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ありえない信濃町通信

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自然に寄り添ったお店「siki」を信濃町に移転リニューアルオープン。地域との繋がりを大切にする池田さん流のお店づくり。

ありえない、暮らし

自然に寄り添ったお店「siki」を信濃町に移転リニューアルオープン。地域との繋がりを大切にする池田さん流のお店づくり。

最近、ミニマルな暮らしに憧れ、身の回りを見直し始めた町民ライターのAyaco*です。が、気づくと無駄な買い物で冷蔵庫もタンスもパンパンにしてしまう…(笑)。染みついた生活習慣を見直すのは、とても難しいですね。

今回は、そんな私にも何かヒントが見つかりそうなこちらのお店。ゼロウェイスト*に取り組みながら、自然に寄り添ってつくられたものを販売する「siki」にお邪魔して、楽しいお話をたくさん聞かせていただきました。

*ゼロウェイスト……無駄、浪費、ゴミをなくすという意味。ゴミをゼロにすることを目標にできるだけ廃棄物を生み出さないようにしようという活動。


▼今回インタビューしたのはこの人

ちょっとした気づきを持ち帰れる店

――移住する前の生活について教えてください。

幼少期は東京をベースに、親の転勤で海外を行ったり来たりしていて、高校生の頃にはイギリスでインターナショナルスクールに通ったり、祖父母のいた関西で過ごしたこともありました。大学生になってからは、また東京に戻って国際協力やNGO、途上国にスタディーツアーに行くなど国際的な活動に取り組んでいました。卒業後、国際的な仕事がしたかったんですが、結局、普通に丸の内でOLしてました(笑)。

――普通のOLさんが、なぜ「siki」をオープンさせることになったんですか?

そのまま9年くらい勤めたかな。結婚して、子ども2人目を産んで、仕事復帰した時に「そろそろ次のステップにいきたいな」ってふと思ったのと同時に、「何かもっと違うことが自分にできそうだな」とも思ったんですよね。暮らしにまつわることが元々好きで、以前からいずれ自分のお店を持ちたいという興味があったので、思い切って始めてみました。いきなりお店を構えるのではなくて、最初は自宅でワークショップをすることから始めたんです。染め物、しめ縄作りなど、知り合いと一緒にできることから始めました。

そうしたら、普段から買い物で利用していた近所の八百屋さんが声をかけてくださって、そのお店でワークショップをやらせてもらったんです。何度か開催した後、その八百屋さんがお店をたたむことになって「よかったらこの場所使いますか?」ってまた声をかけてくださって、お店の場所を引き継ぐことになったんです。

――お店でゼロウェイストに取り組んだきっかけは何ですか?

途上国に住んだ経験があったからなのか、もったいない精神が強くあって、ゴミを出すこと自体に気持ちよさをあまり感じていなかったんです。なので、「自分でお店をやるならゴミは出したくないな」って自然と思いましたね。

――そもそもゼロウェストって何をしたらいいのかを教えてください。

ゼロウェストっていうのは、完全にゴミをゼロにすることではなくて、どうしたらゼロに近づけられるかという「その気持ち」が大事だよねってことだと私は思っています。量り売りの商品も置いていますが、パッケージ商品も置いて、完全にゼロウェイストなお店にはせず、いろんな考えの方に来ていただけるようにしています。ここに来ることで、「こうゆう世界があるんだな」「ちょっと変えればちょっと減らせるかも」って、ちょっとした気づきを持って帰ってもらいたいなと思っています。

子どもたちの馴染みかたがあまりに自然だった

――移住をしようと思ったきっかけは何ですか?

元々暮らしていた場所は、どろんこ遊びができる公園が近くにあったり、東京の中でも比較的子育てしやすい環境ではあったんですが、私が知っている昔の景色に比べるとやっぱり土がコンクリートに変わって、建物が高くなっていって…我が家はやんちゃ坊主が3人いて、かなり野生的な子たちなので(笑)。これは、もうちょっと土に近い環境のほうがこの子たちには合ってるんじゃないかと感じて、2拠点でもいいからと移住先を探し始めました。

――お店を始めたばかりで迷いはありませんでしたか?

迷いはなかったですね。お店をオープンして約2年、お客さんが付いてきてくださってた時期でこれからって時ではあったんですけど、一番上の子はもう小学生になっていたし、動くなら早いほうがいいと思ったんです。お店は移住先でまた始めればいいと。

新型コロナの流行により、夫の仕事が完全リモートになっていたのもタイミングが良かったです。

――信濃町とはどのようにして出会ったんですか?

私がお店を引き継ぐ前の八百屋さんに、信濃町の農家さんであるりんもく舎さんの米粉が置いてあって、買ったことを覚えていて、私が引き継いだ後に「あの米粉を私のお店でも扱いたいな」と連絡を取ったのが、最初の接点です。

――その偶然の出会いが移住につながったんですね。

それまでは、信濃町って長野県にあるんだなくらいだったので、りんもく舎さんとの出会いがなかったら、移住どころかここを知らないままでした。

――移住を決めたきっかけは何ですか?

初めてりんもく舎さんの畑を訪れた時に見た景色にピンときました。山がすごく綺麗に見えて。何より子どもたちがとても馴染んだんです。その馴染みかたがあまりに自然だったから、これはもう、こっちがこの子たちにはいいんだろうなって。

りんもく舎さんでやっている「土のがっこう」*にも参加して、移住の方やいろんな方とお話しして、ここなら自信を持って暮らしていけそうと思いました。

*土のがっこう「りんもく学舎」……りんもく舎が主催する田んぼと畑のワークショップ。年間通して開催され、田植えから収穫まで体験することができる。

目指すのは地元の個人商店

――実際、移住してみて想像と違ったところはありましたか?

まだ冬を過ごしていませんが、現時点では大満足です。移住者と地元の方との隔たりが少ないのがいいなと思いました。いろいろな地域を見てきた中で、この町にはそういった壁を感じなかったんですよね。ただ、私のまわりには移住者が多いので、できればもう少し地元の人と繋がりを持ちたくて、できるだけ商店街の中にあるような個人商店に顔を出すようにしています。あの「地元感」になんだかホッとするんですよね(笑)。

――移住のきっかけにもなったお子さんたちの様子はいかがですか?

もともと野性的だったのが、より野性的になったというか…(笑)。本当に楽しそうにしてます。

でも、放課後に子どもだけで集まって遊べるところがないですよね。東京にいた時は、帰ったらランドセルをぱっと置いて、公園に行けば誰かがいて一緒に遊ぶことができたので。遊具なんてなくてもいいから、子どもが集まる場所があったらいいなって思います。うちの子どもたちは「誰かと遊びたい」「誰かの家に行きたい」と、よく言ってますよ。

――ぜひ私の家にも遊びに来てください!(笑)

私もそうは思うんですけど、車で送り迎えしなきゃいけないっていうのが、なかなかハードルが高いんですよね。だから、まずはここを大人も子どもも気軽に立ち寄れる場所にしたいと思ってるんです。目指しているのは、地元の人に日々の買い物で利用してもらえるような「地元の個人商店」なんです。

人が自然と集まる場所づくり

――これから挑戦したいことはありますか?

お店の場所をもっと便利で利用しやすい場所に移したいです。商店街の中とか。「siki」を商店街の中から情報発信をするお店にすれば、移住を希望してる方や観光客が商店街に自然と足を運んでくれるようになるだろうし、そうすると自然に周りのお店が目に入ってくるじゃないですか。地元の人が日々の買い物をしているような普段の生活の姿が見られる場所にしたいです。

信濃町では「コレに困ったら、ココ!」っていうのが知られていないだけで、ポテンシャルはあると思うんですよ。インターネットで調べても情報が出てこないけれど、昔から地元の人たちに利用されているようなところがたくさんあると思うので、私はそこにスポットを当てたいです。何か新しいことを始めるというよりも、元からあるものを掘り起こすって感覚ですね。そういう意味でも、もっと地元の人と繋がりたいんです。

――もう既に取り組まれていることもあるんですか?

私自身が先生になってダーニングのワークショップを始めました。他にも地域の方を先生にして、ワークショップを定期的に開催しています。実はこの町には色んな特技を持った人がたくさんいらっしゃるので、移住者でも、地元の方でも関係なく様々な人が自然と集まって、お互い学び合えるような場にしていけるといいなと思っています。

――ダーニングはとても興味があるので、私もぜひ参加してみたいです!

気づくことが「はじめの一歩」

池田さんと話していて、自然と自分の生活を見返していました。買い物のしかたや買う場所を少し変えたり工夫するだけで、意外と簡単に無駄がなくせるのかもしれません。そんなちょっとした気づきを求めに「siki」を訪れてみるのはいかがでしょう。


店舗情報

siki(http://www.siki-glocal.com)
tel:090-6043-8514
e-mail:colunt.colunt@gmail.com
Instagram:siki_glocal
自然に寄り添ったつくり手さんのものをできるだけゴミを出さない仕組みでご紹介。ダーニングや足裏ケアなど様々なワークショップも開催中。

町民ライター Ayaco*

信濃町出身。大阪で舞台役者や人形劇団の活動を経て、2014年に夫と長男とともに信濃町へUターン。現在、3人の年の差兄妹の育児に奮闘中。昔から得意だったイラストの仕事をしながら、人形劇の上演もしています。在住者だから見えてきた信濃町の魅力をママ目線で伝えたいと思っています。

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