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ありえない信濃町通信

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「この町をもっと良くしたい!」地域おこし協力隊が描く信濃町の未来

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「この町をもっと良くしたい!」地域おこし協力隊が描く信濃町の未来

長く住んでいると、いつしか当たり前になってしまう風景や人とのつながり。そして、その奥に息づく伝統や文化。ところが、外から訪れた人の目や新しい世代の感性がそこに加わることで、同じ町でも驚くほど違った魅力が映し出されることがあります。

地域おこし協力隊は、そんな「視点の交差点」を生み出す存在として、町の内外をつなぎながら様々な活動を行っています。本記事では、2025年3月現在、信濃町に在籍している協力隊のメンバーを紹介します。それぞれがどんな思いで、どんな場面で、どのように力を発揮しているのか。彼らの声を通じて、いつもの町が少し違って見えてくるかもしれません。ぜひお楽しみください。

坂井 孝次(さかい たかつぐ)

――まずは簡単にプロフィールを教えてください。

愛知県出身で、これまではフリーランスで自分で仕事をしてきました。2022年8月から信濃町の地域おこし協力隊に着任して、パートナー(現・妻)とともに引っ越してきました。

――どんな活動をされていますか?

農林畜産係に所属しており、着任当初のミッションは農業振興だったのですが、いろいろあって今は有害鳥獣対策の業務を任されています。サル被害の軽減のために現場に行くのはもちろんですが、町の中でも特にサルが多く出没する山桑という地区に長野県広域鳥獣保護管理員の方を講師として招いて、サル払いの講習会を開催したりもしました。

その他には、毎年係が受け入れを行っている東京の中学・高校の体験プログラムへ参加し、地域の方と学生の交流のお手伝いなどもしています。

――坂井さんが感じる信濃町の魅力って何ですか?

自然の景色が美しいこと。でも一番の魅力は地域の人々ですね。

――逆に信濃町のネガティブな部分はどんなところでしょうか。

農林畜産係で活動する中で、耕作放棄地や放置林の増加に課題を感じています。これらが鳥獣被害の拡大につながっているのです。

その課題と向き合っていくために、森林の利活用の方法を模索しているところで、今後は町内の自伐型林業の発展の一端を担っていければと考えています。そのために現在は林業を学んでいる真っ最中です。

――地域おこし協力隊に興味がある方にメッセージをお願いします。

初めての田舎暮らしに不安などある場合でも、協力隊は地域に根付いていく為の良い時間になると思います。ですので是非挑戦してみてください!


杉浦 裕(すぎうら ひろし)

――杉浦さんのご経歴を教えてください。

愛知県出身で、雑誌の編集、Web サイトの運営などメディアに関わる仕事を長く続けてきました。信濃町の地域おこし協力隊には2023年6月に着任し、現在はシティプロモーションを担当しています。

――具体的にはどんな活動をされているのですか?

主に「ふるさと納税」の業務全般を担っています。企画営業、サイト制作、マーケティング、返礼品の発送管理など、トータルで携わっています。

――ふるさと納税ではすばらしい成果をあげられたそうですね。

2024年の寄附額は総額1億円を超え、前年比約170%でした。私が着任して以降2年間の信濃町のふるさと納税寄付額の伸び率は県内でもトップクラスで、少しでも町内の経済活動の活性化に貢献できているのは嬉しいです。 昨年10月に新たにふるさと納税を担当する協力隊員(中村さん)が加わって、ようやく土台は固まってきたので、今後は新規返礼品の開発などにシフトしていきたいと考えています。

――具体的に考えていることは?

「和魂洋才」ならぬ「物魂電才」というテーマに関心があります。 大きな枠組みでは、6 次産業と同じなのですが、ものづくりの精神に、自分ならではのメディアやITをクロスさせることによって、より付加価値を生み出すような仕組みを考えています。

――杉浦さんが感じる信濃町の魅力はどんなところでしょうか?

面白い才能を持った「変わった人」が意外と多く集まっているところでしょうか。それでいて、一人ひとりが個人主義的といいますか、ほどよい距離感を保ちながら暮らしているのが特徴だと思います。さらに、アクセスの面も決して悪くなく、長野市や新潟方面、東京圏へも割と行きやすいんです。

――逆に、ネガティブな部分は?

アウトドア以外で若者が気軽に遊べる場所が少ないように思います。都会と同じでなくてもいいのですが、地域の人や周辺の人が「あそこに行けば誰か知り合いがいる」みたいな空間や時間が増えていけば、もっと若い人も動きやすくなるかもしれません。

――最後に信濃町への移住に興味がある方にメッセージをお願いします。

面白いものがある、人がいる町にしていきましょう!


窪谷 充代(くぼや みちよ/みーちゃん)

――はじめに自己紹介をお願いします。

東京都足立区出身で、以前は長野県内のスキー場で営業をしていました。2023年10月に信濃町の地域おこし協力隊として着任し、現在は主に信濃町の森林セラピーを中心としたまちづくり事業である「癒しの森事業」のサポートと、観光誘客のための広告宣伝業務に携わっています。

――活動内容をもう少し詳しく伺ってもいいですか?

「癒しの森」関連では、コースの整備や町民向けイベントのお手伝いをしています。夏には御鹿池の整備に参加し、初秋には黒姫高原から苗名滝までのロングコース(約7キロ)を歩く町民イベントに同行しました。滝を上から見下ろす景色はとても迫力があって圧倒されましたね。

御鹿池整備の様子

最近は町外の方やリピーターも多く訪れてくださり、様々な方と触れ合えるのが魅力です。私自身、将来は森林メディカルトレーナーとして活動していきたいので、現場で実際に学べることは本当に貴重だと感じています。

観光誘客宣伝に関しては、雑誌やSNS、ラジオなどを使って町の魅力を発信しています。この夏はテレビ取材にも同行しました。どの施設やスポットを取り上げようかいつも悩みますが、より多くの人に興味を持ってもらえるよう、工夫して情報発信しています。

――癒しの森のトレーナーを目指しているとのことですが、具体的にはどんな取り組みを?

アロマテラピーやハーブに関心があり、今後はその知識を活かして、「森林体験プログラム」でのガイドや癒しの森のご案内ができるよう資格取得にも力を入れています。自然豊かな環境だからこそ、アロマやハーブの活用は幅が広がると思っています。

――今後チャレンジしたいことや、目指しているものを教えてください。

森の魅力を活かした観光プログラムを作りたいです。例えば親子向けの森林体験や、自然を身近に感じられるイベントなど、幅広い世代が楽しめる企画を模索中です。任期後も森林メディカルトレーナーとして、信濃町の豊かな森をご案内できればと考えています。

――信濃町の好きなところを挙げるとすると?

やはり四季の変化をダイレクトに感じられる自然環境ですね。登山やスキーなどのアウトドアアクティビティを満喫できるのも魅力です。日常生活の中で、「今、季節が移ろっているんだな」と実感できるのは贅沢だと思います。

――逆に、課題だと感じる部分は?

単身者向けの賃貸物件が少ないことです。協力隊として移住してくる方も、住まいを探すときに苦労するケースが多いように思います。そこはもう少し選択肢が増えるといいですね。

――最後にメッセージをお願いします。

これからも信濃町の魅力を伝えられるよう、いろいろな企画や発信を頑張っていきます。癒しの森も、観光誘客も、まだまだ可能性がたくさんある分野です。興味がある方はぜひ一度、実際の森を体感しに来てみてください。私自身も、もっと知識を深めてみなさんをご案内できるように精進していきます!


大木島 蓮(おおきしま れん)

――大木島さんは高校卒業後、新卒で信濃町の地域おこし協力隊になられたそうですね。経緯を教えてください。

はい、2024年3月に県内の工業高校を卒業し、4月1日に信濃町に着任しました。高校3年生のときに高校で学んだことを活かせる就職先を探していたところ、高校の先生の紹介で、信濃町の伝統工芸である信州打刃物の職人となる地域おこし協力隊の募集があることを知り、応募しました。

――現在はその職人を目指して活動をなさっているのですね?

信州打刃物の現役の職人は70代以上の熟練の方ばかりで、その技術継承が最終的な僕のミッションです。

ひとりの職人さんに弟子入りするような形で、マンツーマンで教えていただきながら、日々技術練磨に取り組み、試作品や製品の制作をしています。基本的に工房にこもっていますので、他の協力隊員とは違い役場にはあまりいません。

――今後の目標は?

国内はもちろん海外にも信州打刃物の良さを広めていきたいです。また、次の世代への技術継承の土台を僕が作っていければと考えてます。

――信濃町での暮らしはどうですか?

僕は長野県松川町出身なのですが、自然が豊かなところや町の規模感などは地元と信濃町は似ていると感じています。ただ、信濃町は観光が強い町なので、地元にないレジャー施設があることが魅力だなと思います。 雪の量は松川町と比較できないほど多いと聞いていたので、覚悟はしてきましたが、まだ除雪車の音に慣れなくて・・・。夜中に除雪車の音で目が覚めることが度々あって少し困っています。積雪の多さはこの町の魅力でもありますが、同時に課題でもあると感じます。


光岡 忍(みつおか しのぶ)

――簡単にプロフィールを教えてください。

東京都渋谷区出身で、前職はウェブメディアやプロダクトのクリエイティブディレクターをしていました。2024年に信濃町の地域おこし協力隊として着任し、現在は「信濃町ファンクラブ」の立ち上げや運営を任されています。移住して8ヶ月ほどになりますが、まだ春の信濃町を体験していないので、これからの季節がとても楽しみです。

――具体的にはどんな活動をされているのですか?

大きく2つあります。まずは「ローカルメディアの拡充」に注力し、信濃町ファンクラブの魅力的なロゴやLINEアプリ画面の制作、情報の整理などを進めています。メディアプラットフォーム「note」でも独自のページを立ち上げ、写真撮影や記事制作を行いながら、信濃町の歴史・文化・自然の奥深さを伝える「信濃町ものしり深耕」というシリーズも始めました。私自身、記事を書く中で初めて知ることも多く、学びながら発信できるのが面白いです。

おやきの教習会

もう1つは「イベント企画」です。ファンクラブが主催する行事のほか、継続的に集まれる“部活動”として、そば部、お米部、炭焼部、園芸部、まつり部などの発足を検討していて、みんなが気軽に参加できる場を作りたいと思っています。

――今後、どんなことをしていきたいと考えていますか?

「信濃町で開催するイベントをもっと盛り上げたい!」というのが大きな目標です。ファンクラブは信濃町が好きな方々をゆるやかに繋ぐコミュニティでもあるので、定住支援員のチームとも連携しながら、会員限定の催しや特典などを用意したいですね。インスタグラムやフェイスブックでの情報発信にも力を入れつつ、たくさんの「信濃町ファン」と一緒に楽しく活動していきたいです。

東京で行った信濃町ファンクラブイベントの様子

――信濃町の魅力はどういったところに感じますか?

空気と水がおいしく、四季の移ろいが美しい自然環境ですね。それと、田舎らしく人と人の距離が近いところも好きです。移住当初は少し緊張していましたが、皆さんと触れ合ううちに親しみを感じるようになりました。

――逆に、課題や苦手な部分はありますか?

住居環境と家探しが大きな課題だと思います。雪と寒さにもまだ慣れず、どんなふうに暮らしていけば快適に冬を過ごせるのか、これから学んでいきたいところです。

――最後にメッセージをお願いします。

まだまだ新参者ですが、私が目に映る信濃町の美しさや温かさを写真や記事で配信していますので、ぜひ「信濃町ファンクラブ」のインスタグラムフェイスブックをチェックしてみてください! 一緒にイベントを盛り上げたり、「部活動」に参加してくださる仲間を大募集中です。これからもっと面白い仕掛けを作っていきますので、どうぞよろしくお願いします。


野端 伸匡(のばた のぶまさ/のびた)

――野端さんは長野県内から信濃町に来られたと聞きましたが、ご出身はどちらですか?

出身は三重県ですが、大学進学をきっかけに長野県に来ました。そのまま長野県内で就職し、機械設計・開発の仕事をしていたのですが、趣味のアウトドアやスノースポーツをもっと楽しめる環境で生活したいと思い、信濃町の地域おこし協力隊に応募しました。2024年6月に着任して以降、「関係人口」の創出や空き家バンクに関する業務に携わっています。初めての北信濃暮らしでわからないことも多いですが、地域の皆さんに助けられながら頑張っているところです。

――どんな活動をされていますか?

現在は「信濃町ファンクラブ」の運営や移住定住支援がメインです。ファンクラブとしてイベントを企画・主催したり、移住体験施設の管理、空き家バンク「ありえない、いなかまち」の情報発信など、幅広く関わっています。2025年からは有害鳥獣対策にも本格的に取り組む予定です。

また、「関係人口」という考え方にも力を入れています。移住者や観光客だけでなく、定期的に町を訪れてくれる人たちも大切にしたいという想いから、武蔵野大学のフィールドワークを受け入れたり、学生たちに再び信濃町へ足を運んでもらう企画を進めています。たとえ日本全体の人口が減っていても、町が好きになってくれた人々と関係を深めていけば、結果的に町全体が盛り上がると考えています。

東京での移住イベント出展の様子

――今後チャレンジしたいことや目指しているビジョンは?

まずは、有害鳥獣による被害の現状をしっかり把握して、一つでも被害を減らしたいです。その先には、ジビエをメインにした食肉加工場を作り、新しいグルメを生み出す夢を持っています。

さらに、今は関係人口と町を繋ぐ活動に注力していますが、将来的には関係人口同士も繋げながら、町民の皆さんがやりたいことを実現できるような「まちづくり」に取り組んでいきたいと思っています。

――野端さんが感じる信濃町の魅力は何でしょうか?

雪がたくさん降るので冬の景色も印象的ですし、人がとにかく温かいですね。それに自然との距離が近いので、四季の変化や野生動物の気配などをダイレクトに感じられます。

――逆に、ネガティブな部分は?

除雪作業はまだまだ修行中です(笑)。あとは、温暖化と耕作放棄地の増加、ハンターの減少などが重なって、鳥獣被害が拡大しているのを肌で感じます。そこをどうカバーしていくかが、今後の大きな課題ですね。

――最後に読者へのメッセージをお願いします。

信濃町の皆さん、いつも温かく迎えてくださってありがとうございます。1年目で至らないところも多いですが、お世話になった分をいつか恩返しできるよう、この町で成長していきたいと思っています。

地域おこし協力隊に興味がある方には、ぜひ一度飛び込んでみてくださいとお伝えしたいです。新しい人との出会いがたくさんあって、本当に刺激的な毎日が待っていますよ!


中村 萌乃(なかむら もえの)

――簡単な自己紹介をお願いします。

出身は神奈川県で、これまでは東京圏で営業や販売の仕事に携わっていました。信濃町の地域おこし協力隊には2024年10月に着任しました。

――移住のきっかけは?

東京や神奈川ではその日を楽しく過ごすのに必死でしたが、長野で過ごしていると一週間後や一か月後も自然と楽しみになることに気が付きました。今にも未来にもわくわくできる場所に身を置きたいと思い、引っ越してきました。

――地域おこし協力隊としてどんな活動をされていますか?

ふるさと納税業務を担当しています。信濃町ではこの数年でふるさと納税の返礼品の登録数が急増しているので、寄附受付サイトの整備が急務となっています。その中で私はサイトで使う画像や文字をもくもくと作っています。

仕事の大半がデスクワークで地道な作業が多いですが、やった分だけ結果が出やすい業務なのでそれを励みに頑張っています。また、サイト整備の過程でたくさんの地場産品やアクティビティを知ることができ、そのバリエーションの多さに驚いています。

――現在の業務における目標はありますか?

今後、返礼品を提供してくださっている事業者さんのもとを訪問していく予定です。そこで、直接話を聞いたり商品を手にしたりすることで、返礼品の特徴や事業者さんの想いなどへの理解を深め、信濃町の魅力がより伝わるサイトづくりに反映させて行くことが目下の目標です。

――着任されてからまだ半年ほどですが、信濃町での生活はどうですか?

季節や天気、時間で表情が変わる景色に魅了されています。秋、冬とこの町の風景を見ながら生活をするのがとても楽しかったです。

信濃町の冬の風景(中村さん撮影)

業務の中でたくさんの春と夏の風景の写真を見てきたので、これから信濃町で春と夏を過ごして、実際に美しい風景を自分の目で見ることができるのを楽しみにしています。ただ、虫が苦手なので、夏が少し心配です(笑)。


あきば さとみ

――ご出身や前職を教えてください。

北海道札幌市出身で、前職は医療従事者、季節労働、旅人。2024年10月に信濃町の地域おこし協力隊として着任しました。

――どんな活動をされているのですか?

地域共生コーディネーターとして、ひだまりセンター(信濃町の地域活動支援センター)を拠点に、障がいがある人もない人もつながる場所を作っています。

――具体的なプロジェクトや取り組んでいることを教えてください。

福祉施設をもっと利用できるように、調理設備を使い、食事を通して交流できるイベントを計画しています。

――これからチャレンジしたいこと、形にしたいことはありますか?

遊び部を作りたいです。子どもから大人までが、地域や自然と親しくなれるように、気軽に遊ぶ集まりです。それから、友だちを100人作りたいです。

――信濃町の好きなところ、逆に課題だと感じるところは?

信濃町の空気と、町民のみなさまが持っている個性が大好きです。

一方で、住む場所の選択肢と移動する手段が少ないことが大変だと感じます。

――最後に、読者へメッセージをお願いします。

町には公にはあまり知られていないですが、たくさんの活動があり年中とても充実していると感じます。掘り下げることが楽しめる人なら、信濃町のことをきっと好きになれると思います。


まとめ

それぞれがさまざまな視点や強みを持ち寄り、「暮らす」「守る」「伝える」といった多面的なアプローチで、信濃町をより魅力的に育んでいこうとしています。豊かな自然と文化に恵まれ、温かい人のつながりを大切にする町だからこそ、新しいアイデアや挑戦が広がる可能性に満ちあふれているように思います。

これを機に、彼らの想いや取り組みに少しでも興味を持たれた方は、ぜひ信濃町に足を運んでみてください。美しい自然と活気ある暮らしに触れながら、地域に根ざした新しい活動の輪がますます広がることでしょう。 信濃町の未来を一緒に盛り上げていきましょう!

町民ライター 観音クリエイション

ヒップホップのトラックメーカー、ライター。音楽を作ったり、写真を撮ったり、文章を書いたりして生きています。2020年8月より長野県信濃町に移住しました。

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