ありえない、町民
外国人からみた野尻湖とは?新天地でビジネスに挑戦する The Nojiri Coffee Companyデリックさん
こんにちは。移住、そしてスキーロッジを経営して5年、やっと信濃町のことが分かってきたライターのSakiです。
スキーロッジを共同経営している私の夫はニュージーランド人なのですが、同じように、日本の都市部から信濃町に移住する方の中には外国人も少なくないと感じてます。
今回はアメリカ人のデリックさんという方が野尻湖でカフェをされているという噂を聞きつけて、お話を伺ってきました。デリックさんは日本語も話されるのですが、英語の方が思いを伝えやすいということで、今回は英語でのインタビューを私が意訳しています。
お話をお伺いをした方
四季が美しい野尻湖に惹かれて移住
――まず、日本に来られたきっかけをおしえていただけますか?
2015年に東京にあるテンプル大学日本キャンパスに留学生として来ました。本当はフランス語を勉強していたからフランスのキャンパスに行こうと思っていたのですが、私の兄が日本に住んでいたので、なんとなく日本キャンパスに来ることを決めたんです。でも後から思うと運命的でしたね。
大学ではマーケティングを学び、ソーシャルメディアマネジメントの仕事をしていました。
――なぜ東京からこの地域に越してこられたのですか?
学生の時、ガイドのアルバイトをしていて、毎週末どこかのスキー場にお客様を連れて行っていました。その時にこの辺りにも来て、住民の方のライフスタイルを知り、雪の質の良さや新雪の量などから世界で一番のスキー場だと感じ、この地域が特別な場所になりました。
そして大学を卒業した後、私の兄や友達が妙高に住んでいたということもあって、ひと冬だけのつもりで妙高で過ごしたときに、野尻湖の美しさが気に入り、そのまま湖の近くに家を買いました。
――スキーが好きで引っ越してきたのに、なぜスキー場の近くではなくて湖の近くに住むことを選んだのですか?
もちろんスキーは大好きだけれども、四季を楽しみたいと思ったんです。野尻湖からスキー場までは十分近いし、景色も美しいので、山の中ではなく湖沿いで家を探しました。
地域のコミュニティーセンターとなるカフェを目指して
――野尻湖の近くに引っ越されたあと、湖沿いでカフェを始められましたね。
はい、2022年7月からThe Nojiri Coffee Companyというカフェを経営しています。ウエスタンスタイルのカフェで、コーヒーの自家焙煎もしています。本場のカリフォルニアフード「Native authentic Californian food」が楽しめますよ。
――本場のカリフォルニアフード!一番のおすすめは何ですか?
カリフォルニア スマッシュバーガーです。日本中で正真正銘のカリフォルニアバーガーを提供しているのはここだけだと思います。全ての食材を一から手作りで仕込んでいます。牛肉と油の割合を指定して肉屋から仕入れ、パンもソーセージも自家製です。このスマッシュバーガーを食べると、世界中のどこにいてもカルフォルニアにいるかのような気分を味わえると思います。
――以前はマーケティングのお仕事をされていたとおっしゃっていましたが、なぜカフェを始めようと思ったのですか?
料理とコーヒーが好きだからですね。私の料理とコーヒーに対する情熱をみんなと共有したいのです。それに、このあたりで朝早くからコーヒーが飲めるところがなかったのが残念で。朝起きて仕事に行く前にカフェでコーヒーを飲む。これって大事なことだと思いませんか。
みんなが集まっておしゃべりをしたり、人と出会ったり、仕事をしたりする、コミュニティーセンターがこのエリアに必要なのではないかと感じていました。だから、仕事に行く前や家に帰る前に気軽に立ち寄れる場所を私が提供したいと思ったのです。
――まさに今そんな場所になりつつありますよね!そして冬季も引き続き営業されるそうですね?
はい、年中無休で冬季もオープンします。
野尻湖エリアの飲食店は冬季は休業されるところが多いですが、冬季もビジネスができるということを証明したいのです。
野尻湖は年中美しいですが、冬季は格別です。雪がうっすらと湖にかかって幻想的な景色になります。湖畔を歩いたり写真を撮ったり、冬の湖を楽しんでほしいのです。斑尾や妙高、黒姫のスキー場に行くだけじゃなくて、薪ストーブの前に座り、ココアやスープで温まる。そういった環境でスキーの話ができるカフェにしたいと思っています。
――スキーの後に温かいドリンクと楽しいおしゃべり。想像するだけで遊びに来たくなってしまいますね。
地域のたくさんの人が背中を押してくれてカフェをオープンできた
――私の夫も外国人なので生活習慣や日本語でのコミュニケーションで困ることもよくあるのですが、デリックさんは日本の田舎で起業するということは大変ではなかったですか?
外国人が日本でビジネスを始めることは簡単ではありませんが、知り合いや友人にたくさん頼りました。大工さんや水道屋さんはもちろん、所属する消防団の団員にもアドバイスを求めました。たくさんの人に関わってもらって、やっとオープンすることができました。
――消防団に入っておられるとは知りませんでした!
カリフォルニアには、私たちはみんな友達というマインドがあって、どこに住んだとしてもその地域のコミュニティーを大切にします。どうすれば外国人である自分をアピールしたりこの地域のコミュニティーに溶け込んで行けるのかと考え、消防団に入ることを決めました。自分から近づいていかないと自分という人間を理解してもらえませんから。
――消防団を含め、この地域のコミュニティーをどう感じていますか?
みんなフレンドリーですね。考えや感情の表現は控えめですが、カフェをオープンしたいって話したらたくさんの人が背中を押してくれました。
特に、近所で昔からお店をやっているチヨちゃんは、たまたま私が野尻湖の周りを歩いていたときに出会ったのですが、カフェがしたいんだよねって話したらすごく応援してくれて。初めて会った私に今カフェを開いている場所を紹介してくれたのも、チヨちゃんなんです。彼女と出会って友達になれたことをとても光栄に思ってます。
――いろんな方に支えられてオープンしたお店なんですね。オープンまでに苦労したこともありましたか?
もともとは2021年オープンを目標にしていましたが、水道が通っていなかったりとリフォームがなかなか進まず、苦戦しました。ですがオープンできないからと立ち止まらず、キッチンカーでスキー場の前でバーガーを販売しました。そこで自分の作るバーガーを試すことができ、お客さんから味の感想をもらうことができました。
それを思うと、リフォームが進まなかったことは逆に良かったのかもしれないですね。提供するメニューについて試行錯誤する時間が持てたことは、オープンすることよりも意味があったと前向きに思っています。
――デリックさんのポジティブな姿勢は私も見習いたいです。さて、これからの展望は?
近いうちにこのカフェでイングリッシュレッスンを始めます!マンツーマンスタイルで、お茶を飲みながら会話力を高めるレッスンをします。リモート参加でもいいし、地元の人が気軽に来れて、心地いい空間を作りたいと思っています。そしてたくさんの人に足を運んでもらいたいです。
他にも外国人に向けた日本語のレッスンも始めようと企画を練っていたりと、この場所を利用してコミュニティーに対して楽しいこと、新しいことをどんどん提案していきたいです。特にやりたいと思っているのがマイクナイト。これマイクナイトっていうのはアーティスト、例えば写真家やミュージシャン、クラフト作家などが自分たちの作品を紹介するパーティのことで、このカフェに作品も持ち込んでもらっていろんな人に足を運んでもらって、見てもらえる機会を作りたい。そのうち大好きなスケートボードに関わる事も始めていきたいな。
――楽しそうなことが起こりそうで今からワクワクしますね!最後に、この記事を読んでいる方にメッセージをお願いします。
ここは日本で一番美しいといってもいいくらい魅力的な場所です。地元の人を含め、もっとたくさんの人たちにここは特別な場所なんだと気づいてほしい。この場所の魅力をみんなで引き出していけば、観光客ももっと増えるし、この町に住みたくなる人も増えると思うのです。そうやって少しずつ行動して、信濃町に住んでいる若者や子どもたちが10年、20年後にはやりたいことができて、楽しい町になっていければなと思います。みんなで協力して最大限にこの美しい自然を活かしていきましょう!
ぜひ気軽に遊びに来て、日本語でも英語でも遠慮なく私に話しかけてください!
まとめ
いつも笑顔で気さくなデリックさん。失敗を恐れず自分の好きなことをしていくポジティブな考えは、話すだけで元気をもらうことができます。
信濃町にいながらアメリカを感じられる The Nojiri Coffee Company は日本人スタッフもいますし、デリックさんも日本語を話すので気軽に訪れてみてください。そして町の魅力を引き出すアイディアがある方はそれを話してみるのはいかがでしょうか。新しい試みが始まるかもしれません。今後にも注目です!
The Nojiri Coffee Company
Instagram : @nojiricoffee 営業時間:13:00〜20:30(月・火・木・金) 11:00~17:00(土・日) 定休日:水曜日 住所 : 長野県上水内郡信濃町野尻257−5 |