ありえない、暮らし
スウェーデンから移住して日本でいなか暮らし。違いすぎる生活と魅力を楽しむ柴田夫妻
こんにちは。信濃町はすっかり寒くなり雪が少しずつ積もりはじめている状況です。みなさんはどんなウィンタースポーツを楽しみますか?
今回インタビューしたのはスノーボードが趣味を超えて生活の一部となっているご夫婦です。お二人が自分たちのやりたいことを人生のターニングポイントにおいてどのように実現してきたのか、教えていただきました。
今回インタビューした方
信濃町に移住したきっかけ
――まず、どうして信濃町に移住されようと思ったかを教えてください。
ジミーさん:
スウェーデンから日本に引っ越そうということだけは決まっていて、Googleマップで決めました。
――Googleマップ??
ジミーさん:
山と湖と海がある地域をGoogleマップで探していたところ、信濃町にはこの三つが全て近くにあるというのが分かったので。
のり子さん:
家族みんながサーフィンするし、スノボするし、スウェーデンでは湖で遊ぶのが日常だったので、同じような生活ができる場所を探していて。それに一番下の子がスウェーデンで乗馬をやってたので、信濃町なら隣町の飯綱に乗馬できるところもあるし、ジミーの両親が住む佐久にも近いので、条件的にとても良いと思ったんです。
――Googleマップで決めたと聞くとびっくりしますが、地理的条件が良かったということですね。そのなかでも一番の決め手は?
ジミーさん:
二人ともスノーボードをするので、ここはよく雪が降るっていうことが決め手でしたね。
――スノーボード歴は長いのですか?
ジミーさん:
僕は20歳から始めて、もうすぐ30年。妻は10代から始めているので、30年以上になります。
――スウェーデンでもずっとスノーボードをされていたということですね。だから信濃町の中でもスキー場が近い古海地区を選ばれたのですか?
ジミーさん:
そうです。今住んでいる家を気に入ったというのも大きいですね。
――こちらの家はどうやって見つけられたのですか?
のり子さん:
信濃町役場の空き家バンクですね。はじめは信濃町の移住体験施設を1週間ほど利用させていただいて、その時に空き家物件を4、5件見させてもらいました。
ジミーさん:
それでここに来た時にピンときて。
のり子さん:
他にも見たけど、やっぱりここだと思いましたね。
ここは空き家ではあったけれど、家主さんが週に一回は畑をしたり家のメンテナンスをしたりしに来ていたんです。お会いしたらすごく良い方で。
内覧中なのに娘が長座布団の上に寝っ転がってリラックスしたりしていて、あぁもうここだなって、即決でした。
――改装は自分たちでされたのですか?
ジミーさん:
改装はほとんどしていないんですよ。ペンキを塗って電球を変えたくらいかなぁ。今からやろうかなってところ。家の状態が良かったっていうのも一つの決め手で、水回りもそのままなのです。
のり子さん:
他の空き家は手を入れなきゃ住めないってとこが多かったのだけど、ここはすぐに住める状態だったね。
――お二人は日本にも長く住まわれてたのですか?
ジミーさん:
小さいころからスウェーデンと日本を行き来していて、日本ではスウェーデン学校に通っていましたね。でもその学校が閉校してしまい、友達と会う機会がなくなってしまったので、友達を作りたかったのと、スノーボードをやってみたいという想いがあって、冬のリゾートバイトを始めたんです。初めて行ったのは福島のアルツ磐梯ですね。
のり子さん:
私も北海道や東北のいろんなスキー場で働いていました。私とジミーは仕事先で共通の知り合いがいたことがきっかけで出会ったのです。
――結婚されてからは日本に住んでいたのですか?
のり子さん:
そうです。はじめは、八甲田を滑りたくて、青森に約6年いました。
ジミーさん:
その頃に私の父が病気になってしまったため、実家の長野に帰ることにしたのです。
のり子さん:
その後、長女が生まれ、義父の体調も良くなったので、今度はサーフィンのために千葉に移住しました。ジミーがサーフボードを作りたいと言いだしちゃって、自分のサーフボードブランドを立ち上げました。
ジミーさん:
今はもうないんだけど、キントウンサーフボードっていうブランド。その時は小さいながらも自分のブランドを持ちながら、大きい会社のサーフボードを請け負って作ったりしてやりくりしてました。
――その後はどうして海から山にまたシフトされたのですか?
ジミーさん:
いつも山と海は僕の中で好きなものとしてあって、どちらも大事にしてる。波がある時は波乗りをして、雪が良いときは山に行って。冬でも波が良ければ海に入ってるよ。
のり子さん:
スウェーデンでは顔中につららを垂らしながらマイナス10度の海に入っていましたよ(笑)。
――どうして千葉からスウェーデンに移住されようと思ったのですか。
ジミーさん:
東日本大震災が大きなきっかけですね。
のり子さん:
当時1歳の子どもがいたので、放射能問題が気になって。子どもがもう少し大きかったらスウェーデンへ行くという決断はしなかったかもしれません。スウェーデンにいたジミーの母の親族が、少しでいいからこっちにおいでよって言ってくれて、住めそうな家も紹介してくれて。
その時期になかなかサーフボードも売れなくなってきたんです。
ジミーさん:
震災時に全部止まったよね。経済も。それでどうしようってなって、じゃあスウェーデンに行ってみようかってね。
――スウェーデンのお住まいの近くには山も湖も海もあったのですか?
ジミーさん:
スウェーデンはあまり高い山はないですが、スキー場はありましたよ。
のり子さん:
町営のスキー場で、みんなシーズン券買って滑ってたね。スウェーデンは日本にあるようなスキーリフトの代わりにTバーという、掴まって引っ張ってもらうタイプのものが主流なんです。エコの観点かな?
ジミーさん:
設備的にお金もかからないからね。大きいリゾートしかスキーリフトはないよね。スキー場の数としては日本ほどではないけど、スウェーデンにもたくさんあります。
のり子さん:
でも、雪質はそんなに良くないですね。気温がすごく低いので、雪が氷みたいに固くなってしまうんです。スウェーデンに引っ越したばかりの時にマイナス30度になって、バナナで釘を打ったりしてみました(笑) 濡らしたタオルを振り回して何秒で凍るかって実験をしてみたりね。
ジミーさん:
寒波に入るときついよね。
のり子さん:
鼻で息すると凍ったり、まつ毛や髪も白くなっちゃうし。それでも家の中はあたたかいですけどね。
都市部では、ごみを燃やした熱でお湯を作って、そのお湯を大きい建物やアパートを中心に街中に行き渡らせる“セントラルヒーティング”というシステムが普及しているのです。
――スウェーデンはエコの観念が強いイメージがありますが、実際に日本よりエコが進んでいると思われましたか?
ジミーさん:
ごみは捨てやすいよね。
のり子さん:
日本は粗大ゴミを捨てるのにお金がかかりますが、スウェーデンでは無料で毎日どこでも受け入れしてくれます。
――私の感覚だとごみ回収が無料だったらどんどん捨ててしまいそうな気もするのですが。
ジミーさん:
それはあると思います。スウェーデンは実は消費大国なので。
――意外ですね、エコで物を大事にするイメージが強いので。
ジミーさん:
エコを謳ってはいるけど、国民性としては新しいものが好きで、まだまだ使えるものであってもすぐに新しいものに変えちゃいますね。
のり子さん:
キッチンとかも何年かで総とっかえ、ということもよくあるんですよ。
ジミーさん:
家のことに関してはスウェーデン人はこだわってますからね。
のり子さん:
冬は夜が長くて暗いから、家の中はいつもかわいく、心地良くっていう考えはあるのかも。
――夜はどのくらい長いのですか?
ジミーさん:
夜明けが遅くて、午前9時か10時まで暗いです。やっと明るくなっても、もう昼過ぎから薄暗くなってきて、3時にはもう暗いですね。
のり子さん:
それも太陽が上には昇らないからずっと風景がオレンジ色の感じ。
夏は逆にずっと明るくて、夜中も空がピンク色です。だから遊びたい放題なんです。夏休みは大人は4週間、子どもは2か月半あるので、みんなひたすら遊んでいますね。
ジミーさん:
その4週間は有給だから、みんなお金の心配をしないで休んでいます。
のり子さん:
家族でキャンプしたり、別荘に行ったり。夢の国かなって思っていました。冬の寒さが厳しいから、気候が良い季節は存分に遊ぼうっていう考えなのかな。
その代わり、冬は我慢。みんなで室内でお茶やおしゃべりをして過ごしていました。
――お茶の時間が多いってことはご近所同士が仲が良いということですか?
のり子さん:
いや、近所付き合いは日本のほうが多いかな。スウェーデンはどちらかといえば家族が一番。みんな家族で過ごします。だからお友達と遊ぼうと思ったら前もって約束をしておかないと会えない。
ジミーさん:
カレンダーで予定を決めておかないと無理だね。
のり子さん:
スウェーデン人は仕事終わったらすぐに家に帰るのです。一杯飲みに行くとかもなく。どこかに行くときは基本家族全員です。
日本の田舎での生活スタイル
――信濃町でのご近所付き合いはどんな感じですか?
のり子さん:
今住んでいる集落は9家族しかいないんだけど、みんな最高。何かあると一緒に活動したりします。
ジミーさん:
そうだね、けっこう近所付き合いはありますね。たまに電話がかかってきて、飲みにおいでよって誘ってくれる。ここはみんないい人たちで、すぐに溶け込めました。
――いなか暮らしで困ったことや予定外だったことはありますか?
ジミーさん:
だいたい想像してた通りだけど、ごみ問題は予定外かもね。
のり子さん:
冬は燃えるゴミしか捨てられないでしょ。ゴミの回収日がたまにしかないから、家に溜めておくしかないのが大変。でも困ると思ったのはそれだけですね。
――いなか暮らしで困ったこととして、消防団に絶対加入しないといけなかったなどはよく耳にしますが、ごみ問題は盲点でした。
ジミーさん:
消防団は年齢的に加入できないって言われました(笑)。
のり子さん:
地域の行事ごとにはむしろ積極的に参加していますね。少子化でこの集落はお祭りがなくなっちゃったけど、近所の人と復活させたいねって話しています。
――こういった地域ぐるみの活動はスウェーデンでもあるのですか?
ジミーさん:
夏場の草刈りくらいはするけど、あんまりないかな。スウェーデンでの近所付き合いってのは昔はあったんだろうけど、今ではないのが普通ですね。
のり子さん:
私、この前転んで頭蓋骨を骨折したんです。その時主人が出張で不在だったんだけど、近所の人たちが救急車呼んでくれて、付き添いもしてくれて。お昼ご飯を作ってくれたり、血圧も毎日計りに来てくれて。もうご近所みんな心配して親切にしてくれて、最高です。子どものことも気にかけてくれたし。
ジミーさん:
この集落は人が減るばかりだったので、今後なくなっていくんだろうってみんな思ってたみたいなのですが、僕たちが子連れで移住したから大歓迎してくれましたね。
どこに住んでも欠かせないスノーボード
――今年の冬も近づいてきましたが、今冬の予定はどうですか?
ジミーさん:
やっぱりスノーボード。時間がないのでバックカントリーでも、ゲレンデでも、滑れるところをとにかく滑りたい。
スウェーデンは寒いから雪が氷みたいにカリカリしていて、高い山もないし、雪の降る量が全然違いますね。去年は信濃町は雪が少ないって言われてたんですけど、僕たちにしてみたら十分たくさん降ってると思いましたよ。
のり子さん:
新しい板も買ったし、たくさん滑りに行きたいな。
まとめ
お二人の生活にスノーボードは必須のようです。どこに住んでも自分たちの好きなこと、やりたいことをベースに、家族との時間を大切にした生活スタイルは、柴田家の人懐っこくて明るい雰囲気からも感じることができます。
いなか暮らしの生活スタイルと海外での生活スタイルは、全く違うように思えて、意外にも共通点があるようです。信濃町には海外生活の経験がある方がたくさんいます。海外に憧れも持つ方も信濃町の生活スタイルは合うのかもしれません、一度移住体験に来られてみてはいかがでしょうか。