩手県出身、信濃町在住。2人の男の子ママ。飲食店経営を目指し東京の学校に進学。信濃町出身のご主人と信濃町に移住し、結婚。お店のピザカッターまで自転車という大の自転車&ストライダー好き。

 

「CHILDHOOD  BASE KUROHIME」って何屋さん?

――いきなり失礼ですが「CHILDHOOD  BASE  KUROHIME」ってピザ屋さん……ですよね?


美帆さん:

ピザ屋さん……なんですけど、私は「CHILDHOOD BASE」っていう団体の代表もやっているんです。「CHILDHOOD BASE」は、アクティビティやイベントだったり、いろんなことに挑戦できる面白い場所をつくりたいよね、という思いからできた団体なんです。

「CHILDHOOD  BASE  KUROHIME」はその基地のようなもので、ここで私はピザ屋さんの仕事をしつつ、町を見たり人を見たりして、面白いことを考えて、やりたいことを実現していく、っていうことをやっています。

 

――美帆さんはこのお店をオープンされる前は、何をされてたんですか?

美帆さん:

もともと私は岩手出身で、東京で飲食の仕事をしていて、結婚を機に旦那の地元の信濃町に移住してきました。しばらく長野市で働いていたんですが、長男が生まれてから3才になるまではずーっと主婦で、子どもたちと過ごす時間がすごい長かった。ほぼ公園で過ごしていたような気がしてます。子どもは男の子2人なので、とにかく外で遊ばせないとダメだったんですよね(笑)。家にこもってばかりだと、私も楽しくなかったですし。

――CHILDHOOD BASE KUROHIMEの店内にはストライダー関連のグッズがたくさんありますよね。それはやっぱり、お子さんたちと過ごす時間が長かったのがきっかけ……なんですか?

美帆さん:

私自身、もともと体を動かすことが好きで、長男が1歳くらいの時にストライダーを知って、2歳の誕生日に長男に買ってあげたんです。それで自分も一緒に自転車を始めたら、子どものストライダーにもどんどんハマっちゃって。

ちょうどその年の夏に信濃町で「ストライダーエンジョイカップ」が始まって、「出たいなー」って思ったんですけど、次男が生まれてすぐだったので断念して。次の冬のスノーステージ(ストライダーの雪用アタッチメントを装着して行うレース)から出始めたんです。

 

「ストライダーエンジョイカップ」は、ストライダーに乗り始めたばかりの子でも気軽に参加できる、「楽しむことが目的」のレースイベント。

 

――そもそも信濃町って、なぜかストライダーがすごく盛んじゃないですか?

美帆さん:

そうですね。信濃町はストライダーの販売元のストライダージャパンから「ストライダーエンジョイタウン」に認定されていて、保育園でストライダー教室をやっていたり、ストライダー自体を配ったり、公式イベントもたくさんやっていますね。

 

信濃町の田んぼを会場に開催されるストライダーフェス「どろん子フェス!!」。親子一緒に泥だらけになって楽しむユニークなイベントです。

 

ストライダーは専用アタッチメントを装着すれば雪の中でも楽しむことができる。
上の動画は昨年、信濃町で開催されたときのもの。

 

――もしかして……美帆さんが信濃町で開催されているストライダーイベントの仕掛け人だったんですか?

美帆さん:

違います(笑)。初めは参加していただけなんですけど、エンジョイカップのお手伝いをするサポーターの募集があって「はい! やります!! やります!!」って手を挙げたんですね。大会自体も楽しいし、とにかくストライダーが大好きだったので、今後もやっていきたいなと思って、自分から「これからもお手伝いしたいです」って伝えたんです。そしたら、それからいろいろお誘いいただくようになりました。

そのあと2019年の夏に、黒姫高原の支配人さんに「空いているスペースを使ってストライダーショップをやることになったんだけど、戸田さん、やってみない?」と声をかけていただいて、同時にこのスペースを使って、昔からの夢でもあったカフェをやる、ということに挑戦できる機会をいただいたんです。

――楽しいことを続けていたら、それが仕事に繋がったんですね。

美帆さん:

そうなんです。2020年の夏にも「また同じ場所でお店やりたいです」と話したら、今度は「ピザ屋をやりませんか?」って声をかけていただけて、「もちろん、やります」と言って(笑)、この冬もやらせてもらってます。

 

仕事と子育ては別々……じゃなくてもいい!?

――ちなみに「CHILDHOOD BASE」という名前には、どんな想いが込められてるんですか?

美帆さん:

「CHILDHOOD」は「子ども心」とか「童心」という意味なんですが、それは子どもだけではなく大人も対象にしているんですね。

大人も、子ども心を忘れずに生きていてほしい。子どもって、大人の姿を見て育つじゃないですか。私は子どもに、大人になってからも楽しいことを見つけてほしいと思っていて、そのためには大人も心から楽しんでほしい。だから、ここを子ども心の発信基地にしたい。それで「CHILDHOOD  BASE」なんです。

――美帆さんは2人のお子さんもいらっしゃる状態で、基本1人でお店をやってらっしゃいますよね。仕事に子育てに、すごく忙しかったりしないですか?

美帆さん:

そうですね、時間が秒単位で足りない(笑)。子どもをお風呂に入れて、ご飯を作って、寝かせて、洗濯して次の日のことを考えて……。

――終わりがないですよね。

美帆さん:

それもやっぱり辛かったですけど、こういうお店の仕事って、休日に働かないといけないですよね。でも休日って保育園もやってないから、私は子どもをお店に連れてきて、「遊ばせながら働く」っていうスタイルでやらせてもらってるんです。そのやり方ってけっこう異例で、おそらくいろんなご意見はあると思うんですよ。

――うーん、なるほど。

美帆さん:

で、忙しいときに、子どもが外で転んで泣いてとか、ケンカして、とか、そういうことがあると、もうどうしたらいいんだろう? となってしまって、それが一番つらかったですね。

ただ、お子さんがいらっしゃる方はすごく理解してくださって、声を掛けてくれたり、見守ってくれたり、少し待っていてくれたりして、ありがたいなって、いつも思ってます。

  

――では逆に、「仕事をしながらお子さんも一緒にいる」ということをやっていて、良かったことってありますか?

美帆さん:

それはね、すごくあるんですよ。自然な姿で遊んでるのが見えるし、同じような世代の子どもたちもといつの間にか仲良くなって一緒に遊びに行っていたり、お客さんと楽しそうにお話ししていたり……。子どもたちが自然と、このお店の雰囲気を作ってくれていたりもするんです。だから私も助かるし、子どもたち自身も、そうやっていろんな人と関わって成長してるんだろうな、って思います。

――たしかに、仕事と子育てって今は別々になってしまうのが普通ですけど、美帆さんのように仕事を通して子どもの成長が見られるというのも、いいですよね。

 

「信濃町ならではの子育てのスタイル」って?

――私自身は大阪で長男を生んで育てて、年長さんになってから信濃町に引っ越してきたんです。大阪にいたときは私、周囲のお母さんたちから名前で呼ばれずに「◯◯くんのママ」って呼ばれてたんですけど、信濃町に来てみると……。

美帆さん:

自分の名前で呼ばれますよね。

――そう、いちばん最初に声かけてくれた人に「名前、何ていうの?」と聞かれて子どもの名前を答えたら、「いやいや、違う違う、あなたの名前を教えて」と言われて、感動したんです。

美帆さん:

名前で呼び合えると、「◯◯くんのママ」ではなく、自分自身として見てもらえるから、お母さんどうしが子ども抜きでも仲良くなれるんですよね。

それで言うと、年に2回程度、別の場所で町が主催になってバザーをやってたんですけど、去年は2020年はコロナの影響で、町は関わらずにこの場所(黒姫高原エリア)で自主開催ということになって……。町の手が借りられなくなったときに、信濃町のお母さんたちが「やります! やります!」「私はこれやります!」って、それぞれの得意な分野で自らやってくれて、その雰囲気が本当によくて。

 

今年の夏に開催された「ママバザー」の様子。

――誰かの母親としてではなく、いち個人として動いてくれたんですね。

美帆さん:

それが信濃町のお母さんたちのすごいところですよね。私は、「世の中のお母さんたちってもっと『母親』という責任から解放されてもいいんじゃないか?」って思うんです。子どもがいるからといって自分の好きなことを我慢せず、いろんなことにトライしてほしい。ここもそういう場所として使ってほしいな、と思っていて。

――子どもだけじゃない、大人も主役になれる場所ですね。

美帆さん:

そう、そうなんです! そういう親の姿を、子どもたちにも見てほしい。お母さんたちが子どもを遊ばせながら、見守りながら、一緒に助け合って働ける、「そんなスタイルもありなんだ」って思ってもらえる環境を、ここで作れたらなと思っていて。

言い方は悪いかもしれないけど、信濃町って、遊園地みたいな人工的な遊び場って、全然ないじゃないですか(笑)。だけど広大なフィールドだけはある。そのなかで、子どもたちは勝手に遊び方を思いついて遊ぶんですよ。

――人工的な遊び場がないぶん、自分で創意工夫しないといけないですよね。

美帆さん:

たとえばうちの子が、地面に落ちてる枝を拾って組み立てて、葉っぱを挟んテントのようなものを作って、その中に木の実、どんぐり、松ぼっくりとかを入れて……その組み立てを一日中やっていたんですよ。あいにくその日は雨風が強くて、せっかく作ったテントも倒れちゃうかもなって思ってたんですよね。でも、次の日に見に行ったら、残ってたんですよ。

 

――すごーい。

美帆さん:

自然を使って自分で遊び方を考えて、失敗したら「次はこうしよう」って試行錯誤して、いろんな知識をつけていける場所なんだなって思って。

――大人も勉強になりますね。

 

CHILDHOOD BASE KUROHIMEがこれから挑戦したいこと

――最後に、美帆さんが「CHILDHOOD BASE KUROHIME」でこれから挑戦したいことって何ですか。

美帆さん:

このお店のある黒姫高原エリアって、スキーもスノーボードもやらない人にとっては、すごくハードルの高い場所だと思うんです。でも、この空間が目指してるのって「公園」なんですよ。だから地元の人たちも含めて、みんなに「雪だるま作りに行こう」とか「ちょっとお昼にピザ食べに行こう」ぐらいの気持ちで、気軽に来てほしいなって。冬以降も、マウンテンバイクやストライダーの入門コースを作ったり、いろいろ計画中です。

――新しいメニューなどはありますか?

美帆さん:

1DAY 1COIN  DRINK  BARという取り組みをやっています。店内にフリードリンクエリアを作って、500円で1日中フリードリンクになるんです。スキー場に来て、ドリンクバーをここで買って、遊びに行ったり滑りに行ったり、何回も戻ってきてほしくて。そのたびに、私は「おかえり!」って言いたい(笑)「おかえり!」って言いたいだけです(笑)。


 子どもだって大人だって、遊び方はもちろん働き方も、可能性は無限大。母親だから、大人だからといって好きなことや楽しいことにブレーキをかけずに、これからもいろいろ挑戦してみたい……そう思わせてくれる、とっても勇気がもらえる取材でした。

 

冬限定カレー風味のミートPIZZA「PIZZA★TACOS」
CHILDHOOD BASE KUROHIME
長野県上水内郡信濃町大字野尻3807(黒姫高原スノーパーク内コスモプラザ横)
TEL:026-262-1290
HP:https://chbase-kurohime.com/
Instagram @childhood_base_kurohime

【イベント開催情報】
2月20日(土)16:00〜 CHILDHOOD BASE KUROHIMEにて、オールナイトアウトドアフェス開催!!
特設会場でオールナイト営業。テントサウナ、スノーキャット、雪中花火など、この日かぎりの特別な体験ができます。翌日は大人も子どもも、童心に帰って楽しめる「全日本そり選手権」も開催! イベント詳細はこちらへ。

取材・文・写真:Ayaco*

町民ライター Ayaco*

信濃町出身。大阪で舞台役者や人形劇団の活動を経て、2014年に夫と長男とともに信濃町へUターン。現在、3人の年の差兄妹の育児に奮闘中。昔から得意だったイラストの仕事をしながら、人形劇の上演もしています。在住者だから見えてきた信濃町の魅力をママ目線で伝えたいと思っています。

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