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【田舎で起業】信濃町の野菜のおいしさに魅せられて。元リゾートホテルシェフの新たな挑戦

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【田舎で起業】信濃町の野菜のおいしさに魅せられて。元リゾートホテルシェフの新たな挑戦

田舎は外食するところが少ないと思われがちですが、ここ信濃町では近年、移住者が開業したユニークな飲食店が増えてきています。

そんなお店に足を運ぶと、店内のあっちもこっちも知り合いばかり、ということもしばしば。そう考えると、田舎は競合が少ない分、人が集まりやすいから飲食店にとって有利な部分があるのかも?

田舎でお店を開くことの難しさや苦労とは?逆に、田舎だからこそ得られるメリットやビジネスチャンスはあるのでしょうか。

今回は、2019年にオープンしたばかりの「ベーカリーカフェ ハナアカリ」のオーナー夫妻にお話を伺いました。



今回インタビューをした方



信濃町から送られてくる野菜が移住のきっかけに

――早速ですが、信濃町でお店を開くことになったきっかけを教えてください。

優希さん(以下Y)
もともと二人とも野菜が好きで、健康なものを口にしたいという思いがありました。
私は健康オタクという訳でもないんですが、東京でオーガニックカフェや漢方料理、発酵食などの健康志向のお店で働いていて、夫と出会ったのもそのオーガニックカフェでした。

東京では18年ほど暮らしましたが、季節ごとに母が信濃町の野菜を送ってくれていました。それを夫が「おいしい」と気に入ってくれて、いつかこのお野菜を使って何かができたらいいねと、二人で話をするようになったんです。

――それで、信濃町に戻ろうと思われたんですね。

Yはい、ずっと戻りたくて。夫もそれに賛成してくれました。

――信濃町の雪に抵抗はありませんでしたか?

シェフ(以下C)
信濃町にはじめて来た日が大雪で、びっくりしました。えらいとこ来ちゃったと思って。

実際住んでみても、雪に驚かされることは多いです。
ハナアカリをオープンする前、長野市で仕事をしていたのですが、電車通勤が大変でした。そもそも1時間に1本しか電車が通っていないのに、雪が降ると電車が止まって、通勤にすごく時間がかかったりして。

こっちに来て7年目になるけれど、まだ雪には慣れないですね(笑)。

まちを明るく照らす灯りになりたい

――ハナアカリという店名の由来を教えていただけますか?

Y:もともと、お店を出すなら信濃町の方に還元したいという気持ちがありました。
私、歌をやっていた時期があったのですが、その時地元の皆さんにすごく応援していただいたので、そのお返しをしたいという想いが強かったんです。なので、場所としては長野市内なども検討したけど、やっぱり信濃町でと決めたんです。

そのときに、まちを照らす灯りのようになりたいと思いました。例えば今年だったら雪が少なくて、なんとなくみんな元気がないですよね。そういう田舎特有のムードを払拭して、自分たちから元気を発信して、まちを明るくしたいという想いから、「ハナアカリ」という名前をつけました。

C:店の方向性を決める際、このまちには子どもを遊ばせながらゆっくりと食事ができるところがないね、というのも二人でよく話していました。それで、キッズルームを用意して、お店の見た目も明るいイメージにして、家族で安心して食べにこれたり、お子さん連れでもフラッと気軽に立ち寄れる場所にしたいと思いました。

――シェフはこのお店を出すにあたって、信濃町の起業塾を受けられたと聞いたのですが、受講のきっかけはなんですか?

「起業塾(起業等人材育成支援事業)」とは
信濃町で新しい事業を起こす起業家の方、または既存の経営の改善・変革となる「第二の創業」を目指している経営者の方、若手経営者及び後継者、幹部育成のために、経営者としての心構え~収益性・資金調達方法~経営計画(ビジネスプラン)作成までを具体的な起業事例等を交えながら、体系的に学ぶ機会を提供し、参加者の起業等に対する包括的な支援を行ないます。


出典:起業等人材育成支援事業(信濃町)

C: 起業塾を受講した一番の理由は、起業してお店をするといっても何から始めて、どういった手続きが必要かなど、何もわからない状態だったからです。そんなとき、「起業塾に行ったほうがいいよ」とまちの色んな方におすすめしてもらい、受講を決めました。

――実際受けられて、いかがでしたか?

C:イチから仕組みなど教えていただいたので、すごく勉強になりました。事業のコンセプトづくりなども、現在のお店に生かされています。
実例を交えながら教えてくださるのが、とてもイメージがしやすく良かったです。

補助金も助かりました。厨房の機材の購入に使わせてもらいました。

まちのニーズに合うメニューづくりに苦戦

――田舎でお店を開業されてみて、苦労したことはどんなことですか?

Y現在進行形で苦労しています(笑)。

――えっ、そうなんですか?!

C この町で、どんなメニューが受け入れられるのか、まだ探っている最中です。僕が自信のある料理を出したところで、それを食べたいという方がいなければ全く意味がないので。お店としてのベースはありながらも、まちのお客様の好みに合わせていかないとリピートに繋がらないと思うので、そういった部分は難しいですね。

Y私たちがおいしいと思ったお野菜に関しても、まちの人は自分で野菜を育てていることも多くて、自分の畑でとれたもぎたての野菜って、絶対おいしいじゃないですか。だから、野菜もただ出すのではなく、何かひと工夫して、今までの経験も生かしたものにしないと、と試行錯誤しています。

――わたしも何度かお店に来させてもらっていますが、来るたびにメニューが違うのが印象的でした。そんなご苦労があったんですね。

Y他には、このまちにはカフェ文化があまりないのかなと思いました。東京だとランチタイムの後も、ちょっとお茶しようかっていうお客様がカフェのご利用にいらっしゃるのですが、信濃町だとそういった需要があまりないのかもしれないです。

また、その週によって、土日にお客様が多い時もあれば、平日が混むときもあって、いまだに全然傾向が読めなくって(笑)、それも難しい部分です。

お客様との距離の近さが、田舎でお店をやっていく楽しさ

――何か予想外だったことはありますか?

Yお年寄りの方がけっこう来てくださるというのは、あまり予想していませんでした。来てほしいなとは思っていたんですが、実際お友達同士で来てくださるのを見ると嬉しいです。

――お客様を見ていると、ご家族連れも多いですよね。

出典:https://www.nagano-hanaakari.jp/shop

Cそうですね、キッズルームを用意していることは喜んでもらえているみたいで、キッズルーム利用のお客様が途切れないときはよくあります。

――田舎でお店を出して良かったなと思うこと、他にもありますか?

Cお客様との距離が近いっていうのは間違いないですね。東京だったら、“お客様”と“お店のスタッフ”って境界があるけれど、ここの場合は全然ない。多くのお客様が顔見知りですね。

Yそうそう、だから「いらっしゃいませ」じゃなくて「おかえりなさい」って言いたくなっちゃうんです。2回ぐらい来てくださったら、もうお互いに顔を覚えちゃって友達、みたいな(笑)

C 自分でお野菜を作っている方からお野菜をいただくこともあって、ありがたいです。それをメニューに使わせてもらっています。
ほかにも、道の駅や地元のスーパーで地元の食材が安く手に入るのもとても良いです。そのため、メニューの中の野菜はほとんど信濃町のものを提供できています。

――まさにお店のコンセプトの“地産地消”ですね!

認知を上げて、夜も明るくしていきたい

――最後に、今後の目標や展望があれば教えてください。

Cまだ少し認知が低いというのが課題です。オープンして半年以上経ちましたが、いまだに「いつの間にオープンしたの?」と言われることがあって。

――駅の近くのとても良い立地だと思うのですが、お店に気づかない方もいらっしゃるんですね。

C 「店の場所がわからない」とも言われることがあります。なので、もっと認知をあげて、まちの方が外に食べに出る時に、選択肢のひとつとして必ず頭に浮かぶぐらいにならないと、と思っています。

――今月(2020年1月)からはディナーも始まるんですよね。新しいお客様にきていただくきっかけになりそうですね!

Tやっぱりこの辺夜暗いので、夜もできるだけ明るくできたらと思っています。

Cどこまで需要があるかは正直分かりません。でもやってみないと分からないので、とにかくやってみて、お客様の希望を探っていきたいです。

まとめ

ハナアカリさんでは、田舎ならではの“お客様との距離の近さ”を楽しむことがスタッフのやりがいとなっていると同時に、お店を進化させるアイディアの源にもなっていると感じました。
また、キッズルームがお客様の需要にぴったりハマったというお話も、田舎でのビジネスを考えている方の参考になるのではないでしょうか。お店の数が多くない土地だからこそ、既存のお店にないものを新しいお店で実現できれば、地域住民の心を掴むきっかけになるのではないかと思います。

新しくお店を開きたい、と考えている方、信濃町で可能性を探ってみませんか?
ぜひ一度信濃町がどんな「いなかまち」なのか、見に来てみてください!


【ハナアカリ】
営業時間:11:00~21:00
電話番号:026-219-3278
住所:〒389-1305 長野県上水内郡信濃町柏原2568-6


地域おこし協力隊

信濃町の地域おこし協力隊です。2019年に信濃町に移住してきました。週末は野尻湖に浮いているか、愛猫3匹とゴロゴロしながら、家から見える妙高山を眺めています。

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