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田舎での出産は大変!?信濃町でのリアルな出産育児事情

ありえない、暮らし

田舎での出産は大変!?信濃町でのリアルな出産育児事情

こんにちは。信濃町に移住して4年、夫とともにロッジを経営しながら子育てにも奮闘中、この町の暮らしにもかなり馴染んできたSakiです。

信濃町へ移住を検討されている若い世代の方々の中には、「信濃町での子育て環境について、くわしく知りたい」という方もいるのではないでしょうか。

私が信濃町に来て驚いたのが、「どのご家庭も子だくさん」ということ! 3人4人なんて普通で、なかには6人兄弟ということも。もちろん、町全体で見ると子どもの数は減少しているのですが、それぞれのご家庭では子だくさんで、兄弟姉妹が多いのです。

私自身、信濃町に移住してすぐ1人目を出産し、現在は子育てしながら、2人目を妊娠中です。私の実家は関西にあり、夫はニュージーランド出身なので、親戚や兄弟に育児を手伝ってもらえる環境ではありません。ですから最初は、慣れない土地での出産は、正直不安でした。

そこで今回は、これから信濃町で出産、子育てを考えている方々に向けて、このいなかまち「信濃町」での出産・育児のリアルを、私の体験をふまえてお伝えしたいと思います。

信濃町には産婦人科がない!

信濃町の景色・野尻湖

出産を控えた妊婦にとって、重要な場所が産婦人科医院ですが、実は信濃町には産婦人科医院がありません。信濃町には「信濃町立信越病院」という病院が1つあるのですが、それ以外の病院はなく(歯科医院は3軒あります)、風邪をひいたり検診を受けたりする場合は、大人から子どもまで信越病院にお世話になります。そんな頼りになる信越病院も、産婦人科はなく、出産のためには長野市や中野市、妙高市の産婦人科医院に出かけないといけません。

私の場合、1人目の妊娠がわかったとき最初は、隣町である新潟県妙高市の産婦人科「愛クリニック」で診てもらいました。が、愛クリニックは現在、妊婦健診や婦人科のみの診療となっているため、出産のために別の産院を探す必要がありました。それで、妊娠5ヵ月目のときに、新潟県上越市の「城北レディースクリニック」に転院しました。

移住して半年後に妊娠していることがわかったのですが、身近に小さな子どもを育てているママさんがおらず、ご近所の奥さんたちのお子さんたちはもう中学生や社会人で、出産したのは10〜20年以上前のこと。「どこの産院がいいのか」などの情報がまったく入ってきませんでした。

そんなとき、母子健康手帳をもらいに信濃町役場へ行くと、担当の方が「お1人目ですね~」とか、「育児を手伝ってくれる方はいますか? 不安はありませんか?」と気軽に話しかけてくれました。それで産院探しに困っていることを伝え、通える場所にある産婦人科のリストをメモでいただきました。そのときから、役場の方々は相談しやすい雰囲気だなと感じたことを覚えています。

ほとんどの信濃町のママたちは、長野市や中野市の産院で出産されているようです。信濃町から長野市へは車で30〜45分ほどで出られるので(住むエリアによって多少違います)、長野市の産院を選ぶ方が多いようです。

私の場合は上述のとおり、新潟県上越市の城北レディースクリニックで出産したのですが、妊婦健診が無料になる補助券は長野県内のみで使えるため、近隣とはいえ新潟県である上越市の産院では、あとから役場に申請しに行かなければ補助が出ませんでした。

上越市の城北レディースクリニックで1人目を出産したのが、12月7日のこと。冬の信濃町は積雪量が多いことで知られていますが、出産後まもなく体力的に弱っているなか、生まれたての子どもを連れて役場まで雪の中を運転したり、子どもを抱っこして雪の中を歩いたりと大変だったので、今回は長野市の助産院「ほやほや」で出産予定です。私の住んでいるエリアから長野市の助産院までは車で45分ほどかかるのですが、今回は長野県内の産院なので、毎回の妊婦健診のあとに町からもらった補助券を出すだけなので、清算はすごく簡単です。

ちなみに、雪道の道路状況については、信濃町から長野市へ出る道は除雪もしっかりされていますし、長野市は信濃町よりも積雪量は少ないので、冬でも車の運転は問題ないと感じています。

信濃町からの出産・子育てサポートの充実度は?

信濃町での子育て スキー場

出産のとき、やっぱり気になるのが、公的な金銭的補助ですよね。ほとんどの自治体で同様だと思いますが、妊娠中は基本の妊婦健診が無料になります。もちろん国から支給される児童手当や出産一時金もあります。また1人目の妊娠中はなかった歯科健診の無料補助券が、今回の妊娠時にはいただけました。少しずつ補助の内容が広がっているのは嬉しいことです。

また信濃町独自の補助として、出産時に「信濃町すくすく子育て支援金」(いわゆる「出産祝い金」)30,000円が支給されます。さらにコロナ禍の現在(令和3年度)、期間限定ですが、妊婦には100,000円の補助金が出ます。

その他、信濃町による公的な経済的支援や手当、子どもに関する施設、相談窓口の紹介など、子育てサポートについては、「信濃町子育て支援サイト」にくわしく紹介されています。

信濃町子育て支援サイト

それでは信濃町の出産祝い金の金額は、ママたちにとって満足できるものなのか、出産に関する公的な支援金を、近隣の市町村と比較してみると……。

たとえば隣町の飯綱町では、誕生祝い金が1人200,000円、さらに保育園の卒園や小学校、中学校の卒業時にも30,000円~50,000円のお祝い金が支給されます。また、長野市の西側に位置する小川村は、出産祝い金が50,000円~200,000円、かつ4歳到達時や小学校入学時にも30,000円~50,000円のお祝い金が支給されます。

とくに隣町の飯綱町と比較して「信濃町はお祝い金がやや少なめなので、もう少し増やしてほしい!」という声は、ママさんたちのあいだでよく耳にします。

人口減少や過疎化が問題となっている地方の自治体では、子育て世代の移住者を増やすために、こういった補助を手厚く支給していることが多く、過疎化が深刻であるほど金額が高くなる傾向があります。実際、長野市や飯山市、中野市などの人口の多い市では、出産祝い金がないので、信濃町では出産祝い金をいただけるだけ、ありがたいなと私自身は思います。

また信濃町では、18歳未満の子どもが病院にかかるときの費用は、一律500円の自己負担のみです。最近は自己負担なしの自治体も増えているようですが、一律500円でも、十分な補助だと思います。

小中学校についてお話すると、信濃町には小中一貫の学校が1つで、子どもたちは9年間同じところに登校します。学校の近くに住んでいる子どもたちはもちろん歩いて通学しますが、私の住んでいる古海(ふるみ)という地区は学校まで車で約20分かかります。ですので遠いエリアの子たちは、スクールバスやタクシーがお迎えに来てくれます。放課後にお友だちと遊びながら帰ったりすることができないのは残念ですが、夫の母国ニュージーランドでもスクールバス通学は当たり前です。スクールバスのおかげで、保護者が送迎する必要がないのは助かりますし、もちろんタクシー代は無料です。他には小中学校の学級費の無償化の補助もあり、使用する教材費も無料です。

ちなみに保育園は保護者が車で送迎する必要がありますが、町内に保育園が4つあるので、小中学校よりも近い場所にあることがほとんどです。また、ある程度の距離が離れている場合には、補助も出ます。このように田舎町ならではのサポート制度があるのは、ありがたいことだと思います。

出産後のママの強い味方「木育ルームなかよし」

木育ルームなかよしの相談員さんと助産師さん

出産後から子育てをする過程で、いちばんよくお世話になっているのが「木育ルームなかよし」です。

「木育ルームなかよし」は、0歳から小学校入学前の親子が木に触れあいながら、気軽に集える広場として信濃町総合体育館内で開設しています。

毎月、あそびの会やお誕生日会等のイベントや絵本の貸し出しを行っています。また、母乳相談や育児相談ができる相談員がいます。

信濃町子育て支援サイト内「木育ルームなかよし」より 

なかよしでは、平日は毎日、相談員の方がいらっしゃるほか、助産師さんが週2回いらっしゃって、母乳マッサージが受けられたり、育児相談ができます。産後は母乳外来に通うママも多いと思いますが、外来にかかると1回につき5,000円くらいかかります。ですが、なかよしでは母乳マッサージが無料なんです! そのうえ時間制限や人数制限もなく、毎回しっかりとしたマッサージが受けられます。予約制でないところも、先の予定がなかなか立てられない育児中の身には、とてもありがたいです。マッサージの間は、相談員の方に乳児をみていてもらえます。

また、乳児の体重は成長具合を知るうえで重要なのですが、マッサージのたびに子どもの体重を測ってもらうことができ、出産後の不安定な時期にいろいろなお話ができ、支えていただきました。

相談員の方は、元保育士さんなど、子どものことをよく理解している方々なので安心です。また同じ信濃町の町民なので町内の子育て事情もよくご存じで、保育園の入園から子どもの発達のこと、小学校の行事やおいしいレストランまで、なんでも気軽にお話ができます。

木育ルームなかよしにある本、おもちゃたち

この「木育ルームなかよし」という遊び場は、基本的には0歳から小学校入学前の親子を対象にしているのですが、3歳以上はたいてい保育園に行きますので、実際には3歳未満の子どもたちが利用することが多く、保育園に通う前の子どもたちのふれあいの場といったイメージです。

信濃町木育ルームなかよしにあるナウマンゾウの滑り台

たくさんの遊び道具や絵本が置いてあって、うちの子はここぞとばかりに遊びまわります。その中でも特徴的なのが、木製のおもちゃです。ナウマンゾウの滑り台や木のたまごのプールなど、信濃町などでとれた木材を使ったおもちゃで遊べます。

信濃町木育ルームなかよしで手形をとる

誕生日には相談員さんが手形を取ってくれて、かわいい誕生日カードを手作りしてくださいます。1歳のとき、2歳のとき、と、毎年の成長がわかるかたちで記念にいただく誕生日カードは、私たち親にとっても、とても嬉しい贈り物でした。

信濃町木育ルームなかよしでもらった誕生日カード

また、4ヵ月健診のときにも信濃町の木材を使ったおもちゃをプレゼントしていただいたり(注:プレゼントの内容は年度によって変わる可能性があります)、本を贈っていただいたりと、木と触れ合う機会が多く、「田舎に住んでよかった」と思ったことの1つです。

信濃町全体で見ると、子どもの数が減っていることは、さみしいことかもしれませんが、視点を変えると、小中学校の生徒数が少ないことで、いろいろな方から名前をすぐに覚えてもらえたり、子ども一人ひとりに手厚く向き合ってもらえたり、田舎ならではのゆったりと温かいサービスを受けられることはメリットだと思います。

信濃町での出産と育児を経験して思うこと

信濃町からいただいた半年・1歳の記念品

ニュージーランド人の夫は、職住一体の自営業ということもあり、子育てに積極的に参加してくれているのですが、私たちがちょっと目を離したすきに子どもが勝手に外に出かけてしまうことがあります。そんなとき、ごく自然にご近所さんが子どもをみていてくれたり、ときにはお家の中で遊ばせていただいてることも。地域ぐるみで子育てをしてくれているような雰囲気は、ニュージーランドにはないものなので、夫も喜んでいます。

また、信濃町は、昔から外国人の方の別荘地として野尻湖国際村があったり、ウィンタースポーツを楽しむ外国人観光客が多かったりするので、多様性を受け入れる土壌があります。うちの子どもの髪の毛が茶色くても、ニュージーランドの子どもたちのように裸足で外に出ていても、みなさん温かく見守ってくださり、人目を気にしなくていいのはありがたいなと思います。

もちろん田舎ならではの「行きたい場所がすべて遠い(移動に時間がかかる)」というデメリットはありますが、それは同時にメリットでもあります。私たちのように「車がほとんど通らない自然のなかで生活したい」と思う家族にとっては、信濃町の静かさ、のどかさはとても魅力的です。

田舎での生活は、家族のあり方をじっくりと考えさせてくれます。週末には全員で遊びに出かけるご家族の姿をたくさん見かけますし、ホームパーティーでお互いのお家に遊びに行ったり来たり、家族ぐるみの付き合いが多いと思います。都会に比べて、家族で一緒に過ごす時間が長いので、家族の人数は多いほうがやっぱり楽しくていいなと思います。

子どもが小さいうちはなかよしを活用し、少し大きくなれば大自然の中で遊ばせられる。夏は野尻湖で泳いだり、ピクニックやキャンプをしたり、冬は雪遊びやウィンタースポーツをしたりと、お金をかけなくても家族で楽しめる遊びが信濃町にはたくさんあります。

町全体が新米ママやパパを温かく迎え入れてくれる信濃町の雰囲気と環境。だからこそ、親たちは安心して2人目3人目を考えられるんだろうなと思います。

田舎でのびのび子育てをしたいと考えている方は、ぜひ信濃町に来てみませんか?

町民ライター Saki

兵庫県の姫路市出身。ニュージーランド出身の夫とスキーロッジを始めるため、信濃町に移住。東京・北海道・オーストラリアなどいろいろなところに住んできたからこそ分わかる信濃町の良さを発信していきたいと思っています。

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