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子どもと自然を繋ぐ遊び場をつくる。プロスノーボーダー小西隆文さんが「NPO法人LIBRANT」にかける想いとは

ありえない、町民

子どもと自然を繋ぐ遊び場をつくる。プロスノーボーダー小西隆文さんが「NPO法人LIBRANT」にかける想いとは

コロナ禍の今、子どもを気軽に外で遊ばせることが難しくなり、さらに室内でも施設の利用に制限があって、なかなか子どもを思いっきり遊ばせる場所がなく、悩んでいる方も少なくないと思います。自然の多い田舎なら子どもをのびのびと遊ばせられるのに、と地方移住を考え始めた方もいるのではないでしょうか。

今回ご紹介する移住者は、プロスノーボーダーの小西隆文さん。2人の息子を持つ親であり、子どもたちに遊び場所と機会を提供するNPO法人LIBRANT(リブラント)の代表でもあります。

「田舎に住めば子どもが自然の中で遊ぶっていうのは思い込み」。小西さんがそう語る理由とは?小西さんが現在信濃町で取り組む活動について話を聞きました。

プロスノーボーダーとしての活動

――プロスノーボーダーとして活躍されている小西さんですが、雪のイメージがない徳島県ご出身と聞いて驚きました。スノーボードはどこで始めたんですか?

徳島にも実はスキー場があって、小さい時からスキーはしていたんです。はじめてスノーボードをしたのは高校一年生のとき、それも徳島で。それ以来ちょこちょこスノーボードに行くようになりました。その後大阪のスポーツ系の専門学校に進学して、その専門学校のスキーの研修で赤倉(新潟県妙高市にあるスキーリゾート)に1ヶ月滞在する機会があったんですね。そこで“山にこもる”ということを知って、すでにそのときにはスノーボードに夢中になっていたのですが、それ以降どっぷりハマって突き進んだ感じです。

――本格的にプロとして活動を始められたのはいつからですか?

プロになったのは、23歳ぐらいのときです。スノーボードの競技としてはハーフパイプメインで、TOYOTA BIG AIRとか、東京ドームでやっているX-TRAILなどの大会に出ていました。大会で成績を残して、プロ資格というのが取れて。大会活動で成功したら、今度は映像を残すっていうことに興味が出てきて、現在は映像作品を出すというのを活動の中心にしています。

バックカントリーを滑る小西さん(写真中央)

――映像作品は主にどこで撮られるんですか?

毎年海外に1~2ヶ月行って、バックカントリーで撮影しています。先シーズンは12月にカナダに行くことができたのですが、その後こういう状況になったので、残りのシーズンは日本で撮影しました。今シーズンは、意外に滑れていなかった近隣の妙高や戸隠を歩いて登って、そこからの滑りを撮影しようかと考えています。

子どもつながりの仲間たちが信濃町移住の決め手に

――信濃町に住むことになったきっかけは?

初めて住んだのは13年前。一時期長野市に住んでいたんですが、上の子が2歳ぐらいのときに奥さんが仕事を信濃町で見つけて、その職場の人に信濃町で住む所を紹介してもらって引っ越したのが最初でした。

でもそのあと2人目が産まれたタイミングで、徳島に帰ったんです。冬の間ぼくは撮影のために家を離れてしまうのですが、奥さん1人で小さい子ども2人を抱えて信濃町で冬を過ごすというのは大変で、ストレスが溜まっている様子だったんですね。奥さんも出身が徳島なので、親元に近い徳島に帰ったほうが安心だとぼくは思ったのですが、奥さん本人はあまり納得していなかったみたいで、9年前に「やっぱり信濃町に戻りたい」と言ってきて。それで信濃町に家を買って、住み着くと決めて帰ってきました。

――信濃町での生活はどうですか?

活動拠点としては最高に良いです。若いころは毎日朝から晩まで滑るって感じだったけど、今は一日中滑ることがなくなったから、ここならスキー場が近いおかげで2~3時間集中して滑りに行くっていうことができる。そのあとは家に戻って仕事をしたり、次の旅の準備をしたりできるので活動しやすいです。
あと子どもと一緒にスノーボードに行きやすいのも良いですね。子どもも一日中は滑りたくないっていうことが結構あるけど、数時間だけ行こうよって連れ出すことができて、ライフスタイルの中にスノーボードを混ぜ込むことができるのがすごく良かったなと。

――子育ての面で、他に良かったと思うことはありますか?

そもそも奥さんが信濃町に戻ってきたいと言った理由が、子どもの同級生の親の仲間たちがすごく良かったということだったんですね。農業をされている柳本さんのお子さんとも同級生なんですが、あそこの農業を手伝わせてもらったのがすごく大きかった。子どもたちが田植えしたり、田んぼや畑で遊ばせてもらったり、あの家族の存在が信濃町への移住の決め手だったかもしれないです。

柳本さんを取り上げた記事はこちら↓

NPO法人LIBRANTの立ち上げ

――現在力をいれている活動はありますか?

今年立ち上げたNPO法人LIBRANTの活動です。もともと、ぼくはスノーボード以外にもスケートボードが好きで、5年ぐらい前からスケボーの愛好家と集まって、町のなかにスケボーを滑る場所をつくりたいねって話していたんですね。でもなかなかうまく場所を借りることができずにいたんですが、昨年、現在のLIBRANTの理事の1人が、使えそうな場所を見つけてくれたんです。みんなでその場所の草刈りをして整備を始めたところから、少しずつ動きが出てきて、本格的に場所を借りるためにはちゃんとした団体にした方がいいということになって、NPOを立ち上げました。

――LIBRANTは町内でよくイベントを行っていますよね。

月1回ぐらいのペースでイベントを行っています。ぼく個人の活動として、以前から教育委員会に手伝ってもらって子ども向けのスノーボード教室をやっていたんですが、先シーズンはそれをLIBRANTの名前で行いました。これまでに行ったのはスノーボード以外に、子ども向けのSUP、スケートボード、マウンテンバイクなどのアクションスポーツの教室。12月は雪板づくりのワークショップをしました。子どもだけじゃなくて親子で一緒に参加してもらって、ぼくたちの好きな遊びをいろんな人に楽しんでもらいたい。そのための場づくりをイベントという形で行っています。

雪板づくりワークショップ
スケートボード教室

子どもたちが気軽に遊べる施設をつくって、子どもを自然の中へ連れ出したい

――もともと小西さんの中に、町内で子どもたちがアクションスポーツをする場所がないという問題意識があったんですか?

アクションスポーツというより、そもそも子どもたちが外で遊んでいないということに信濃町に住みはじめて気づきました。こういう田舎に住んだら、子どもたちは自然の中で遊ぶのかなって思いがちだけど、意外にそうじゃない。山や森は熊が出るから危険っていうのもあるし、友達の家同士がすごく離れているから、友達と遊ぶには親の送り迎えが必要なんですよ。だから、学校から帰ったら気軽に外に遊びに行けなくて、結局家に籠ってるんですね。

うちの子どもたちは柳本さんのところの畑で遊ばせてもらえてすごく良かったから、そんなふうに子どもたちが気軽に集まれる場所があればいいなと思うようになって、今、柏原物産館の3階を借りて、その中に屋内で一年中安心して遊べるような施設を作ろうとしています。2021年の春の完成が目標です。

LIBRANTパーク完成イメージ

――信濃町ってアウトドアが好きな方が多いイメージなのですが、そういう方を親に持つ子でもなかなか外で遊ばないんでしょうか。

小さいときは親に連れられて外で遊ぶと思いますが、ある程度大きくなったら、子どもって親じゃなくて友達と一緒じゃないとやらないんですよね。例えば、ぼくの子どもは中2と小5なんですが、最近ぼくが家の敷地内にマウンテンバイクのコースを作ったのに、子どもはほとんど(ここでマウンテンバイクを)しないんですね。でも友達が来たらめっちゃやるんですよ。

小西さん宅のマウンテンバイクコース

――友達と一緒に、というのがキーポイントなんですね。

子どもだけで遊びに行けるところがないのが、この町の問題だと思うんです。だから町の真ん中の、学校帰りに行けるようなところに施設をつくったら、子どもだけで集まりやすいから、その問題の解決になると思っていて。今つくっているのは屋内施設だけど、その施設でできる遊びは全て自然由来のスポーツなので、そこから屋外につながるんですね。スケボーしている子は冬はスノボするから山に行くとか、ボルダリングしてたら実際の岩を登りに行きたくなるとか、子どもを自然の中に連れ出す起点をつくるのが理想です。LIBRANTが自然の中で子どもを育てたいと思う人の、受け皿になれればと思っています。

――今後の展望は?

この施設を、学校終わりにそのまま行ける、学童保育施設にしたいんです。そのためにまずはかっこよくて楽しい施設を作り上げて、しっかりと運営していくことが目標で、今この施設の開設のために、クラウドファウンディングを行っています。 
今LIBRANTがやろうとしていることって、いろんな地域にある子育ての問題の解決方法の1つになるんじゃないかと思っているんですね。田舎に住みたいけど、田舎で子育てって実際どうなの?って思っている人いると思うんです。例えばスキー場が近いところに住もうとか、海が近いところで生活しようってときに、じゃあ子どもは実際どこで遊ぶの?って。そんなときに、各地域にこういう施設があったら、すごくいいですよね。学童保育の新しい形になると思う。そんな新しい学童保育のモデルケースとなりうる施設をつくるために、皆さんの支援をお願いします!

2021年3月追記:
クラウドファウンディングで目標額を超えるご支援をいただき、施設を開設することができました。ご支援、ご協力誠にありがとうございました。

まとめ

豊かな自然に恵まれたいなかまち、信濃町。子どもたちがその自然を、ただそこにあって当然のものと捉えるのか、ワクワクする特別なものと捉えるかは、子どものうちにどれだけ自然と触れ合う遊びの楽しさを経験したかが大きく影響していると思います。

LIBRANTの活動は、子どもたちにその経験をする機会を与えるとともに、親世代にも遊びの楽しさを改めて思い出させてくれるものだと感じました。

自然の中で子どもを育てたいと考えられている方は、自分の理想の子育てが叶うかを確かめに、一度信濃町を訪れてみてはいかがですか?


NPO法人LIBRANTオフィシャルサイト
https://librantnpo.wixsite.com/website

LIBRANTクラウドファンディングページ
https://camp-fire.jp/projects/view/301368


ライター 地域おこし協力隊

信濃町の地域おこし協力隊です。2019年に信濃町に移住してきました。週末は野尻湖に浮いているか、愛猫3匹とゴロゴロしながら、家から見える妙高山を眺めています。

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