ありえない、暮らし
【田舎暮らししたくなったら】移住前も後も「Farmstayしなの」で地域とつながる体験を
信州最北端に位置する信濃町は、水と緑が豊かで、四季折々の景色の移り変わりが美しいまち。この人口約8100人の小さなまちに、年間3000人もの小中高生が訪れていることを知っていますか?
生徒たちの主な目的は民泊。信濃町の民泊受け入れのポータル組織である「Farmstayしなの」は、民泊以外にも信濃町ならではの農山村生活体験を用意して、 近年増加している“田舎暮らし体験”を希望する声に応えています。
Farmstayしなのでの体験を通じて、地域住民と交流することができ、信濃町の暮らしのお試しができるので、移住希望者からの注目度も上昇中。
今回はそんな、信濃町の「中」と「外」をつなぐ存在であるFarmstayしなのの取り組みをご紹介します!
信濃町のありのままの暮らしを体験する子どもたち
Farmstayしなのは、前身である「信濃町農山村生活体験受け入れの会」での活動を合わせた約10年間でなんと!のべ3万人以上の生徒を信濃町に呼び込んでいます。
すでに2021年度の民泊の予約数は3000人に達しようとしているとのこと(2020年10月現在)。Farmstayしなのの代表理事であり、自身の家庭でも民泊や体験の受け入れを行っている佐藤洋一さんは「今後さらに増えるでしょうね」と話します。
「野外教育の中で、物見遊山的に観光地をまわるだけでなく、その地域に住んでいる人たちの暮らしや文化を体験しようというのが、今の学校の流れになっているんですね。実際に全国でかなり希望が増えてきています」
「都会で暮らしている生徒さんたちは、信濃町に来ると、ひとつの家が大きいだとか、夜が非常に静かだとか、家の周りに自然がたくさんあるとか、ここに住む我々にとってはごく当たり前のことに対して、新鮮な驚きをみせてくれます」
このような利用者の反応を受けて、受け入れ家庭自身が信濃町への愛着や理解をさらに深めるという相乗効果も生まれています。 中でも、佐藤さんが目を細めているのは移住者家庭の活躍。
「移住してこられた方は、信濃町を選んで来られている訳ですから、地元の人よりも信濃町の良さをよく分かっていることも多いんです。そして信濃町の良いところを民泊の利用者にたくさん伝えてくださるので、移住してこられた方がこの活動に参加してくださると、とてもありがたいです」
オーダーメイドの移住体験プログラムがスタート
こういった小中高生受け入れの経験を活かし、今年から一般向けの体験プログラムがスタートしました。民泊の受け入れはもちろん、日帰り体験にも対応していて、その季節と利用者の希望に応じた体験を、オーダーメイドスタイルで提供されています。
年間の体験プログラム例
特にそば打ち体験は、移住希望者だけでなく、地元の子どもたちや外国人からも人気です。 そば打ちの指導を行うのは、Farmstayしなのの理事をつとめる黒田健一郎さん。
黒田さんは信濃町での移住体験について、
「町の人がとてもあたたかい、という感想をよくもらうんですよね。体験を通して、信濃町の人の魅力っていうのを知ってもらえたら一番じゃないかな」
と話してくれました。
地元信濃町で生まれ育った佐藤さんと黒田さん。ご自身のネットワークをフル活用して、あるときには地元の「おばちゃんたちに声をかけたり」しながら、信濃町ならではの生活体験を提供すると同時に、町外の人と町内の人の縁を繋いでいます。
実際にFarmstayしなのの活動に参加しているご家庭にも、お話を聞いてきました。
はちみつから学びを―東京からの移住者・倉田さん夫婦
古民家を改装した自宅で民泊の受け入れを行いながら、体験プログラムも提供している倉田さん夫妻は、約15年前に東京から信濃町へ移り住んだ移住者。
お二人は、当時の理事から熱心な誘いを受け、6年前から民泊の受け入れ家庭としての活動をはじめました。同時期に未経験からほぼ独学で始めたという養蜂が、現在お二人が提供する農山村生活体験の中心となっています。
体験内容は季節にもよりますが、これまで春に受け入れてきた生徒たちは「ハチの生態から観察、蜜を絞って瓶詰めするまでの工程」を体験したそう。
「ハチというのは自然環境にものすごく敏感なので、そういうハチの生態と子どもたちの学習とを絡めて説明しながら、体験をしてもらっています。
農業は、イモ掘りなんかで子どもたちでも経験があるかもしれないけれど、ハチは大人でも一生のうちで経験することなかなかないでしょう。学校で先生が教えているようなことをここでやっても意味がないから、ハチを通じて環境問題について考えたり、学校で教わらないことをぜひ田舎に来て経験していってもらいたい」と慶三さん。
「おやつに出すのも、全部はちみつ。子どもたちはいままで食べていたものとは全然味が違うと言って騒ぎますね」。
千里さんがそう話すはちみつというのは、倉田家でつくられた純粋国産はちみつ。純粋国産はちみつの国内シェアはわずか6%というから、生徒たちが味の違いに驚くのも納得です。
食事も重要な生活体験のひとつであることから、千里さんは「自分が食べる分は自分で」と繰り返します。
「夕食は、ニジマスをさばいて、塩をふって串に刺してというのを、自分でしてもらいます。そしてここ(囲炉裏)にさして自分で焼くの。朝ごはんは、自分でニワトリ小屋から卵をとって来てもらって、自分で好きに調理してどうぞって」
シンプルに聞こえますが、都会ではなかなか味わえない食体験。ひとつひとつの工程を楽しむ体験者の姿が想像できます。
Farmstayしなのから、地元の人と関わる輪が広がっていく
移住者としてこの活動に参加することについて、慶三さんは、移住者が地元の人と接触する貴重なきっかけの一つだと教えてくれました。
「 Farmstayしなのに参加したことで、地元の人の知り合いが増えました。これをやっていなかったら会うこともなかったような人たちと出会えたというのは良かったことです。移住者は地元の人と接触する機会って実は多くないですよね。積極的に周囲の人たちと関わりをもつことで輪が広がっていくので、この活動がはその関わりのひとつになっています 」
でも、民泊の受け入れってなかなかハードルが高く思えますよね。どんなことを利用者に体験してもらったらいいのか悩む家庭も多いと思います、とお二人に話すと、千里さんからとても自然体な答えが返ってきました。
「こちらが特別何かをしてあげるというよりも、(利用者が)おもしろいと感じるものを見つけたらそれをすればいいの」
慶三さんもそれに頷いて、
「なにか複雑なものを用意するより、子どもたちならカエルとりをしたり、薪割りをしたり、そういう単純なことのほうが意外に記憶に残るものなんです」
※ 倉田さん夫婦が民泊を受け入れる「御防の家」の様子は、下記Youtube動画でご覧いただけます。
信濃町版SDGsの実現へ
最後に佐藤さんに、今後Farmstayしなのが目指すものについて尋ねると、「信濃町の価値を上げたい」と輝いた目で教えてくれました。
「 信濃町はどんどん人口が減っています。これだけいい場所なのに、この地域が過疎化していくのは、私の本意ではない。だから信濃町を知らない人に、一度信濃町に来てもらって、いいところだねと知ってもらって、移住してくれたり、交流人口が増えることに、ひとつでも役に立てればいいと思っています。そしてここに住んでいる人が『いいだろ信濃町は』と誇りに思える場所にしていきたい 」
信濃町の伝統継承というのも佐藤さんの叶えたいもののひとつであるそうで、
「例えば、食に絡む体験を通じて、伝統料理の継承を行ったり、今あるいいものを残していくというのも、やっていきたいことです。地元の人でも一部しか知らないことがあって、今継承されないと失くなってしまう。若い方へ伝えていくことで、『信濃町でこんなことやってるんだ』『信濃町もいいじゃん』って外に出た人が帰ってきてくれる、そういうことに少しでも貢献できればいいなと考えています」
佐藤さんの視線の先にあるのは、信濃町版のサスティナブル(継続可能)な社会。 信濃町が 「大人も子どもも誇りに思えるふるさと」でありつづけることを目指して、Farmstayしなのの活動はこれからも、たくさんの町民を巻き込む渦のように広がりながら続いていくのだと感じました。
体験希望者&受け入れ会員募集中!
Farmstayしなのでは、 農山村体験プログラムの体験希望を随時受け付けています。体験希望の方は下記メールもしくはお電話にてお問い合わせください。
一般社団法人 Farmstayしなの TEL: 026-217-8040 Email: info@farm-stay.jp ホームページ: https://farm-stay.jp/ Facebook: https://www.facebook.com/farm-stay.shinano |