ありえない、暮らし
消防団って入らないといけないの? 信濃町消防団員の思い
皆さん、こんにちは。信濃町にUターン移住して7年目になるAyaco*です。
今回は、こちら信濃町消防団第三分団にお邪魔しています。私の夫も所属している消防団。実は、どんな地域にも消防団はあるのですが、都会で暮らしていると、あまり身近な存在ではないかもしれません。
皆さんは、消防団にどんなイメージをお持ちですか?
ちなみに、信濃町消防団のおおまかな活動の流れがこちら。
時期 | 内容 |
1月 | 新年総会、どんど焼き(警戒) |
3月 | 全国春の火災予防週間 |
4月 | 出初式、信濃町春の火災予防週間 |
5月 | GW特別火災予防運動 |
5~6月 | ポンプ操法練習、信濃町消防ポンプ操法大会 |
9月 | 総合防災訓練、秋祭り(警戒) |
11月 | 全国秋の火災予防週間、消防団総合演習 |
12月下旬 | 年末警戒 |
※2月/8月/10月に機械点検、その他地区行事への参加
春に予防活動が多いのは、雪解けの時期は農耕作の下準備に刈り取った草や藁を燃やすなど、火災に繋がる可能性が高くなるからだそう。田畑の多い田舎町特有ですね。
また、実際の火災を想定した演習を行う消防団総合演習では、信濃町中のポンプ車14台が大集合して、放水を行うそうです。想像しただけでも、圧巻ですね!!
このように、地域のため大切な活動をしている消防団ですが、やっぱり「断れない」「辞められない」などマイナスイメージが強いのも事実です。信濃町で実際に活動する消防団員の方やご家族に、もっと詳しくお話を伺ってみようと思います!
今回インタビューをした方
消防団の役割とは
──まずはじめに、消防署との違いを含めて消防団の役割を教えていただけますか。
小口さん:
消防署との一番の違いは、「予防消防」と言って、消防団は「事前に防ぐ」という意味合いが大きいこと。もしもの時のために日頃の準備は怠りませんけど、本来は、夜警や火の用心を地域に呼びかけ「地域の安心安全を守ること」がメインなんです。
有事の時、消防団が先に現場に到着して消火活動にあたることもあるため、ポンプ車操法*を学んでいます。
*ポンプ車操法(小型可搬ポンプ車操法)……日本の消防訓練における基本的な器具操作・動作の方式である「消防操法」のうちポンプ車(または小型可搬ポンプ車)を用いた安全に素早く消火する方法。
でも、やっぱり訓練の方法や装備・知識量に差はあるんで、消防署がメインになって消防団は後方支援として加わることが多いです。目指す活動内容の軸が違うんです。
──なるほど。そういえば、消防士の方が予防で日頃から地域を廻ったりしてるところは、あまり見かけないですね。
小口さん:
その地域ごとのやり方もあったり、なかなか浸透しづらい部分もあるので、そこは消防団に任せてもらってます。
──活動の中で消防士さんとのコミュニケーションもあるのでしょうか。
小口さん:
総合演習と防災訓練は一緒に活動します。分団長、副分団長になると2ヵ月に1度ぐらい会議があるんです。その時に、情報交換るためのコミュニケーションを図ったりする機会もあったりします。いわゆる「ノミニケーション」ってやつです(笑)。
地域に馴染むきっかけが消防団
──入団のきっかけは、やっぱり勧誘が主ですか?
小口さん:
そうですね。自分から「やりたいです」って言う人はなかなかいませんね。いたとしても、どこにどう言っていいのか正直わからないんだと思います。なので、こちらから知り合いの人に「やらない?」って声をかけてみたり、「友達感覚で誘う」っていうのが一番多いかな。
──全く知らない方に勧誘に行くことも?
小口さん:
あります。それが地域に馴染むきっかけになることもあるので。「こんな人引っ越して来たよ」っていうのを聞いて、ちょっと会いに行ってみて。それで入ってくれている人もいます。
──関さんの入団も、勧誘がきっかけですか? 入団の動機も聞かせてください。
康雄さん:
きっかけは、結婚して移住してきて、当時の分団長の……ゴリ押しで(笑)。あまり深くは考えてなかったです。ただ、移住したばかりで、まわりに知り合いもいないし、消防団に入れば仕事以外で人と繋がれるってことに、素直に「ああ、いいなぁ」って思いました。せっかく移住したんだから、人に顔を覚えてもらいたかったので。それが動機ですね。
──移住するまでは、消防団って身近な存在でしたか。
康雄さん:
いや、考えたこともなかったです。仕事や時間のことを考えても、自分に声がかかること自体なかったと思います。そのくらい身近なことではなかったですね。
──入団することを、奥様には相談しましたか?
康代さん:
実は、消防団に入らないかと声をかけてくださった分団長さんは、もともと私の仕事上の知り合いで、結婚の予定を話したら、「じゃあ、消防団にぜひ入ったほうがいいよ」と、移住する1年以上前から声をかけてもらっていて(笑)。私から主人に話をしました。
康雄さん:
抵抗感と言うより、むしろ「入りたいなぁ」っていう気持ちだったので、相談は特にしてないですね。
マイナスになるようなことはない
──ぶっちゃけ、途中で辞めるってこともできるんですか?
小口さん:
できます。それは本人の希望次第。仕事の異動、怪我、いろんな理由があります。
──年間の行事すべて、全員強制参加なのでしょうか?
小口さん:
そこまでの権限はないです。メインで活動している班長以上が12〜13人。操法の選手や、日頃からの活動に出ていただくのが大体40〜50人ぐらい。仕事や家庭の都合に合わせて、負担にならない程度に来てくれる方が、全体の3分の1〜半分くらいはいる体制ですね。
──実際に活動してみて、どんなメリット・デメリットを感じますか?
康雄さん:
地域の方々に顔を覚えてもらうには、最適ですね。知り合いは増えたし、楽しいですよ。すべての活動に、必ず参加しなきゃいけないわけでもないですし、僕も実際そんなに参加してないです。行けるときだけ行ってる感じです。
だから逆に、デメリットがないですね。別にマイナスになるようなことは何もないです。
康代さん:
主人は生まれ育った松本を離れて、知り合いがいない私の地元に来てくれた。しかも仕事は、私の実家の家業を継ぎに来てくれて、私の家族とずーっと一緒で、少し息苦しいんじゃないかなと思って(笑)。仕事以外に何か打ち込めることを見つけてくれればいいなぁと。外に出て、人に会える時間を作ってほしいなって思っていたんです。だから、消防団活動はちょうどいいんじゃないかなって。
そしたら、とても楽しいようで(笑)。昨年、操法の選手をやらせてもらった時、自主練として夜、走りに行ったりしてました。楽しめることを見つけてくれてよかったなって思ってます。
康雄さん:
信濃町に移住する人って、アクティビティーを求めて来る人が多いと思うんです。でも僕の場合は、仕事のために来たので、本当に仕事ばっかりしてるんです(笑)。
──消防団はアクティビティー感覚?
康雄さん:
そうそう(笑)。部活動やってるような感覚です。
康代さん:
消防団活動をきっかけに外に出てくれるようになったことは、とても有り難い(笑)。だから、私としてもデメリットは、そんなに感じてないです。
──意外とデメリットはないんですね。
康雄さん:
たまに、いないとかは?(笑)。夜中にちょっと酔っ払って帰ってきたり(笑)。
康代さん:
でも、ちゃんとシャワー浴びた? ぐらいの感じ(笑)。操法の練習期間は毎日出かけるんですけど、早朝だけなので、逆に体壊さないように夜は早く寝てよっていうだけで。
小口さん:
素晴らしい……(笑)。
パパの頑張っている姿はぜひ見せたい
──家庭内での変化ってありますか?
康代さん:
家にいないっていうのは、変化かもしれない。特に子育て世代で、お風呂入れたり、寝かしつけの時間に父親がいないっていうのは、お母さんにとっては負担かなぁと思うこともありますけど、いつもいないわけでもないし、いないとしても朝がメインだから、逆にやりやすい部分もあります(笑)。
それに、我が家の場合はラッキーなことに、代わりに見ていてくれる人が近くにいるので、気持ちの負担も少ないのかなと思うんです。
「いい変化」かもしれないです。操法練習期間中、いきいきしてる。「やんなきゃ」っていう使命感で体も引き締まるから、それはすごく「いい変化」。でも、終わるとすぐ戻るけど(笑)。
康雄さん:
そうなんですよ(笑)。
──お子さんにも何か影響はありましたか?お父さんが何か一所懸命にやってるなという。
康雄さん:
まだあんまり、わからないかな。でも、消防車を見るの大好きなので。
──じゃあ、この後一緒に写真撮ろうね。
まさよし君:……。
──(笑)。
康代さん:
たぶん大会とかも今までは、パパが出てるってイマイチわかってなかったと思うんですけど、今だんだんわかるようになってきてるので、大会とかで活躍してるの見て分かったら、嬉しいんじゃないかな。ぜひ見せたいなぁとは思ってます。
──今後も、お子さんに見ていて欲しいですか。
康雄さん:
「ちょっとカッコいいな…」とか思ってくれたら、嬉しいですねやっぱり。
いざという時、力になれる。ぜひ、知ってほしい
──今後、移住してこられる方々含め、たくさんの方に消防団をもっとちゃんと知って欲しいですね。
小口さん:
仲間と好きなことを言い合える団体って、あまりないと思います。……地域に根付いてこれからやっていこうと思う人には、メリットが多いと思う。その分デメリットもね……。個人差はあるかもしれませんけど。そこは、また違うところで補っていけるんじゃないかな。やってみたら、わかると思いますよ。
必ずやんなきゃってものではないし、やってみて肌に合わなければ、辞めればいいっていう感覚でいてもらえればいいと思います(笑)。
康雄さん:
知ったら、楽しいと思います。あと楽しいだけじゃなくて、実際に火事になったり、いざという時に、手も足も出せない……見てるしかできないのは、すごく虚しくなるというか、辛いと思うんです。でも、消防団の活動をしていることで、そういう時に力になれて良かったなって。そういう気持ちも、ぜひ知ってほしいです。
入ったら、きっと楽しみが増える
火災の予防や消火活動が本来の役割ではありますが、地域のことや住民のこと、家庭のことを知るためのいいきっかけにもなる消防団。
「入らなきゃいけない」のではなく「入ったほうが楽しい」のかも。あまり気負わず、仲間探しのつもりで入団してみるのもいいかもしれません。あなたも地域の力になってみませんか?
▼入団のお問い合わせ▼
信濃町役場 総務課 TEL:026−255−3111
または、お近くの消防団員まで
取材・文・写真:Ayaco*